何度やっても地元理解は困難
安倍政府が陸上自衛隊むつみ演習場にイージス・アショアの配備計画を進めている萩市と阿武町で、3回目となる住民説明会が26日の萩市民館小ホールを皮切りに始まった。萩市民館には約130人の市民が参加した。
防衛省側はこれまでの説明会でイージス・アショアの必要性や、萩市と秋田市の演習場を候補地として選定した理由は説明したとして、電磁波等の周辺への影響や、今後おこなうとしている地質・測量調査及び電波環境調査等に絞って説明した。しかし、市民からは「イージス・アショアの必要性は認められず、配備計画は撤回すべきだ」「配備のための現地調査はやめてほしい」という意見が大半を占めた。
萩市の男性は、「今日の説明ではイージス・アショアの必要性、購入理由、導入目的については一切なかった。これまでの説明会で、イージス・アショアは必要ない、被災地の援助に回すべきだという意見が出ている。
イージス・アショアは、トランプ大統領と安倍首相の会談で購入が決まったという。在日米軍は迎撃ミサイルシステムを配備していない。核の抑止力があるからだという。日本はアメリカの核の傘のもとにあるといいながら、イージス・アショアを購入する。矛盾している。秋田は北朝鮮からハワイに向かう通過点にあり、山口はグアムに向かう通過点にある。アメリカのために買うのではないか」と問うた。
さらに「前回の説明会ではイージス・アショアを守るためにPAC3部隊を配備するといった。PAC3は大気圏内の射程であるから、萩市や阿武町に落ちてくる可能性がある。誤操作や誤爆ということは考慮しないのか。うまくいったときのことばかり説明するが、東京や大阪も射程距離に入り、県内全域、全国に対して説明責任がある。
日本防衛上の最大の弱点は原子力発電所ではないのか。これに備えるためには原発を廃止するしかない。イージス・アショアはアメリカから購入することが目的になっている。必要性に問題があり、嘘がある。萩とか秋田の問題ではない。政府は全国民を騙そうとしている」と発言した。
別の男性は、「イージス・アショアはFMS(対外有償軍事援助)で購入するという。相手のいいなりの金額で前払いで支払うものだ。アメリカ側の都合で納入をやめることもできる。納入品が欠陥品であっても、1年以内に相手側に欠陥を認めさせないと、修理や買い替えによってさらに税金を使うことになる。防衛省は今までさんざんに欠陥品を買わされてきたではないか」「それに本当に迎撃できるのか。北朝鮮がミサイルを発射したら萩市には10分足らずで到達する。イージス・アショアができたら萩市民は山口県警と連携していろんな訓練をするという。どこかの国が移動式のミサイルを動かしたら、萩市民は避難しましょうというのか」「最後に、広島と長崎に原爆を落とした国とさえ友好関係を結べる日本であれば、北朝鮮と国交を結んで仲良くしていくことができる日本ではないのか」と発言すると盛んに拍手が送られた。
元自衛官という男性も「新型で日本の防衛範囲をこえたエリアまで飛ぶミサイルを持つ必要があるのか。海上自衛隊は今インド洋に行っている。ペルシャ湾へも行った。もはや“自衛隊”ではない。安倍首相は国会でわが軍といったがとんでもないことだ。防衛省は攻撃能力は想定していないというが、それは口でいうだけであって、着着と攻撃能力を蓄えている。それよりも日本政府の借金は何兆円あるのか。借金を減らそう、無駄遣いはしないという考えはないのか。国民は借金を背負わされ、格差が拡大するばかりだ。イージス・アショアはやめて、そのカネを広島の災害や震災の復旧、福祉に回してもらいたい。そうすることが将来の日本のためになる」と発言し、賛同の拍手が送られた。
別の男性は、「説明会への参加者は多くないし、その理由はそれぞれあると思うが、みんな考えているし、恐怖や不安を感じている。そしてこの問題が持ち込まれたことによって、住民のあいだに今までなかった感情的な対立や亀裂が生み出されていることを一番心配している。これからも平和で仲良く暮らしていける萩市であってほしいとみんなが思っている。最初から適地調査をやることを決めていて、そのための説明会であるのなら、それは強行するということだ。説明したけれども理解は得られなかったのだから、撤回してほしい。これ以上憎しみが深まるようなことはやめてほしい」と訴えた。
むつみは参加者限定 Uターン希望者も排除
27日に萩市むつみコミュニティセンターで開かれた3回目の住民説明会は、参加者をむつみに住民票がある市民に限定し事前申込制とするなかで139人が参加した。
最初に発言に立った女性は、「本日の説明会のやり方について質問する。私の長男は山口に住んでいるが、今後むつみに帰ることも考えて、これまでの2回の説明会に参加し、意見もしてきた。今回も参加予定だったが、萩市むつみに住民票がないと参加できないといわれたため、むつみに居住している父親の委任状での参加も聞いたが断られた」「防衛省がこれから配備に向けて計画を進め、実際に運用される頃には、私たちよりも子や孫たちへの影響の方が懸念されるし、これまでもそういう意見は出ている。そのような大事な意見を申しのべる会に参加者を限定し、在住者の代弁すらさせない説明会は何を意味しているだろうか」「UターンやIターン希望者はふるさとにミサイル基地ができようとしているのに、意見を聞くことも傍聴することも認めないということは何だろうか」とのべた。
さらに「イージス・アショアの配備は、むつみや秋田というよりも、日本中のどこにも必要ないと考えている」「北朝鮮の脅威といわれるが、今現在ではイージス艦は配備されていないし、PAC3部隊は撤収したと報道された。北朝鮮の脅威は今はなくて、来年以降にまた復活するというのだろうか」「防衛省や萩市は地元に対して3回説明したから理解が得られた、もしくは3回説明しても理解が得られないのは聞く方に問題があるとするのだろうか」「今回の説明会は9月に先延ばしにした適地調査の開札を予定どおりに実行するための出来レースにしか思えないが、地元の理解が得られていない状態でも沖縄のように着着と計画を進めていくのだろうか」「これまでの説明会でも4000億円以上の軍事兵器を購入する必要はない。自衛隊についてもミサイル基地に200人も配備するくらいなら、西日本豪雨災害の支援に費用も人も回すべきだとの主張もあったが、防衛省にはそれだけの予算があるなら被災地の復興に回すとの考えを持った、本当に日本のことを考える人はいないのだろうか」など切切と訴えた。
吉部地区の男性は、「イージス・アショアを配備する理由のほとんどは北朝鮮のミサイルだが、北朝鮮が撃ち上げるミサイルはグアムに向けて飛んでいく。むつみにつくるミサイル基地はそれに対してすごくいい位置にある。秋田のミサイル基地もハワイにある米軍基地をめがけて北朝鮮から撃ち上げるミサイルに対して都合のいい位置にある。すべてアメリカ軍を守るための基地の準備をするような気がする。私がここで反対するといっても粛粛とやっていかれると思うとすごくつらい思いがするが、私はあえて自分自身で、どの視点からも、むつみで調査をすること自体に反対する」と発言した。
むつみ演習場の真下で暮らしている男性も「今から先にイージス・アショアができたとしても、そのころにはまた新しい兵器ができてダメになるのではないかと思う。そうすると新しいものにまたつくりかえるのか。これは戦争になる一歩手前だ。私たちは祖先から預かった財産を持っているし、これを子子孫孫に残していく責務がある。私は一命を賭してもイージス・アショアの配備に反対する」と続いた。