総務委員会における市大執行部の対応
下関市議会総務委員会が19日に開かれ、下関市立大学(市出資法人)の決算審査がおこなわれた。そのなかで同大学のトイレ改修工事損害賠償請求事件とかかわって、失われた公金は返済されているのか、下関市民の会の本池妙子市議が大学執行部に問うた。下関市立大学からは荻野理事長や砂原事務局長はじめとした責任者たちが出席した。本紙でも何度も取り上げてきたこの問題について、とりわけ下関市内の読者の注目度は高いことから、再度のやりとりのなかで市立大学の責任者たちは何をのべたのか、要点を紹介する。
本池市議はまず、トイレ工事が中断してしまい、前払い金として6割を支払っていたことによる過払い金990万円と、その後追加工事によって発生した620万5000円の損害金について、返済条件や返済状況はどうなっているのか(返済金額、遅延損害金、完納年月日、決算上の会計処理の方法)を質問した。
これに対して、砂原事務局長は「和解のなかで中身は公表しないとなっているので条件についてはお答えできない」「返済の経過等については返済条件等公表できないようになっているので、これについては閲覧もできない。裁判所の方がその中身については公表しないとなっているのでお答えできない」「返済状況についてはすべて返済は完了している。決算書上は長期貸付金というかたちで出ているが、これはこの案件だけではないが、現時点でなくなっているので、現状この法人において長期貸付金は存在していないということだ」「何度もいうが、四つ(返済金額、遅延損害金、完納年月日、決算上の会計処理)については和解内容に触れることになるのでお答えできない。決算書上、すべて回収されている」とくり返した。
裁判や和解条項とは関係のない620万5000円の返済状況がどうなっているかという質問に対しても、「先ほどから申しているように、個別の内容については和解内容に触れることになるので、公開することになるのでお答えできない」と答弁を拒否した。
本池市議が答えられない根拠は何なのかと問うと、砂原事務局長は「根拠というのは、和解というのが確かになされていますけれども、この中身については公開しないということになっておりまして、かつ裁判所側の方もこれは閲覧してはならない、これはどなたも裁判記録は見れるものだが、どなたも見ることはできないようになっておりますので、ここで内容を私がお話したら、漏らしてはいけないことを私が漏らしたということになり、逆に私の方がある意味犯罪になる。だからお答えはできない。ただ確かに、29年度の決算上、返ってなかったら貸借対照表にうちの債権として残っているはずなんですけど、残っていない。すでに片付いているから、現時点では完全に終わっている。ただ個別のは書いてないが、私どもの方がいかなる方に対しても貸した金はない。いわゆる債権はないという状態になっている」「返済されたということは、私は間違いなく確認している。ただ、いろんな条件とか方法とかは、その和解書のなかに書いてあって、これについては公表しないという前提で和解が成立している。これは勝手な両者による同意ではなく、裁判所が一種の確定判決に近い考え方でこれで認めたわけですから、ある意味判決が出ているものを私がここでしゃべるわけにはいかない。これ以上のお話はできない」とのべた。620万5000円についても、「和解」を盾に答弁を拒否した。
本池市議が荻野理事長に「返済状況について市議会で質問があっても答えてはいけないという和解をしたということか」と問うと、荻野理事長は「和解の条件に関しては、市議会であろうと市議会議員であろうと和解の内容については公表しないというふうになっております」と答えた。
本池市議が和解条項を読む限り、市議会にいっさい話すことはできないというのは事実とも違っていること、和解を盾にして答えないことが責任者として正しいと考えているのか問うと、砂原事務局長が割って入り「本池議員さん、これを理事長に聞かれても理事長は困る。答えないのではなく答えられないのだ。閲覧制限がかかっていて、秘密を守りましょうといわれているので答えられない。今いわれた内容も私たちは分かりません。議会に対して報告とかありましたが、その内容もこの場で触れる内容ではない。ちょっとおかしいのは、原告は私たちだが、市大が議会に報告というのはありえない」とのべた。
