北朝鮮がミサイル発射実験をおこなった8月29日の早朝、落下からわずか12分後に背広姿の首相が登場して「国民の生命を守る」とテレビ中継で訴えた光景は、なにかしら段取りの良さを伺わせるものがあったと話題になっている。安倍首相といえば、公邸暮らしを拒否して富ヶ谷の私邸から通っていることがメディアでも頻繁にとり沙汰されてきた。それが今回のミサイル発射を事前に掌握していたのか、はたまた偶然なのか、前日の28日から普段はほとんどいないはずの公邸に宿泊し、早朝のテレビ中継でキメていたからだった。
首相公邸は、緊急時や危機管理への対応に支障がないよう、首相が公務をおこなう官邸に隣接している。公邸に居住するか否かは任期中の総理大臣に判断がゆだねられており、安倍首相は「危機管理への対応にもほとんど支障がない」とし、「富ヶ谷の自宅」で普段は生活しているとされてきた。
では、今回の公邸宿泊は珍しいことなのか、今年1月からの「首相動静」をめくって調べてみた。1月4回、2月9回、3月14回、4月10回、5月7回、6月11回、7月7回、8月2回となっており、8カ月間のうち公邸に宿泊しているのは64回。このうち共謀罪の審議(6月15日に採決)などがくり広げられた国会会期中のほか、各国首脳を公邸へ招いての夕食会や、官僚や大学教授などとの食事、国内外への出張前日など、なんらかの「目的」があるさいの宿泊が目立つ。
国会が閉会して夏休みなどに入った八月を見てみると、北朝鮮がミサイルを発射した8月26日、8月29日の前日の2日間に限って公邸に宿泊していた。ほかはみな私邸暮らしであった。なお、「国民の生命を守る」中継の前日である28日には、自民党三役のほか、茂木経済産業大臣と菅官房長官、西村官房副長官などのメンバーで公邸で食事をして、何かを話し合っていたことがわかる。
あえて不安煽ったのか
「完全に把握していた」が発射前日からのことを指すのであれば、なぜわかっていて早朝に国民を眠りから叩き起こしたのか? どうしてわかっていたのか? という疑問になる。高高度の上空550㌔の宇宙空間をすっ飛んでいったミサイルについて「完全に把握していた」のであれば、その軌道からして日本列島に着弾することなどないとわかっていてJアラートをかき鳴らし、不安を煽ったのか? という疑問になる。戦時訓練をことのほかやりたがっていることと同時に、こうした恐怖を煽るのとセットで「国民を守る!」安倍晋三をプロモーションし、なんならモリ&カケを吹き飛ばして、内閣支持率アップにつなげたいという意図すら透けて見えることが、胡散臭さにつながっている。