阿武町福賀地区宇生賀集落の農事組合法人「うもれ木の郷」の女性部「四つ葉サークル」(中原智恵子代表)の有志一同と同集落に在住する女性など21人が5日、阿武町役場を訪れて、花田憲彦町長に「イージス・アショア」むつみ演習場配備計画の撤回を求める申し入れをおこなった。
はじめに、中原代表が「私たちは政治的、宗教的、思想的なこととは無関係に、宇生賀の地を本当に愛し、これからのことが心配なので今日の行動になった。町長には私たちの心情をわかってもらいたい」と前置きし、要旨、以下のような嘆願書を読みあげた。
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「イージス・アショア」の言葉を耳にしたのが今年1月初旬、住民説明会の開催が6月17日。この間、私たちは事あるごとに町に対して質問をくり返してきた。しかしその都度、「国からの説明は何もありません」のくり返しだった。
ところが6月17日の説明会では実施計画を提示されただけだと受けとれる。この半年間、国からの説明を待つだけでなく、積極的に情報収集をし、手を打つことができなかったのか疑問が残る。
私たちが住んでいる宇生賀の歴史は長く、この耕地は底が深い沼地であったため稲作づくりは他の地区と比べ数倍の重労働を強いられた。われわれを含め、先人たちはまさに命がけでこの地を守ってきた。
そして20年前、膨大な時間と経費をかけて耕地整理がなされた。やっと軌道に乗り、法人「うもれ木の郷」のみなさんとともに、私たち女性も安心、安全な米作りに、環境整備と併せ努力してきた。今ここで自然への影響、人体への影響など不透明な「イージス・アショア」を配備し、見えない電磁波などで人為的に汚してよいものなのか。
また、私たちはここで採れた大豆、きれいな水を使った豆腐作りにもとりくみ、美味しいとの高評価をいただいている。地域作りのためにおこなうイベントでは、「宇生賀の美しい自然を見に来てください」と声をあげている。
「イージス・アショア」ができた後も同じように、私たちは声を大にして安心、安全、美しい宇生賀を誇れることができるだろうか。これまで一生懸命努力して守ってきたものを失いたくない。
そして、何より危惧しているのが有事の際、ここが標的となる可能性がゼロではないことである。常に身の安全が脅かされることになる。
私たちは、この先も永遠に、子や孫のために守ってきた美しい宇生賀の地で平穏に暮らしてゆきたいだけなのだ。
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これに対して花田町長は、「みなさんのたいへんな不安の思いを町長として防衛大臣に直接伝えるために調整に入っているし、今後もみなさんの気持ちに立ったうえでいろんな行動をしていきたい」と答えた。
その後の懇談のなかでは、むつみ演習場は萩市ではあるが、宇生賀の地からすぐ近くにあり、有事の際には稜線の向こうからミサイルが白煙をあげて飛び立っていくことや、北朝鮮を対象にした場合、むつみ演習場を扇の要とした三角形の中に阿武町がすっぽり入ることなどが語られ、配備候補地の選定のやり直しを求めていくことが話された。