アベノミクスを主導して得意気になってきた首相ブレーンの面面が、ここにきて手のひらを返すように厳しい見通しを唱え始め、自分たちが旗を振ってきた政策から距離を置き始めている。竹中平蔵が「トリクルダウンは起きない」と発言したのに続いて、生みの親といわれた浜田宏一・米エール大学教授もGPIF(年金基金)の株投資について「大損する」「(国民を)教育しなければいけなかった。損をするんですよ。これだけ儲けるんだから(損もすることを)いっておけと僕は色んな人にいいました」(TBS報道特集)などと弁明し、逃げに転じている。アベノミクス万歳派だった経済学者の高橋洋一も失敗だったと某紙に寄稿し、首相の経済アドバイザーだった内閣官房参与の本田悦朗までがテレビに出てきて消費税増税の延期を提言したり、梯子外しは続いている。23日に衆院財務金融委員会に出席した日銀・黒田総裁も「マネタリーベースそのもので直ちに物価、あるいは予想物価上昇率が上がっていくということではない」とのべ、これまでの強気だった主張を覆した。「2年で2%の物価上昇をさせてデフレを脱却する」という異次元緩和の失敗を認め、お手上げ宣言したようにも聞こえた。
取り残された首相が国会で「経済の好循環は確実に生まれている。アベノミクスが失敗したなどという言説は全く根拠がない!」「総雇用者所得は増えている!」「ファンダメンタルズは良好だ!」等等、失敗を認めたくない一心で懸命に応戦している姿が虚しい。本人が願望しようがすまいが、実質賃金は下がり、GDPも下がり、株価も下がり、経済指標は軒並み悪化しているのが現実だ。だからこそ、アベノミクスをそそのかしてきた周囲は蜘蛛の子を散らして逃げているのである。精神論やその観念、願望では世界は動かないし、アンダーコントロールできないことを自覚するべきだろう。
金融緩和のお祭り騒ぎが終わりを迎え、『そして誰もいなくなった』の末路が見えてきた。誰もいなくなって最後の一人まで放り投げしていなくなった後、後始末させられる側は大変だ。逃げ得は許されるものではない。ヘッジファンドに持っていかれた年金損失分の20兆~30兆円については厳密に責任を追及し、戦犯たちに償わせなければならないと思う。
武蔵坊五郎