米国一極支配終焉後の新時代拓く運動の展望
2017年の新年を迎え、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶を申し上げます。
1917年のロシア革命から100年を迎えた世界は、その後の資本主義体制や屈折した社会主義体制のなかを各国人民が2代、3代にわたって生きてきたもとで、歴史的な転換期を迎えています。社会は誰のために存在するのかが、どの国でも階級矛盾の激化のなかで鋭く問われ、「まともな社会にせよ」と大衆的基盤を持った反撃が始まっています。資本主義が滅びゆく激動の時代にあって、破壊や戦争の道ではなく、より平和で豊かな社会の展望を切り開いていくことが差し迫った課題となっています。
資本主義世界はリーマンショック以後、その抜け道を求めて各国で中央銀行による量的緩和や金融資本救済を実施してきましたが、それは各国の人民にとって何ら生活を上向かせるものではなく、もっぱら一握りの金融資本や富裕層に富を集中させ、彼らが支配的な力を振るう体制を死守するものに他なりませんでした。人人の暮らしや社会全体の利益を優先させるのでなく、どこまでも資本を有する者が被支配の側から富をはぎとって強欲に利潤を貪っていく、そのために国家を従え、政治や統治機構が機能するというむき出しの支配構造をさらしてきました。
社会の上澄みには資本があり余るほどあふれ、タックス・ヘイブン(租税回避地)に隠匿されたり、あるいは実体経済をはるかに上回るほどの資金がマネーゲームに注がれ、グローバル化と相まって世界中を徘徊して焼け太りしてきました。これらの企業及び金融資本がもうける源泉は各国の労働者を徹底的に搾取する以外にはありません。こうして一方が空前の利益を懐にしまい込んでいくのとは裏腹に、世界各国で人民の側には失業と貧困が押しつけられてきました。この富の私物化こそが資本主義の本質であり、それ自体ますます熾烈な競争をくり広げながら保護主義に傾斜したり、覇権争いやその代理戦争を激化させ、アメリカ一極支配が崩壊しつつあるなかで混沌とした世界情勢をつくり出しています。
18世紀に台頭した資本主義社会は20世紀初頭には帝国主義段階に進み、その不治の病である過剰生産恐慌に苦しみながら植民地争奪の第1次大戦、第2次大戦を引き起こしました。これらの戦争で破壊し尽くすことによって復興需要をつくり、その後の資本主義の相対的安定期をもたらしました。資本主義の危機を打開するために最終的に破壊、戦争を渇望する資本の本質は今日も何ら変わりないものです。
戦後の世界は資本主義各国が疲弊しているもとでアメリカが覇権を握ってきましたが、70年以上を経てこの一極支配が終わろうとしています。アメリカはベトナム戦争によるドル垂れ流しなどによって71年にはニクソン・ショックとなり、金ドル交換停止に追い込まれ、その後は危機を乗り切るためにグローバル化・新自由主義を唱えて市場原理主義によって一極支配をはかっていきました。しかし、半世紀近くを経た今、そのグローバル化・新自由主義の総本山である米英でこそ階級矛盾が先鋭化し、足下から大衆的な反撃の狼煙が上がっていることを、イギリスのEU離脱や米大統領選におけるサンダース・トランプ旋風は示すものとなりました。
為政者の思惑を突き破って大衆世論が動き、抑圧・支配してきた側が迎合を余儀なくされたり、あるいは目前を欺瞞して首の皮をつないだ格好であっても段階を経ながら打倒されていく。それが自然発生的で限界性があるにせよ、社会の本質に目を向けて動き出した人民を押しとどめることなどできないことを各国の事例は物語っています。エスタブリッシュメント(既存の権威)が力を失う過程で、大衆的な要求を掲げて新しい政治勢力が、台頭し始めているのも特徴です。そして、人民の側の国境をこえた連帯が強まっています。
100年前の歴史が教訓として示していることは、戦争の危機、すなわち資本主義の危機のなかから人類社会の発展にとって桎梏となっている帝国主義を打倒し、それに成り代わる生産人民こそが主人公となる社会をつくり出すことは可能であるという事実です。世界各国で資本と労働の矛盾、帝国主義と人民の矛盾が激化し、さらに帝国主義国同士による市場争奪も激しいものになっています。こうした情勢のなかで、もっぱら自分だけがもうかればよいという強欲な資本のイデオロギーに対して、その他の圧倒的な大衆の側のよりよい社会にせよという本質的な要求を束ね、労働者が社会の主人公としての自覚にたって立ち上がるなら、資本主義のもとでくり返される貧困、失業、戦争の連鎖を乗りこえ、それに成りかわる次の社会への展望を切り開くことは疑いありません。
激動する世界のなかで、日本社会は世界でも稀なるアメリカの隷属国家に成り下がり、まともな独立国としての体を成していないことが誰の目にも明らかなものとなってきました。TPP、原発再稼働、日銀による異次元の量的緩和、軍事政策や外交に至るまでみなその指図で事が動き、売国的な為政者が民族的利益を差し出していくことによって社会を崩壊させてきました。
