沖縄県宜野湾市にある沖縄国際大学の構内に、米海兵隊の強襲大型ヘリコプターが墜落炎上し、大学構内はもとより周辺300㍍の住宅などに甚大な被害を与えた。周辺は小学校、保育園がある住宅密集地であり、あわや大惨事になるところであった。加えて、墜落現場への大学関係者の出入りを阻んだだけでなく、飛び散った残骸のある周辺、隣接する幹線道路まで米軍が封鎖し、証拠品である残骸は一方的に米軍が持ち去り、沖縄県警はその米軍の行動を守るだけで現場検証もできないという主権放棄の実態を暴露した。
外国の軍隊が日本の上空で勝手気ままに軍事飛行をやり、基地外で日本人の生活に重大な被害を与えたのに、現場検証をし、原因を解明し、このようなことが起きないようにするという主権国家としてあたりまえのことすらできないのである。これは沖縄だけの出来事ではない。小泉政府はアメリカ政府のいうがままに有事法制を決めてきたが、そこでは米軍の作戦のためには、民間地の強制接収のほかあらゆる協力の義務を約束している。岩国をはじめ全国の米軍基地では銃口を市民にむけた厳戒態勢がしかれており、基地のない下関港でも「テロ対策」と称して、金網をはって米軍が気兼ねなく使用する便宜をはかっている。日本全土が米軍の戦時動員をする態勢になっているのである。
日本の主権放棄は、軍事だけではない。農水産物の自給はできなくされ、狂牛病肉であれ遺伝子組み換え食品であれ農薬まみれの農産物であれ毒入り食品の輸入自由化をやり、アメリカン・スタンダードの規制緩和で中小商工業はしめ殺され、大銀行も大企業もアメリカ資本に乗っとられ、また紙切れ同然のアメリカ国債を買いこまされて米政府の借金の肩代わりをし、新聞、テレビは「大本営発表」ならぬ「ペンタゴン発表」と化し、文化も教育もアメリカ追随の植民地的荒廃がまんえん、日本がアメリカの植民地的な占領下にあって亡国の道をすすんでいるという現実は社会生活の全分野であらわれている。今回の沖縄の事件はその象徴的な出来事である。
さらに、米軍の傍若無人な軍事飛行は、直接にはイラク戦争の緊張をあらわしている。墜落したヘリは岩国基地に所属し、イラクに派遣されるために訓練をしていたとみられている。このヘリが乗せるのは米軍のなかでももっともどう猛な殴りこみ部隊である海兵隊である。米海兵隊はイラクのファルージャでの無差別殺りくの主力を占めたが、いま激化しているナジャフをはじめとするイラク人民の反米解放斗争に血の弾圧を加える戦斗のために、夜間を問わない訓練をやっているのである。米軍から見ればイラクも日本も同じなのであり、イラクの戦争は遠い中東の出来事ではなく、日本がまさに戦時状態になっているのである。
イラクの主権をじゅうりんする米軍が、同じように日本の主権をじゅうりんしている。そして、この道は石油や市場の略奪のためのアメリカの戦争に日本を総動員し、日本を原水爆戦争の戦場にもして破滅に導くものである。したがって今回の事件は、戦後無限につづいてきた屈辱的な事件の延長線上にあるばかりでなく、今後破局的な被害につらなる性質をあらわしている。
日本が戦争と破滅の道ではなく、平和で繁栄の道をすすむには、戦後60年たってもなお外国の軍事基地を置き、それに治外法権を保障するというような屈辱的な対米従属関係を断ち切って、日本の独立と、イラク人民やアジア諸国人民との友好連帯の道をすすまなければならない。米軍基地を撤去し、「安保」を廃棄することが民族の命運をかけた課題になっている。