夏休みが終わりに近づくにつれ、下関市内のコンビニでネット上のフリーマーケットアプリ「メルカリ」の料金を支払いにくる小・中学生の姿が増えているという。インターネットで子どもたちが購入しているのは、なんと読書感想文だ。ネットを見てみると「『絶対貧困』読書感想文計五枚」「芥川龍之介の地獄変2155字の読書感想文」などが500円、600円で売られている。「夏休みの宿題の読書感想文の参考にどうぞ。賞などとっていないので、学校などにもバレないと思います。完全オリジナルの文章です。中学生、高校生向けの文章で書いています…」という商品説明がついている。
最近は中学生の多くがスマホを所持しており、親が知らないうちにインターネットを利用して簡単に購入できる時代だ。子どもたちによると「ネットで感想文が1000円以内で買えるよ」と話題になっているという。
市内の教師に聞いてみると、「スマホでのトラブルは以前からあった。インターネットが普及して、子どもたちはわからないことはネットで検索すればわかった気になる。努力せずとも、ネットに頼ればなんとかなるという感覚で、考えない子どもが増えている。読書感想文の宿題が最後に残って、急いで本のあとがきなどを読んで感想文を書いて提出する子は以前からいたが…。感想文を商品にする大人の側の問題だ」とあきれていた。
共働き家庭が増えるなかで、夏休み期間中に宿題や自由研究を親の指導のもとでじっくりととりくめる家庭は少なくなっている。近年、それを利用して夏休みの宿題を商品にしてネットで販売するビジネスが生まれており、楽をしたい、面倒臭いことから逃れたいという子どもたちが内包するよくない側面に忍び寄って、小遣いから500円、600円をもぎとっていくような行為が横行している。そのカネは子どもたちが稼いだものではなく、親たちが朝から晩まで働いて得たカネなはずだ。500円、600円欲しさに販売している側が考えなければならないのは、そうしてカモにした子どもの数だけ、「働かずして楽をする」世界観を植え付け、勤労行為を侮蔑する世界へといざなっていることではないだろうか。「読書感想文の代行業務」で小銭稼ぎに費やすような時間があるなら、そんな労力や知恵を他にいかすべきで、10代そこらの子どもたちに、こうした怠惰を覚えさせてどうなるか…である。
読書は本来、そのことを通じて感性を育んだり、直接経験ではない間接経験を通じて、みずからの外側にある世界へと見聞を広めたり、歴史を認識したり、科学と触れあったり、知を育む営みとして欠かせないものだ。親や教育者たちが子どもたちに読書癖をつける努力をくり広げているのは、知識の裏付けがない空っぽな大人になるのではなく、向上心や探究心をもって学ぶ人間に成長してほしいと願っているからだろう。
カネさえ出せば何でもできるのと引きかえに、人間としての堕落が進む。大学では卒論のコピペが問題になり、小・中学生では感想文のコピペが問題になるような時代が到来した。「利便性」や商売の自由をはき違えた事態について、広く社会的な論議を起こすことが求められている。