本池市議が、和解条項や裁判とは関係のない620万5000円についても答弁拒否をしたり、議会にいっさい語らないのはおかしいと指摘し、この返済金額、返済年月日、遅延損害金、経理上の処理について答弁を求めると、荻野理事長が「和解の趣旨というのは、和解条項を尊重するということは、市議会に対しても同様であるから、私としては答えられないというのが正直なところ。それから、数字が具体的にいろいろ挙げられたことがあるが、本学の損害金というのはすべて回収されたので、その内訳については詳細を明らかにすることはできないが、全額を返済されたということだ」と答弁した。
なぜ返済金額を具体的数字で答えられないのか、そして裁判とは無関係の620万5000円についても隠すのかを問うと、荻野理事長は「くり返しになるが、損害金は全額が回収されたということでご理解頂ければと思う」という答弁に終始した。
本池市議が「過去に市から返済条件や返済状況について問いあわせを受けたことがあるか」と問うと、荻野理事長は「和解条項に従えば、先ほどから何百万円というような数字があがっているが、そういうことに触れることが和解条項に関係しているので答えられないとくり返しいっている。市の方から具体的な問い合わせがあったかということだが、質問はなかったのだが、和解の趣旨にもとづいてお答えすることはない」と答え、再度本池市議が「市から聞かれたことはないという答弁に間違いないか」と確認すると、「間違いありません」とのべた。
そして、なぜこのような市民にも議会にも秘密にするような和解にOKしたのか理由を問うと、荻野理事長は「損害金がすべて回収されるということを和解書のなかでも謳われているから、和解をした」とのべた。さらに、「疑わしい疑わしいとおっしゃるが、疑わしき根拠もどうもはっきりしないし、われわれの方がきちんとしたかたちで和解をしたかたちでの損害金はすべて回収されていますということで、いくら議論してもきりがない話で、お答えするのは同じ答えしかない」「和解条項をご覧になっていっていることのようだが、それは和解書に関する理解がお互い違うということだ。本池議員が理解している理解の仕方と、私が理解している理解の仕方とが違うということだ」と答弁した。
また、本池市議が「原告は…市議会へ報告する」と和解条項のなかに明記されていることを指し、「理事長は市議会に報告したのか」と問うと、荻野理事長は「われわれが市議会に報告するというような制度システムにはなっていないのではないか。あくまで市が市議会に対して必要であれば報告するのであって、われわれが議会に報告することはないというか、あり得ないだろうと思う。くり返しくり返しになるが、私は、きちんとしたかたちで和解の趣旨に基づけば、市議会に対してでも和解内容についてお話することはできないと考えている」と答えた。
本池市議が和解条項に記している「原告」とは下関市立大学であり、市立大学が「市議会に報告する」となっていること、この「原告がする」となっていることをなぜ実行しないのか問うと、すかさず砂原事務局長が手をあげ、「そこは私も役所にいた人間なのでわかります。私もアドバイスする立場にありますから。ほかの報告事項も、うちは独立行政法人なので、別団体が市役所に来て市議会に正式に報告するなんてありません。やるとすれば、所管である総務部に報告をして総務部が必要と判断して、やるとすれば市議会に報告することはあり得るが、私どもが直接議会に出て行って説明するというのは制度上できない。今日も私どもは参考人で来ているのであって、説明員ではない。いわゆる議会報告できる立場じゃない。しようと思ったら親元である総務部の方に報告をして、総務部長が理解をすれば報告するという仕組みなので、議員がおっしゃるような仕組みはあり得ない」とのべた。
この答弁に対して、本池市議は理事長が「市には報告していない」とのべていたことを指摘し、報告しない者が報告する順序についてだけ「市大→市→市議会」なのだと主張することの矛盾を指摘したところ、砂原事務局長が「今いったのは、大学が直接議会に報告することは一般的にはできないという意味でいった。今回の案件でいっているわけではない」とのべ、荻野理事長は「訴訟を起こしていたわけなので、和解をしましたと、和解にもとづいて損害金は回収されるようになっていますと、回収がすべて済んだ段階で、回収はしましたと総務の方に報告している」「和解の趣旨にもとづいて、和解の内容について報告することはできません。ただし、損害金は回収することができるということになりましたと、結果として回収することができたというような報告はしている」とのべた。
