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人工島中心に都市大改造 国主導の不気味な工事 軍港化必至の事態 下関 

 下関市垢田の沖合に国、県、市が共同で建設工事をすすめている人工島のまわりで、急ピッチなインフラ整備が進行している。4車線の頑丈な道路が次次とつながり、下関北バイパス(国道191号)や鉄道輸送の幡生ヤード、下関インターチェンジへと一直線で連結する大がかりな工事となっている。これほどの道路網整備を施して、いったい何に利用するのかという疑問が市民のなかでは語られはじめた。はっきりしていることは、すべての道は人工島につながっており、人工島を中心にした大規模な都市改造計画が進行しているということである。しかしいまのところ岬之町コンテナを移動させる以外に利用目的の展望はない。江島市政が「国策」と断言し、国が主導してきた事業の背景には、明確な別目的が含まれていることは疑いなく、岩国愛宕山開発のように、さんざん市財政に借金を背負わせたのち、米軍などの軍需物資集積ターミナルにもされかねない不気味さとなっている。

 人工島建設は1995年に第1期整備工事に着手して以後12年がたった。外国貿易貨物を取り扱う「多目的国際ターミナル」は、2006年度の12㍍岸壁1バース完成、背後用地の埋め立て完了、1部供用開始を目標にすすめられてきた。江島市政は3月議会に上屋建設などの予算をつけた。響灘で採取する土砂が間に合わず、第1期工事の埋め立てが完了するのは平成27年前後になる見通しとされている。


 当初、590億円と予想されていた第1期工事の総工費は、上屋などその他も含めて675億円がぶちこまれることとなった。今後、事業認可が下りていない第2期、第3期工事、さらに外島まで建設するとなると、費用が莫大なだけでなく、面積としても彦島に匹敵する巨大な島島の出現となる。


 事業にかかった費用は国が4割、県が3割、市が3割で負担している。下関市の港湾会計の累積赤字は、人工島建設のために借金を重ねて膨れあがった。港湾事業債(約400億円)にたいする利子だけで、毎年7億円近くを負担している。


 異常な4車線道路建設


 市民のなかで「不気味だ」と語られているのが、岬之町コンテナ程度のターミナル移設にしては、道路は2車線では満足できずに頑丈な4車線。国土交通省がすすめる下関北バイパス(総事業費が約720億円、計画延長6・8㌔)や各種の道路が急ピッチで人工島めがけて優先的に建設されてきたことである。


 国が下関北バイパスを担当し、下関市が、人工島から武久海岸沿いに北バイパスまでをつなぐ「武久新垢田西線」(総工費32億円)を負担。そこから県にバトンタッチして幡生駅をまたぐ高架橋・武久椋野線(総工費163億円、3月に供用開始予定)が下関インターチェンジ、関門トンネルへとつながる。幡生ヤードにも直結している。「物流効率化に貢献できる」といっても、岬之町コンテナ程度なら必要性はない。


 下関北バイパスは地域高規格道路「下関西道路」構想の1部にあたる。これが、将来的には新下関駅あたり(構想中)でインターチェンジと連結する計画になっている。さらに武久から国道沿い、彦島大橋を直線上につながっていくと、あらたに構想が浮上している第2関門橋へと伸びて北九州・日明周辺地域に届く。下関西道路は北九州との連携を強化する路線としての位置づけがなされている。第2関門橋は候補路線から計画路線への昇格を目指して、「地元請願」の形ですすめられている。国土交通省と福岡県、山口県、北九州市、下関市が一体となってすすめている。


 また、北バイパスとつながって、綾羅木から川中地区をぶち抜いて新下関、さらに長府へとつなげる4車線道路も建設中で、県が担当する部分は完成が間近。人工島から1直線に走ると、新幹線にもアクセスする。


 これら道路地図を一変させる開発の心臓部に人工島が存在する。しかし1週間で中国までの区間を2往復半できる博多港や、苦戦して赤字になっている北九州・ひびきコンテナターミナルと比較しても、商業利用が増大する見こみは乏しい。しかし都市改造計画だけが勢いよくすすんでいるのである。


 江島市長は3月議会で、人工島とつながった幡生ヤード開発は「国策」なのだと連呼した。人工島事業を管轄する下関市港湾局には、国土交通省から天下った官僚が入れ替わり局長ポストにおさまって、采配を振る関係である。これらの事業は下関市財政が巨額の負担を背負わされながら、実質的には国主導でおこなわれてきた。一連の事業展開をみたとき、利用目的が鮮明でないというより、上層が牽引してきたこの事業には、別目的が隠されているというほかない。
 重量物資の輸送を想定した頑丈な4車線道路。大量のコンテナ輸送が可能な鉄道、高速道路とつながり、さらに人間の緊急な集合・移動を可能にする新幹線につながるという想定は、間違いなく軍港である。


 臨検港にするとの想定


 下関は、北朝鮮ミサイル騒動のさい、内閣府が臨検港(他国の船を臨検するために引っ張ってくる港で、軍事衝突を誘発する)として名指しした。人工島の入り口には鉄柵ゲートを備え付ける計画で、まるで出撃基地のような想定である。


 有事立法が成立し、全国の港には米軍艦船が自由に停泊し、燃料補給や軍事物資の積み下ろしをおこなうようになった。下関港にもフェンスが付けられ、この2月にも米軍艦船が補給に立ち寄ったばかりである。山口県では、岩国が極東最大の米軍基地になろうとしており、アメリカがしかける侵略戦争の最前線基地として沖合拡張がすすめられてきた。米軍住宅の誘致問題で揺れる愛宕山地区のすぐ近くには、新幹線が停車する新岩国駅もあり、下関までは1時間もかからない。極東最大の出撃基地のさらに最前線に港湾としての下関が位置づけられていると考えてもおかしくない。安倍首相の叫ぶ防衛省の海外派兵部隊の拠点としては都合がよいのである。


 花束を持って米軍艦長を出迎える江島市長は、「祝防衛省昇格」の幟を市役所に垂らす熱狂ぶりも見せる。そして下関では、5月に全国先端のテロ訓練をやって、市民にものいわせぬ態勢作りも一方ですすんでいる。この異常さともあわせて、気味悪い人工島建設というのが国策としてやっている軍港化以外には考えられない事態となっている。

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