米大統領のトランプに気に入られるためには、いまや何でもやりかねないのが安倍政府だ。10日におこなわれる日米首脳会談の手土産として、米国で70万人の雇用を創出することを謳ったインフラ整備の資金拠出(10年間で51兆円の投資)を買って出て、そこに国民の老後のための資金である年金積立金まで注ぎ込もうとしていることがとり沙汰されている。世界的に見て先進国はどこもグローバル化で蝕まれた自国の経済政策なり雇用政策を立て直さざるをえない方向へ向かい、国内を差し置いて米国のために資金を献上する国などない。どうして米国政府になりかわって米国民を養わなければならないのか―― と誰もが思うものだ。しかし、世界でも稀なる隷属国家の首相なり統治機構は、頼まれてもいないのに自ら発案して、アメリカ・ファーストを「このカネでやってくれ」と提案するのだという。卑屈な奴隷根性が染みついている人間にしか思いつかない「ひらめき」である。
相手は米国であり、ODAで相手にしてきた後進国とは訳が違う。日本のゼネコンや独占企業がインフラ事業を受注して、利益を回収するというものでもないだろう。そして、何十兆円もの投資資金が確実に回収されるのか否かも定かでない。日本国内の雇用対策にまわさずに、アメリカの雇用創出を心配している政府というのは一体どこの国の総理大臣なり政府なのか問わなければならない。国内で福祉や教育予算をあれほど削っているのとも裏腹である。
たかられる前にカネを渡しに行くという行為は、大人になりきれていない子どもたちの世界でくり広げられる出来事と重ねても、もっとも卑屈なビビリのやる事だ。ゆすりたかりに常に脅え、大きな声を出されたり小突かれる恐怖心にさいなまれ、可愛がってもらうために自らネギを背負って出かけるカモ――。暴力に屈服する姿は端から見ているとみっともないけれど、そんなことができるのは大概カネを持っているボンボンくらいである。貧しい家庭の子弟は、いくらゆすられてもたかられても、ないものはない。むしろ“心は錦”で立ち向かうような強い気概がなければ、その後の人生を切り開いていくこともまたできない。
少し吠えて脅かしたら、次からは吠える前に自らカネを持ってくる。こんなポチ外交を続けている限り日本は世界から笑われる。不当な要求に対してはそれを上回る迫力でもって、二度と声をかけたくないと思わせるような反撃をしなければ、撃退することなどできない。そのような度胸を持ち合わせていないことを、日米首脳会談に向かう安倍晋三は自己暴露している。これほど卑屈ににじり寄っていく政府やリーダーなど、世界的に見て絶滅危惧種である。武蔵坊五郎