本池市議が、このトイレ工事に関わる損害賠償事件を受けて、下関市から市立大学は是正措置命令を受け、「本件に関し、学生、保護者に対し必要な説明をおこなうこと」と命令されていることを指摘し、実行したのか問うと、荻野理事長が「きちんとした形で市に対しては報告をしている」とのべた。市議が「市ではなく、学生、保護者に対して実行したのか?」と念押しすると、誰も答えることができず、しばらくの沈黙の後、砂原事務局長が質問の趣旨から外れる答弁を始めた。それを制止して説明会を開催したのかどうか問うと、やはり誰も答弁ができず、最後は砂原事務局長が「今やってないと断言はできないが、確認はさせていただく」とのべた。
本池市議が砂原事務局長を指名し「最後の質問だが、あなたはS社(損害を与えた企業)のM社長と面識はございますね?」(委員会ではS社、M社長部分は実名)と問うたところ、少少面食らった様子で、「それは直接いま…。どういうかたちで? 質問はしてはいけないかもしれませんけども…どういう意味ですか、その、知っているかというだけですか。いわゆる、見たことはありますですね、はい」と答弁していた。
総務部長は「知らぬ存ぜぬ」の一点張り 考えられない無責任答弁
総務委員会の翌日におこなわれた下関市議会9月定例会の一般質問においても、本池妙子市議は、市立大学のトイレ改修工事事件で発生した損害賠償金について、設置者・出資者である下関市も曖昧にし続けていることを追及した。総務部は事前に1時間近くにわたって聞きとりをおこない、詳細な質問項目を把握していたが、答弁の綻びが出ることを恐れてか「知らぬ存ぜぬ」を最後まで貫いた。市大執行部と同じように、返済金額について明言できないことが浮き彫りになった。
本池市議は冒頭、くり返しとりあげてきた下関市立大学のトイレ改修工事をめぐる損害賠償事件について、刑事事件に発展し、逮捕者まで出した不祥事によって1610万5000円もの公金が失われながら、損害賠償がなされたのか否かが曖昧にされたままであることを指摘し、きっちり精算し、真相を明らかにするよう求めた。
同事件では1610万5000円の損害賠償金が発生している。うち990万円は工事代金を6割も前払いしていたことで被った損害金であり、残りの620万5000円は追加工事を発注したことによるものである。この990万円について、今年6月議会で質問したさいの「和解内容による損害金の回収は完了したと聞いている。利息等の有無や内容については、市としても知らない」とした答弁とかかわって、「知らない」ではなく知るようにすべきだと指摘し、回収が完了した金額、遅延損害金の金額や完納年月日を把握するよう調査したのかを問うた。
今井総務部長は「和解した金額、利息、遅延損害金の有無などについては知らない。裁判上の和解により、その条項に内容を非公表とする旨の記載があると市立大学から聞いており、市が知りうる状態ではないので、内容については知らないと答えてきている。現在もかわらない」と答弁した。裁判所がかかわって「適当な紛争の解決がなされたもの」であることから「これ以上、市として調査をおこなうことは考えていない」とのべた。
620万5000円の損害金についても、市はこれまで明確な答弁をしてこなかった。6月議会でも回収金額、遅延損害金、完納年月日について「承知していない」と答弁している。本池市議は「金額について承知しようと思わないのか」見解を問うた。この損害金は「裁判上の和解」及び「秘密条項」とは法的に何ら関係がないことを指摘したが、今井総務部長は、「これが和解条項に含まれているかどうか、もし含まれているとすればいくらで和解したかということは、市としては存じない」「市は損害金等の回収金額について把握していないのでお答えできない」との答弁に終始した。
本池市議は「議場で何度も答弁を求めてきたが、裁判で争った990万円と、そうではない620万5000円をごっちゃにして、620万5000円についても和解条項を盾に実質的に答弁拒否されている」と指摘し、市の認識を問うたが、今井総務部長は「和解条項のなかに620万5000円が含まれているのかどうかも承知していない」とくり返した。
途上、本池市議が議長に対し、620万5000円については秘密条項の対象でないことから、答弁拒否しないよう議長から指摘するよう求めたが、亀田議長は「総務部長は答弁拒否をしているとは思っていない」とのべ、執行部の曖昧答弁が是正されることはなかった。公金が失われているにもかかわらず、事実すら確認しようとしない市の姿勢について、本池市議は改めて、調査監督権限を生かして調査をし、答弁できる状態にするよう求めた。