パクスアメリカーナの終焉が叫ばれる世界にあって、一方ではフィリピン大統領のドゥテルテに代表されるようなアメリカ離れが顕在化し始め、台頭する中国やロシアをはじめ多極化する世界とどう向きあっていくのかが各国にとって抜き差しならない問題となっています。このなかで、米国追随一辺倒できた日本の為政者が情勢の変化についていけずに弄ばれ、トランプ詣でやその直後の米国のTPP離脱表明、日ロ首脳会談など、事ある毎に無様な振舞をして民族的地位を辱めてきました。首相の素質以上に、そのような人物が祭り上げられ、何につけても暴走する使い勝手が良い存在として背後勢力から支えられている関係を見ないわけにはいきません。
日銀の量的緩和によってもたらされたアベノミクスは、4年を経て破綻が隠しようのないものになっています。東証一部上場企業のうち四社に一社は日銀やGPIF(年金基金)が筆頭株主となり、こうした官製相場に金融資本が群がり、踊り場を楽しんだだけでした。そして緩和マネーは大統領選後の米国における株価バブルの原資となっています。大企業は多国籍企業化していまやどこの国の会社かわからないものになり、狭隘化した日本市場に見切りをつけ、労働者を路頭に放り出しながら海外に覇権を求めて出て行きました。そうした進出地域の基盤を整備するためにODA(政府開発援助)による野放図なバラマキ外交がくり返され、国民生活をますます窮乏化させています。
一昨年に安倍政府は安保法制化を強行して自衛隊の武力参戦に道を開き、何ら国益や邦人の生命など関係のない南スーダンに自衛隊を派遣しました。軍事的には、米軍の下請化が進み、さらに大企業は民需が乏しいなかで軍事兵器の生産に活路を求め、大学を兵糧攻めにしながら軍学共同を進め、成長戦略の中心は軍需生産や原発輸出に傾斜しています。そして農漁業生産、医療・福祉、社会制度に至るまでアメリカ多国籍企業に丸ごと売り渡す企みが進行しています。TPPが破綻した後も国会は批准を強行しましたが、トランプ就任後に想定される日米FTA交渉において、それ以上の譲歩を国際公約するものにほかなりません。
こうした売国政治が国民の生命や安全、財産を脅かしています。東日本大震災から六年を迎える三陸や地震に見舞われた熊本は、その後も冷酷なまでに棄民状態に置かれたままです。誰のために政治や統治機構が機能しているのかを最も端的に示すものです。活動期に入った地震列島において、第二の福島事故すら厭わぬ無謀なる原発再稼働を強行しているのも、みなアメリカの核戦略の肩代わりに他なりません。
戦後72年にわたって沖縄や岩国、首都圏など全国各地に米軍基地が置かれ、アメリカによる植民地状態が続いてきました。その軍事力は「日本を守る」ためではなく、占領したうえで独占企業や統治機構を目下の同盟者として従え、アジア侵略の拠点にするためだったことは歴然としています。終いには日本の若者を米軍の鉄砲玉として駆り出すところまできました。諸悪の根源である日米安保と対米従属の鎖を断ち切らない限り、どこまでも民族的利益をむしりとられることは疑いありません。落ち目のアメリカに抱きつかれて共に沈んでいくのか、真に独立と平和を勝ちとり、平等互恵の関係をもとに国際社会と渡りあっていくのか、日本社会にとって命運がかかったものになっています。
社会の針路をかけてかつてなく大衆的な行動機運が高まっています。沖縄では復帰斗争以来ともいえる島ぐるみの基地撤去斗争が発展し、本土との連帯を強めつつ揺るぎない力を示しています。一昨年の安保法制に反対する全国的な立ち上がりを契機に、TPP・原発再稼働反対、米軍基地撤去はじめ各分野で、引き続き大衆そのものの行動が熱を帯びています。小さな個人が何かを努力して自分だけが報われたり、あるいは個別の経済利害だけを追い求めるのではなく、社会全体がよくなる方向を見据え、下から大衆的な力を束ねなければ支配構造を突き動かすことなどできないという厳然たる事実に多くの人人が目を開き始めています。
しかし一方で、人民大衆の側を代表する政治勢力が国政政党を含めて見当たらず、そうした立ち上がりは知識人を介在した形であったり、SNS経由であったり、自然発生性に委ねられているのが現状です。旧社会党であれ「日共」集団であれ、戦後アメリカを平和と民主主義の進歩勢力とみなした親米潮流が大衆から見離され、支配の枠の中で為政者に施しを求め安住してきた勢力は消滅の道を進んでいます。大衆蔑視を基本にした干からびた主義主張や、既にくたびれて生命力を失ったセクトのイデオロギーには何の力もないことを証明しています。こうした戦後社会の産物と一線を画して、真に人民に奉仕する思想に徹した新しい政治勢力を台頭させることが切実に求められています。
アメリカをはじめとした帝国主義陣営は乱れています。かれらは一方ではいつ襲ってくるかも知れぬ大恐慌に脅え、他方では全世界人民の帝国主義に反対する斗争の高まりに脅えています。日本人民の斗争はこれら世界人民の斗争と呼応しあって、新たな世界戦争を引き起こそうとする野望を打ち破るに違いありません。
この情勢のなかで、今を生きる人間はどう進んでいくのか。長周新聞の勤務員は人民に奉仕する思想、自力更生刻苦奮斗の精神を貫き、独立、平和、民主、繁栄の新しい日本を実現するために奮斗することをお誓いして、新年のご挨拶といたします。
2017年 元旦