東京都が進めていた築地市場の豊洲移転が土壇場になって大騒動に発展している。あるはずの盛り土がなく地下が空洞化していることや、青果棟の地下になるとコンクリート遮蔽すらなされず砂利がむき出しのままであること、汚染水がわき上がっていることなど、信じがたいような手抜き工事の実態が明るみに出ている。あれほど巨大な構造物をつくり、しかも首都圏1300万人の胃袋を左右する天下の台所を移転させるのに、利権集団のデタラメが過ぎる。そして「私はだまされた」ととぼけている石原慎太郎を筆頭に責任をとる者がおらず、築地の流通関係者を困らせている。
元元が東京ガスの工場跡地で、土壌汚染がひどいのをわかっていながら購入したのが東京都(知事・石原慎太郎)だった。東京ガスに支払った土地代は1859億円に及び、さらに汚染土壌改良費にも849億円を費やしてきた。膨大な売却益を懐にした東京ガスが汚染対策工事費として支払ったのは178億円に過ぎない。汚れた土地を行政に売りつけてボロ儲けしたのだろう。そして、849億円かけてやったはずの土壌改良・盛り土が十分にやられておらず、このカネもどこに消えたのか? の疑問になっている。空洞化した地下の暗闇が「手抜き」すなわち巨額抜き取りの肝だったことを浮き彫りにした。
日建設計、清水建設(水産仲卸売場棟)、大成建設(水産卸売場棟)、鹿島建設(青果棟)といった名だたるゼネコンや設計会社が関わって、こうしたいい加減な構造物を平気でつくってしまう。住む人間の安全を無視した欠陥マンションと同じで、そこには食べ物を扱う市場をつくっていることへの社会的使命感など感じられない。使用目的を否定して、もっぱら大企業の利潤になるか否かを目的にしているのである。これでは東北の被災地やODAで出かける海外でも、いったいどんな代物をつくっているのか心配しないわけにはいかない。
築地移転とかかわって最も大きな利権は跡地開発のようだ。銀座に近く、都心の一等地としてこれほどまとまった土地があらわれるチャンスなど戦争を除いてほかにはなく、この利権争奪が激化していることは容易に想像がつく。旧来の利権勢力を排除して新興の利権勢力がこれを獲得しようとした場合、壮大なスキャンダルの暴露なりで旧来勢力の撲滅をはからなければ叶うものではない。「日共」都議団に花を持たせつつ、仕掛けているのは誰なのか? も注目したい。
土壌汚染もさることながら、移転に関わる政治家、ゼネコン、開発にかかわる金融機関等等、人間たちの汚れも相当のものであることを浮き彫りにしている。
武蔵坊五郎