戦後70年を総括し独立と平和の日本社会実現を
2015年の新年を迎え、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶を申し上げます。
敗戦から10年がたった1955年、いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関として創刊された長周新聞は、今年4月に創刊60周年を迎えます。平和と独立の課題がかつてなく問われている今日の激動情勢のなかで、「幾千万大衆と共に」の創刊路線を貫き、人民言論事業をさらに大きく発展させる決意です。
(一)
第二次大戦から70年を迎えた世界は、恐慌と戦争と革命の大激動の情勢を迎えています。2008年のリーマン・ショックを経て資本主義各国は国家財政の出動によって金融資本の救済に追われ、その犠牲を自国の労働者や勤労人民、新興国その他の国国に押しつけてきました。しかし恐慌から抜け出せず、市場争奪や覇権争奪はますます激しいものとなり、人民生活を貧困状態に追いやりながら、戦争とファッショの道を突き進んでいます。
第二次大戦後、アメリカは絶対的な経済的優位性を持っていました。しかしベトナム戦争によるドル垂れ流しや、日本、西ドイツの戦後復興による資本主義の不均等発展によって金ドル交換は不能になり、1972年のニクソン・ショックまできて、政治的経済的な権威はがた落ちとなりました。この危機と衰退のなかで中国などの社会主義国を抱き込んで変質させ、転覆させながら、同時に軍事力と金融・IT技術の優位性を武器にして新自由主義、グローバル化を唱え、市場原理主義戦略に転換することによって一極支配をはかってきました。
過剰生産危機が進行し、生産に投資できない過剰資金が蓄積するなかで、それは世界的なバブル経済とイカサマ金融、金融詐欺経済をつくって生き延びようというものでした。実物経済である貿易取引額を遥かに上回る金融取引が、各国の通貨や株、証券、国債、商品などを投機の具として暴利をむさぼり、資本主義は強奪主義が支配的となり、社会の基本である農業、漁業、製造業などの実体経済をさんざんに破壊した結果、貧富の格差は極端なものになりました。
有り余る世界の富を一握りの金融独占が掴んで離さず、国家破綻までを営利の道具にして荒稼ぎしていく。そして、破綻すれば国家財政に寄生して補填させ、再び息を吹き返して同じことをくり返してきました。このなかで同時に反発も強まり、世界の労働者や勤労人民の斗争もめざましく発展しています。資本主義が腐朽衰退し、その破綻が明らかになるなかで、まともな社会運営を求める世論は国境をこえたものとなり、欧州はじめとした各国で大規模なストライキ斗争が頻発しています。
アメリカは市場原理主義に照応して、軍事上は90年前後の社会主義転覆、91年湾岸戦争、2000年代に入ってからはニューヨーク・テロ事件を契機にアフガン侵攻、イラク戦争と乱暴な侵略戦争をくり返してきました。しかし中東では民族解放戦争が強力な力となってアメリカを打ち負かし、米軍はイラクからの撤退を余儀なくされました。中東政策が破綻しただけでなく、その後のウクライナやシリア対応を巡っても、いまや覇権主義が通用しないまで衰退が深まっていることを暴露しました。世界情勢は流動化し、早くから反米斗争が強まっている南米に加えて、台頭する中国やロシアといった国国との矛盾を抱え、資本主義各国間のしのぎを削る覇権争奪が激化するなど、戦後70年たってその一極支配は揺らいでいます。
(二)
オバマ政府は国力が衰えるなかでアジア重視戦略に転換し、TPPで中国を包囲したアメリカ中心の経済ブロック化をはかりつつ、日本をアメリカの代理人として前面に立てて緊張関係を深めてきました。軍事力を日本から動員するために集団的自衛権の行使容認を迫り、一連の戦争体制を安倍政府にごり押しさせてきました。対中国との覇権争奪で矢面に立たされ、アフリカや中東など地球の裏側まで米軍の鉄砲玉になって自衛隊が出撃する。米国本土防衛の盾として日本列島がミサイル攻撃の標的にされることが現実味を帯びたものとなっています。
70年前の大戦で、アメリカは日本を単独占領するために原爆を投下し、沖縄戦や全国空襲をやって日本人民を殺戮し尽くしました。あの戦争によって320万人もの無辜の命が犠牲になりました。天皇をはじめとする独占資本集団、官僚機構、新聞などの戦争指導勢力は、その後はアメリカの目下の同盟者になって国を売り飛ばし、サンフランシスコ講和以後は独立の見せかけをしてきましたが、70年たった今日、日本社会は無惨に崩壊し、独立とは名ばかりで、富だけでなく命まで動員されるところへきました。この売国政治と命をかけた斗争を挑まなければならない情勢を迎えています。
日本国内ではこの2年近く、アメリカや財界の後ろ盾で再登板した安倍政府のもとで、「アベノミクス」なる金融政策が実行されてきました。黒田日銀は「異次元の金融緩和」と称して350兆円近い資金を市場に供給し、日経平均株価は民主党政府だった時期から二倍以上も跳ね上がり、為替は1㌦=120円台まで急激な円安が進みました。しかし、実体経済はGDPの悪化に見られるように、むしろ輸入物価の高騰や増税に見舞われて悪化しました。官製バブルに踊る金融市場では、ヘッジファンドや金融独占資本がその公的資金を食い物にし、カネはみなアメリカのウォール街へと流れ出しています。人人の老後のために積み立ててきた年金資産130兆円までも、金融市場の燃料として注ぎ込もうとしています。郵政民営化で国民の金融資産350兆円を米国金融資本が奪い去ろうとしてきましたが、日本の富は根こそぎ米国に貢がせる構造が暴露されています。
