翁長・沖縄県知事が8日、すい臓癌のために亡くなった。辺野古新基地建設に反対の姿勢を貫き、沖縄のために身体を張った政治家として、多くの県民に惜しまれながらその生涯を終えた。これほど一般からも惜しまれる政治家というのは近年稀で、それこそ嘘八百をくり返す三代目をはじめ、国会や地方議会を見渡しても、他にいるのだろうかと思うものがある。それは20万人以上もの人間が虐殺された沖縄戦の痛ましい経験や、その後も銃剣とブルドーザーによって土地をとりあげられ、長きにわたって米軍支配によって蹂躙(じゅうりん)されてきた沖縄の叫びを代弁して、沖縄県民の尊厳を守るために奮闘したことに因ると思う。政治家として誰を守り、誰のために至誠を貫くのかという点で譲らず、最後の最後に埋立承認撤回を動かし始めた矢先の訃報であった。
知事の急逝によって11月18日の予定だった県知事選は前倒しすることになり、9月中に実施される見通しとなっている。50日間の短期決戦である。「弔い合戦」になることは疑いないが、いまのところ後継者として誰が出馬するのかはっきりせず、情勢は混沌としている。しかしいずれにしても、たたかいのなかから次なる沖縄のリーダーを押し上げ、それを島ぐるみの力で縛り、支えていくほかにはない。直前に10万越えを果たした県民投票署名は、そのような力が島全体に充満しており、基盤はガッチリと築かれていることを教えてくれた。
前回選挙では自民・公明が仲井真に一本化する一方で、オール沖縄が推す翁長陣営に対して、喜納昌吉、下地幹郎の2氏が出馬し、自公に対抗すると称する陣営が3分割されることになった。しかし、その仕組まれたであろう分裂選挙においても10万票差で圧勝した。今回もまた翁長後継をめぐって内部から分裂・分断を仕組む輩や、足を引っ張って敵を利するような魑魅魍魎(ちみもうりょう)があらわれることは想像に難くない。名護市長選ばりの電通選挙が展開されることも当然あり得ることだ。こうしたあらゆる陰謀や謀略をはね除けて、県民の願いを一本に集中させることが切望されている。民主主義を貫くためには、政治家を作り育てることも欠かせない。 吉田充春