下関市の梅光学院(幼稚園、中高校、大学)は、大学開学50周年を機に約20億円かけた新校舎(仮称・北館)の建設を進めている。20億円のうち10億円を金融機関から借り入れる計画だが、「改革」の過程で山口銀行から預金を引き上げて三井住友銀行に移すなど、地元との関係を切ってきたこともあり、西中国信用金庫も含む地元銀行から融資を受けることは困難と見られてきた。本紙が登記を確認したところ、20日付で同学院本部・大学が立地する東駅キャンパス(下関市向洋町1丁目)の土地と建物が三井住友銀行の担保に入ったことがわかった。
北館建設は、建設費や設計監理料、東館のとり壊しなども含め、総額約20億円をかける一大事業だ。10億円を自己資金で、残りの10億円を借入でまかなうこの計画が浮上して以後、「どこがそれだけの資金を融資するのか」「10億円もの自己資金を北館建設に突っ込めば、毎年自転車操業になるのではないか」という懸念が関係者のなかで広がっていた。
経営陣は、今春から金融機関と交渉を進めており、4月段階でホームページ上でも「ここ数年の財政の好転、現執行部の改革に向けたリーダーシップ、揺るがぬ姿勢が評価され、見込みが立ちつつある」(本間政雄理事長)としていた。しかし、実際には難航していた模様だ。関係者のあいだでは、山口銀行は改革方針に異議を唱えたことから、預金を引き揚げられて評議員も辞任する憂き目にあっており、西中国信用金庫も地元・下関の人人との関係が悪化している状況で融資することは難しいという見方が強まっていた。
登記によると、抵当権が設定されたのは12月20日付。抵当権者は株式会社三井住友銀行(取扱店・下関支店)となっている。債権額は7億円で、利息は年0・29%、損害金が年14%となっている。土地と敷地内の建物も含め計12件が担保として記載されている。
結果的に、小谷財務部長の出身行である三井住友銀行が7億円もの融資をおこない、残り3億円は私学振興・共済事業団から借り入れることになったものとみられる。私学事業団には既存の借金がまだ残っているとかで、その分をくり上げ返済したのちに、借り入れをおこなうようだ。
メガバンクの三井住友銀行が7億円もの融資をおこなうということは、小谷財務部長が同行出身者であるという理由だけでは考えられない。梅光が返済能力を有するとみなし、かりに返済不能となった場合でも土地・建物に相応の資産価値があるとみなし、「銀行として損はない」という判断が働いたものとみられる。梅光が他大学と比べて裕福であることを証明するものともいえる。
残りの自己資金10億円は預金、運用資金、基金などをとり崩して捻出するものと見られている。来春に施工を開始し、2019年4月に供用開始する予定だ。
新校舎建設をめぐっては、今年5月頃にプロポーザル方式で設計業者の入札をおこない、小堀哲夫建築設計事務所(東京都)を選定した。ミッション系の学校建築を多く手がけ、これまで梅光と長い関係を持ってきた一粒社ヴォーリズ建築事務所を排した形となった。さらに建築にはゼネコンの清水建設が入ることが決まったといわれている。銀行はメガバンク、建設はゼネコンと、「これまで梅光学院が大切にしてきた地元・下関との関係を切り捨てるような計画だ」と指摘する声もある。問題が表面化した後も評議員として残っていた安成信次氏(安成工務店)が今年3月末で評議員を辞任したことも、「梅光に協力しても仕事が回ってこないことがわかったのではないか」と話題になっている。
寄付も呼びかけているが、同窓生や下関の人人の長年にわたる協力を踏みにじるような「改革」に反発が強まっており、これまで梅光がなにか事業をするさいには惜しみなく協力してきた人人も躊躇しているのだと語られている。
東館の老朽化はだれもが認めるところだが、現経営陣は「赤字解消」を掲げて正規雇用教員を非情な手段で削減し、非正規雇用に置き換えてきたところだ。教育機関の要となる教員を切り捨てたことから、大学も中高校も学校として機能しない状況が深刻化している。こうしたなかで20億円もの新校舎建設に踏み切ったことに、学生たちからも「建物は耐震補強でいいから、教育内容を充実してほしい」「指導力のある先生に学ぶ方が有益だ」との声が上がってきた。
また完成する校舎は研究室もないなど、あまりにも大学施設らしからぬ建物であることから、「異業種の法人などにも買い取ってもらいやすいようにしているのではないか」という憶測もある。来年3月には本間理事長の任期が切れる。北館建設着工を成果に梅光学院を去るのか、もう1期残るつもりなのか、その動向にも注目が集まっている。