まだ就任すらしていない次期米大統領に一番乗りで面会に行ったのが安倍晋三だった。ヒラリー当選を確信して高をくくっていたのから一転、属国の傀儡政府として不安で仕方がない心境を丸出しにして宗主国の次期トップにすり寄っていく姿は、世界的に見ても稀で驚かれたが、当の本人に屈辱感はないのだろうか?羞恥心はないのだろうか?と思わせるものになった。大統領選の渦中にヒラリーとだけ面会して二股外交をしていなかった等等の事情があったにしても、海の向こうでその対日利権の主導者たちがゴッソリとかわるにあたって、余りにも慌てすぎで、首相の地位も含めてアメリカがすべて決めているのだといわんばかりの行動となった。オバマと丁丁発止をくり広げてきたフィリピン・ドゥテルテの方が、はるかにドッシリと構えているように見えて仕方がない。
これまで対日支配の采配を振るっていた面面から、人事も含めて明らかに何かが変わっていく。トランプの背後にニクソン政権で活躍したキッシンジャーの存在があることも一部で取り沙汰されている。対中国やロシア関係も含めて、米国の利をとりつつ上手いことやりはじめることや、単純ではない世界情勢が展開されていくことは、ベトナム戦争などによるドル垂れ流しで行き詰まり、その後のニクソン・ショックやプラザ合意へと舵を切っていった70年代を想起するだけでも想像に難くない。ニクソンと毛沢東が手を握って世間をアッといわせたり、日本の頭越しなどお構いなしに合理主義で何でもありなのが米国だ。
戦後レジームとは第2次大戦と原爆投下を経て単独占領された対米従属の枠組みであろう。そこからの脱却とか「美しい国・ニッポン」などと叫んでいたものが、我先にと馳せ参じて戦後レジームを守る側から、戦後レジームによって祖父の代より授かってきたともいえる政治的ポジションを守る側から、高級ゴルフクラブを握りしめて彷徨っている光景は、何ともいえないものがある。まともな独立国ではないことを首相みずからが自己暴露する行動となった。
吉田充春