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戦争狂いの死にあがき

 シリアに59発のトマホークを撃ち込んだのに続いて、アフガニスタンには通常兵器のなかで最強といわれる大規模爆風爆弾・モアブを投下するなど、トランプ米政府が立て続けに武力攻撃を加えて世界を揺さぶっている。これらと不気味に連動しながら、北朝鮮近海には米空母打撃群を向かわせるなど、逆らう者には軍事力の行使をも厭わないというメッセージを全方位に発している。アサド政府によるサリンの使用などは国際的にも真偽のほどが不確かなものだが、イラク戦争にのめり込んだブッシュと同じように、アメリカに楯突く者は有無を言わさず叩き潰すという意志表示となった。
 シリアへの攻撃命令は米中首脳会談の真っ只中に下し、晩餐の席でケーキを食べている際、習近平に「先ほど、59発撃ち込んだ」と伝えたのだという。腕力を他の相手に行使して目の前の相手の反応を探り、何なら恫喝を加えるという手法である。トランプの自負するディール外交は、身も蓋もない剥き出し型であることを浮き彫りにした。その数日前には、仮に中国が金正恩の核兵器計画抑制に協力しないのであれば、アメリカは一方的な軍事行動をとる用意があると発表し、選択肢の一つに平壌“斬首”攻撃も含まれると圧力を加えていた矢先の出来事であった。
 北朝鮮のみならず、中国やロシア、イランなど全世界の“敵”に対して一方的に力を誇示し、何なら力技で従わせるという典型的な恫喝外交が始まった。しかし、ふり返ってみるとトランプになったから始まったというような珍しいものではなく、アメリカは戦後からこの方、ずっとこの調子である。「反核」を叫んだオバマとて、リビアのカダフィ撲滅等等、やっていることが欺瞞的なだけで同じである。身も蓋もないか否か程度の違いでしかない。こうした世界覇権の根幹にあるのが軍事力であり、「オマエら原爆を落とすぞ!」が戦後一貫して他国に加えてきた恫喝手段であった。
 戦後70年以上にわたって続いたパクス・アメリカーナの時代は終焉を迎え、世界は明らかに多極化している。終わりゆく者が断末魔に大暴れする「死にあがき」ほど狂暴なものはないが、この恫喝外交がアメリカの思い描いた結末になるかどうかはわかったものではない。内政が行き詰まっているからといって目先をそらしたり、あるいは力の誇示のために東京ドーム1個分焼き払うような大量破壊兵器を投げつけるなど、正気の沙汰ではない。脅すことしか知らない者に世界的な力を見せつけ、平和を希求する圧倒的な力によって戦争狂を縛ることが求められている。 吉田充春

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