さらに、市立大学も市も「和解条項の非公表」を主張して答弁拒否を続けており、「この和解に重大な問題がある」とのべ、和解内容を市大に聞かなかったのか、聞いたが拒否されたのか、いかなるやりとりをしたのかを問うた。19日の総務委員会で市立大学の荻野理事長は「市に聞かれていない」と答弁しており、事実関係を質したところ、今井総務部長は理事長発言について、「細かい中身について聞かれていないということだと思う」「和解したという報告があり、内容は聞いたが、公表しないという条項があるということで、それ以上中身を聞けていないということだ」とのべた。
さらに本池市議は、990万円の損害賠償を争った裁判の訴訟記録を閲覧したかどうかを質した。今井総務部長は初め、「閲覧していない」と答弁した。しかし、本池市議が、平成26年6月23日に総務部の職員が地裁下関支部に出向き、訴訟記録の目的欄に「議会対応」と記して閲覧していることを明らかにすると、「閲覧していないと申し上げたのは、和解したあと内容等は公表しないという条項がついているということなので、それ以降閲覧していないということだ」「閲覧制限がかかっており、市が閲覧していないというのは和解の内容のことについてである。閲覧しようにも制限がかかっているのでわからないということである」など、微妙に内容が変化していた。本池市議は、現在も訴訟記録そのものはだれでも確認できる状態であり、なぜ市として事実を確認し、明らかにしようとしないのか追及した。
また、秘密条項付きであることをいつ知り、この条項をどのように解釈・理解したのかという質問について、今井総務部長は、平成25年に市立大学から報告があったさいにこの条項があることを知ったと答弁し、「市立大学が適切に判断した結果だと思っている。和解の内容も、公表しないこととする条項の内容も知らないので答えようがない」とした。
こうした市議会への対応について、本池市議は「市が訴訟で和解する場合は、訴えを起こすときと同じように法律上、市議会の議決を要することとなっている。市大は現在、独立行政法人として法律上、市とは別団体になっているが、市が設置し、市から交付金が出ている大学だ。和解する場合、市に準じてできる限り市議会、市民に和解の事実と和解の内容を報告、公表すべきであると思う」とのべ、この秘密条項付きの和解には、「ただし、原告が市議会に報告する場合は、この限りではない」と記されていることを指摘した。市も平成26年6月23日に訴訟記録を閲覧し、この文言について確認していることを再度明らかにし、非公表の例外規定の文言について市の認識を問うた。
今井総務部長は「市としては和解の内容を知っていない。また公表しないとする条項の内容も知らないので、どう捉えているかはお答えのしようがない」と答えた。本池市議は、実際には和解条項(非公表の例外規定の文言部分)については閲覧することができることを指摘し、「市職員も確認している。裁判所に閲覧記録もある。自分で足を運び、確かめてほしい」と要望した。
また、損害金額や回収期限、遅延損害金の扱い、また現時点での回収金額など、「秘密条項付き和解」には関係なく、答えなければならない事項まで「知らない」と答弁し続けてきたのはなぜなのか、その根拠を問うたが、今井総務部長は「実際に知らないのであるから知らないといっている」とくり返した。
本池市議は、市が「和解条項は守らなければならない強制力がある」と力説する一方、同条項にある「原告(市大)が議会に報告する」とする内容に違反して、「市が議会に報告」している矛盾を指摘。和解条項を遵守し、「市大が議会に報告する」ことを実行させるべきではないかと問うたが、今井総務部長は「市立大学が議会に報告するかどうかは市立大学が判断することだ」とのべた。
本池市議は、市立大学理事長の交代が近づいており、当時を知る人間、責任を負える人間が誰一人いなくなるとのべ、その前にきっちり精算する必要性を強調した。最後に、「公金が失われ、その損害賠償が確実に実行されたのか曖昧であるという問題について、事が起きたのは中尾市政の時期ではあるが、現市長のリーダーシップの下で解決する意志はないのか」と市長の態度を質した。
前田市長は、「特段やましいことがあって隠しているわけではなく、法的に、裁判の制度的に外に出すことができないからできない。今まで総務部長が答弁した通りだ」「市民のみなさんに胸を張れる適正な市政運営をおこなっていきたいと思っている」と、ふてくされた少年のような態度でのべた。