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佐賀空港へのオスプレイ配備計画 用地取得できず頓挫 揺るがぬ住民の反対世論

墜落あいつぎ「安全」神話も破綻

 

 佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画について、防衛省は予定日までに用地取得のメドが立たないため、来年度に導入予定のオスプレイの配備先を暫定的に国内の自衛隊駐屯地へ変更する検討に入った。先月、佐賀県の山口知事、県議会が「受け入れ容認」を表明して「地元合意」をとり繕ったものの、地元の川副町民による粘り強い反対運動とともに、用地を所有する漁業者が売却拒否を貫く以上配備計画は一歩も進まないことをあらわした。地元では住民運動の結束した力に確信を強めるとともに、「白紙撤回させるまでさらに運動を盛り上げていく」との意気込みが高まっている。

 

地元住民を中心に1600人が参加して配備反対の声を上げた決起集会(今年4月・佐賀市川副町)


 2014年7月に突如として浮上したオスプレイ配備計画は、有明海に面した県営佐賀空港(佐賀市)の西側用地33㌶を買収し、①2018年度に新規導入する陸上自衛隊のオスプレイ輸送部隊(17機)の常駐、②陸上自衛隊目達原基地(神埼郡吉野ヶ里町)の対戦車攻撃ヘリコプター部隊(50機)を移転配備、③沖縄・普天間基地に常駐している米軍のオスプレイ部隊の訓練基地としても使うというもので、実現すれば国内最大級の軍事拠点施設となる。


 これに対して、地元佐賀市川副町の自治会や老人会などの住民組織、さらに全国一の生産規模を誇る有明海のノリ漁業者や農業者などの生産者が一体となり、「佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会」(古賀初次会長)を立ち上げて、住民集会や陳情、反対署名を開始した。「郷土を戦場にするな!」「有明海を戦の海にさせぬ!」という切実な思いで結束した地域ぐるみの運動は、全市全県や九州一円に共感の輪を広げ、「白紙撤回」を求める反対署名は12万人をこえた。

 


 また、配備先である空港西側用地を所有する佐賀県有明海漁協(徳永重昭組合長)が反対を表明し、防衛省が今年4月におこなった漁業者説明会では地権者が所属する4支所すべてで「反対」が圧倒した。とくに用地の大部分を保有する南川副支所(田中浩人運営委員長)では、運営委員会が全会一致で反対を決議しており、地権者の組織である「国造搦(がらみ)60㌶管理運営委員会」の総代会でも反対を決議した。漁業者たちは、佐賀空港の軍事基地化とオスプレイ配備計画は、豊かな環境とともに営まれてきた農漁業と地域の発展にとって相容れないものとして断固拒否を貫く構えを表明した。

 

オスプレイ配備計画の地元説明会で、防衛省職員に詰め寄る住民たち(昨年7月末、佐賀市)

 また、佐賀空港建設時に県と地元8漁協との間で交わした「自衛隊との共有はしない」とする公害防止協定の存在を無視する県や県議会の態度や、諫早干拓問題などの国策によって有明海漁業に壊滅的な打撃をもたらしたことを棚上げにして、第一次産業にさらなる犠牲を押しつける国への怒りは強く、生産者と地域住民の反対運動は勢いを増した。


 防衛省の用地取得のメドは一歩も進まないなかで、県知事と県議会が地元の頭ごしに「受け入れ」を表明し、「地元地権者の理解を得る」と国側に約束したが、知事が住民の前に姿をあらわすことは一度もなかった。国を忖度し、地元有権者の信頼を裏切る姿だけを印象づけるものとなった。


 防衛省は、佐賀空港への配備を「引き続き目指す」としながら、来年購入予定のオスプレイの配備先として自衛隊木更津駐屯地(千葉県)や、水陸機動団を新設する相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に近い九州地方の自衛隊駐屯地を暫定的な配備候補地にあげている。だが、安全と主張する政府の説明とは裏腹に、昨年12月の沖縄県名護市沿岸での墜落・大破事故につづいて、今月5日にもオーストラリアで同じ米軍普天間基地所属の同型機が墜落。事故原因の解明もされないうちに政府は国内での飛行再開を許可した。配備先も決まらぬまま3600億円(17機)を投じて購入を先行し、国民を危険を押しつける安倍政府に対して、全国的な反対世論は強まる趨勢にある。

 

「白紙撤回まで追い込む」    地元住民意気込み

 

 国の計画変更を受けて、反対地域住民の会の古賀初次会長(佐賀市)は、「オスプレイは“欠陥機”の名の通り、半年に1回ペースで墜落している。こんなものは佐賀に限らず、日本中どこの上空でも飛んでもらっては困るし、国が急いで買う必要などどこにもない。国民の生命の安全のためでなく、アメリカのいいなりで高い買い物をさせられていることは明らかだ。防衛省は、配備の理由として北朝鮮の脅威を口にするが、現実にはアメリカが緊張を煽っている。目の前で何度も大規模な軍事演習をやって、北朝鮮が落ち着くはずがない。安全保障ではなく、アジア進出を狙うアメリカが中国や北朝鮮に圧力をかけるための道具として日本を利用しており、基地があることで逆に日本の危険は増している。何度も墜落するようなものを“安全”といって国民の頭上を飛行させることと、住民の安全と平和のために配備に反対することのどちらが常識的な判断であるかは、誰が考えてもわかることだ。今回の国の計画変更は、反対運動にとって一つの成果ではあるが安心はできない。背後にアメリカがいる以上、どんな手段を使っても強行してくることは沖縄の現状をみてもわかる。ここからさらにエンジンをかけて、白紙撤回に追い込むまで反対運動を盛り上げていきたい」と力強く語った。


 空港隣接地の農業者の男性も、「2度目の墜落事故で、これまでの国の“安全”という前提が崩れ、説明不可能と判断したのだろう。県民の生命の安全よりも自分の保身が第一で、こんなものを先走って容認した県知事や県議会はとても信用ならないことを県民は学んだ。だが、あくまで白紙撤回するまでは反対運動を強めなければいけない。なにより地権者である漁業者が反対を貫いたことが大きいし、漁業者だけでなく川副町民が一丸となり、市民全体の世論にしていくことが大切だ。来月には農業団体でも反対決議を発する動きもある。デタラメな国に対して、あたりまえの声が勝つまで頑張らなければいけない」と意気込み高く語っている。

 

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