下関市にある梅光学院(幼稚園、中高校、大学)をめぐって、本紙は7日付(8166号)で大学24人、中高19人の計43人の教職員が今年度末でやめることを報じた。しかしその後も辞表を出す人、三行半を突きつける人などがあいついでいることが次次明らかになっている。新年度を目前にしてドミノ倒しのように退職者が増え続けている。雇い止めした教員の後任候補がドタキャンするケースもあいついでいる模様で、新年度のスタートを切る体制が整うのか危ぶまれている。
同大学では、今年度末に学院を去る教員らが研究室の片付けに追われている。2月いっぱいで明け渡すよう通知され、3月は研究室のない状態で勤務している教員もいる。不本意ながら雇い止めにあった教職員、みずから脱出した教職員など、やめる背景はそれぞれだが、20年以上も梅光に勤めてきた教職員まで現経営陣のやり方に絶望し、あるいは見切りをつけて去って行く現象となっている。最後にみなの前で「理不尽なことには強く抵抗することを、この学校で学んだ」と発言した人もあったという。
こうした空気が広がるなか、同大学の客員教授として文芸創作など5つの授業を担当していた村田喜代子氏(芥川賞受賞作家)が、「これほど文芸創作などをないがしろにするのであれば、来年度いっぱいで契約を更新しない」と、学院に対し三行半を突きつけた。村田氏は現3年生のゼミを持っているため、担当する学生らを送り出した後やめる意向を学院に伝えたという。
文芸創作では現代詩の教員を雇い止めし、かわりの教員探しに奔走していたが、行く先先で断られていることも話題となっている。村田氏が去れば、かわる指導者が梅光に魅力を感じて来るかどうかは不明だ。
そのほかにも、キャリア支援センター(学生の就職支援をおこなう)責任者の後任として、今年に入って着任した職員が、わずか1、2カ月で辞表を出す動きがあり、同じく今年採用されたばかりの職員も退職の意向を示しているという。
また図書館では雇い止めになった司書のほかに、ベテラン司書が図書館の現状を憂えて辞表を提出。これまで5人いた司書が3人になり、とうてい実務が回らないため、アルバイトを雇う話も浮上しているという。
これらの人数を合計すると、大学の教職員で少なくとも29人やめる計算になる。中高を合わせるとおよそ50人にのぼるが、今後まだ増える可能性も残している。意に添わない教職員を退職に追い込んだり雇い止めしたり、「もうからない」日本文学を縮小したりと、現経営陣の思い描く「改革」をおし進めた結果、泥船から逃げ出すかのように人人が去り始めている。
文学部改編へ宣伝のチラシ
最近、学院が高校生に向けて改編後の文学部を宣伝するチラシを配布していることがわかった。教職員の多くが見たこともないチラシで、目にした関係者らは驚いている。
梅光学院理事会は、2019年4月から大学の文学部を改編し、「日本文学・文芸創作」「地域文化」の専攻を廃止して「日本語・日本文化」とする方針を決定している。文科省への申請は来年度に入ってからになるとみられているが、早くも学生募集のため宣伝しているようだ。
「2019年4月から文学部人文学科が変わります!」と題するこのチラシを見ると、文学部定員を190人から210人に増やし、「英語コミュニケーション」「国際ビジネスコミュニケーション」「東アジア言語文化」の語学系3専攻の定員を増やすと宣伝している。
「日本語・日本文化」は、「日本文化をグローバルな視点で捉え、日本語や外国語で発信できる人材を育成する」という日本文学研究や文芸創作とは縁もゆかりもない内容になるようだ。具体的には日本の伝統文化や文学、地域文化、映画やマンガなどのポップカルチャーまで、「多様な日本文化を国際的な視点から学ぶ」こと、俳優に演技指導してきたプロ講師による自己表現の授業や、希望者全員参加型の留学制度で「グローバルに発信できる力を修得する」としている。
学問や学術研究、真理探究にはほど遠い文学部の改編構想。それは安倍政府や財界が大学改革で進める人文系廃止や職業訓練校化の典型的なコースにも見える。ただ、その前に来年度、梅光学院が教育機関として組織を保てるのかどうか不透明さは増している。
私の娘が音楽科に在籍中は文化祭や伝統はあるけど少し古い講堂で行われる音楽祭などとても良い雰囲気の学校だなと思ていました。ところが娘が大学4年の時教育実習で自分の母校である梅光学園に行きましたが、毎日泣いて帰ってきてとんでもない2週間でした。もちろん娘の方にも問題はあったのでしょうがその時娘が言っていたのが”私が通っていた時と別の学校になっている”と言っていた意味が今わかりました。