金融資本は国家のカネにぶら下がって懐を肥やし、多国籍企業化した大企業は法人税減税やODA支援をはじめ諸諸の恩恵を受け、史上最高益を上げてきました。大企業の多くは海外移転して現地生産に軸足を移し、この間の円安でも為替差益を得てきました。一方で国内は失業と倒産が深刻なものとなり、若者は結婚も子育てもできず、高齢者人口が増大して生命の再生産すらままならない状況がもたらされています。
安倍政府はTPPによって国内の農漁業生産や医療福祉、社会制度を崩壊させ、日本市場を丸ごと外資に売り飛ばす政治を実行してきました。世界で一番の企業天国をつくるといって、労働者、人民の残酷な搾取と日本経済の破局的な危機を呼び寄せ、一方で尖閣、歴史認識問題などで近隣諸国を挑発し、アジアで孤立しながら集団的自衛権の行使容認、自衛隊の国防軍化、特定秘密保護法など国民弾圧と海外侵略の体制を強め、国家を規制する憲法を国民を規制するものにかえようとしています。これに対して、全国的な政治斗争を組織し、日本社会の命運をかけたたたかいに挑むことが差し迫った課題です。
(三)
衆議院選挙で自民党は国会の3分の2の議席を得ましたが、その支持率は僅か17%で統治が崩壊している姿を暴露しました。安倍首相の右傾化思想を代弁していた田母神俊雄、石原慎太郎ら率いる次世代の党は壊滅し、あのような政治思想には支持基盤がないことを証明しました。安倍首相本人も選挙区において1万8000票も得票を減らし、その反発の強さを示しました。沖縄では名護市長選挙、県知事選挙に続いて、総選挙においてもすべての選挙区で自民党議員を叩き落とすなど、日米「安保」と基地撤去という争点を鮮明にして県民の揺るがぬ力を示し、全国を激励しました。人民運動は下から大衆的な連帯と団結を深めながら、新しい様相を持って広がりはじめました。
昨年、原水爆禁止運動はめざましい発展を遂げました。「原爆と戦争展」は広島、長崎、沖縄をはじめ全国各地で無数に開催され、安倍政府が戦争体制へと突き進むなかで、戦争を阻止する大衆的基盤を持った運動として威力を発揮してきました。被爆者は「命をかけて語り伝えなければ」と現役世代や子どもたちにその体験や思いを伝えてきました。50年8・6斗争路線を体現した8・6行動は、広島市民の圧倒的な支持を集め、その存在感を全国、世界に示すものとなりました。
福島第1原発の事故後、被災地ではいまだに十数万人が難民のような生活を余儀なくされ、事態の収拾すらままならないなかで、安倍政府は再稼働や原発輸出を推進してきました。これに対して郷土を廃虚にしてはならないという全国的世論が高まり、各地で斗争機運が盛り上がっています。上関では二井元知事が先走って埋立許可を出し、中電は漁業補償金を支払いましたが、祝島の島民たちが一貫して受けとりを拒否し、計画は振り出しに戻るところへきています。全県、全国と連帯・団結し、デタラメな国策に立ち向かう力は強いものになっています。
教育運動は、上宇部実践が前年にも増して全県、全国の教師のなかで広がり、勤労父母の後継ぎとして鍛える体育実践が徳育、知育にもつながって、みんなのため、社会のために役立つ人間へと育っていくことへの確信が深まっています。破産している文科省教育とは一線を画して、それとは対照的に生命力を持った教育運動として発展し、地域や父母の圧倒的な支持を得ています。
劇団はぐるま座の『動けば雷電の如く』『峠三吉 原爆展物語』『礒永秀雄の詩と童話』の舞台は情勢ともあいまって衝撃的な反響を呼んできました。沖縄では名護市長選や県知事選のさなかに公演がとりくまれ、独立と平和を求める人人の意識とつながって、リアリズム演劇の力を発揮するものとなりました。
下関では安岡沖洋上風力発電建設に反対する市民の斗争が勢いよく発展しました。私企業やそれに群がるゼネコン、政治家の利権で住民生活がないがしろにされること、聞く耳を持たぬやり方に怒りが沸騰し、1200人デモを開催するまで行動が盛り上がりました。安倍代理が貫かれた非民主主義的な市政に対抗して、下から力を結集しています。大衆の行動機運は全国津津浦浦に充満していることを確信させています。
このようななかで、「日共」修正主義集団や社民党はじめとした「革新」勢力というのが、大衆運動を率いていく意志も能力もなく、総選挙では自民党のブレーキになる勢力とは見なされず、まったく相手にされなかったことも特徴です。
現在発展している新しい政治勢力は、人民大衆が歴史を創造する原動力であることを確信し、自分の側からではなく大衆の側から物事を見る立場を堅持すること、不断に大衆のなかへ入り、その生活と斗争に学び、大衆の先頭に立って人民を抑圧する敵と正面からたたかうことで運動を切り開いてきました。生産を担う人民大衆こそが力を持っており、みんなのため、社会のために尽くすという人民に奉仕する精神に徹することが分かれ目です。新しい年はこのような大衆的な基盤を持った政治勢力が全国的に形成されていくなら、日本社会の展望を大きく切り開いていくことになります。
福田主幹が組織した1950年8・6斗争の路線と長周新聞の路線は、戦後70年たった現在、ますます生命力を持って発展しています。長周新聞が果たす役割はきわめて大きなものとなっています。創刊60周年を期して、長周新聞の勤務員は人民に奉仕する思想、自力更生刻苦奮斗の精神を貫き、独立、平和、民主、繁栄の新しい日本を実現するために奮斗することをお誓いして、新年のご挨拶といたします。