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聞く耳もたぬ基地建設に対抗  辺野古巡り政府と全面対決 翁長知事が作業停止を指示

 沖縄県の翁長雄志知事が23日、名護市辺野古の基地建設とかかわった海底作業を1週間以内に停止するよう防衛省沖縄防衛局に指示し、工事をゴリ押ししてきた安倍政府との全面対決の様相が深まっている。昨年末の知事選で、自民党本部が丸抱えした仲井真前知事は、県民世論に押されて辺野古基地建設反対を公約に掲げた翁長知事に10万票以上の差をつけられて敗北した。年始めの衆院選でも沖縄県内では四選挙区すべてで自民党現職が叩き落とされるなど、基地撤去を要求する県民世論を何度も突きつけてきた。ところが、名護市長選も含めて選挙ではことごとく敗北しながら、安倍政府はボーリング調査や基地建設に向けた関連工事に着手し、アメリカの意向をなにより優先する振る舞いに及んでいた。このなかで、世論に縛られた知事が政府に楯突く形で作業中止を求めるという、前代未聞の事態に発展している。
 
 米国優先で民意否定する政府

 翁長知事は会見で、「知事の許可を得ずに岩礁破壊がされた蓋然性が高いと思量されることから、県が必要とする調査を実施する」とし、調査が終了して改めて指示するまでの間、海底の現状を変更する行為すべてを停止するよう指示したことを明らかにした。そのうえで、違反した場合、つまり作業が中止されず沖縄防衛局が指示に従わなかった場合には、岩礁破砕許可をとり消す方針を明らかにした。
 これに腹を立てたのが安倍政府の閣僚たちで、菅官房長官や中谷防衛大臣は「この期に及んで」と何度もくり返し、「日本は法治国家だ。これまで手順を踏んできたことを粛粛と進めていく」とのべ、真っ向から対抗する姿勢を打ち出した。防衛省はボーリング調査には岩礁破砕許可は不要と主張し、仮に許可がとり消されても調査を続行する方針を示した。選挙で示された民意など聞く耳を持たずに強行してきたのは安倍政府の側で、議会制民主主義とか地方自治を散散蹂躙したうえで「この期に及んで」「法治国家」などと口走るのだから、これほど本末転倒なことはない。
 辺野古沖では新基地の建設作業にともなって、沖縄防衛局が浮標のアンカーとして海中に大型ブロックを沈めてきた。これをメディアが「珊瑚礁が破壊される」と報道し、県の想定よりも巨大であるといって争っている。問題は珊瑚が可哀想であるかどうかとか、海が綺麗であるかどうかとか、アンカーの大小ではなく、基地建設である。
 県の最大の許認可は公有水面埋立許可で、仲井真知事時代の2013年12月に承認して今日に至っている。1年以内に着手(ブイを浮かべるなどすれば着手と見なされる)しなければ失効になり、3年をへて事業が進んでいない場合も失効となる許認可だ。この許可とり消しではなく、アンカーの大小に問題を切り縮めているものの、選挙から4カ月を経て、ようやく新知事が「辺野古基地建設反対」の具体的な行動を開始した。沖縄県内で「翁長は何をしているんだ!」の憤激の声が高まるなかで、欺瞞は通用せず、鋭い視線にさらされていることを物語った。

 支配機構は米国隷属 70年にわたる占領状態

 この間、全国に先駆けて米軍支配の沖縄から反撃の狼煙が上がってきた。戦後70年を迎えようというのに、なお最新鋭の基地を整備して居座るために辺野古基地建設がぶち上げられ、日本政府がアメリカの手先になって推進してきた。そのなかで県民全体が基地撤去世論を統一し、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選と連続して基地推進策動を打ち破り、国策として襲いかかる金力、権力をはねのけて勝利局面を切り開いてきた。安倍政府の番頭役はみな退場に追い込まれ、下からの広範な大衆の決起が沖縄県政を突き動かす最大の原動力となって局面を動かし始めた。
 安倍政府は沖縄がいかなる意志を示そうとも聞く耳を持たず、もっぱら従っているのがアメリカの指示であった。名護市長選で地元の政策選択が示されると逆なでするようにボーリング調査を強行したり、知事選後もムキになって工事にとりかかり、辺野古現地では阻止行動をする人間を海上保安庁が力ずくで排除したり、米軍が基地に引きずり込む事件も起きた。すべてにおいて米軍の都合が優先され、日本政府が唯唯諾諾と従って日本人を足蹴にしていく姿と同時に、「法治国家」以前に独立国家ではないこと、アメリカ政府の意向が絶対という主従関係を暴露してきた。
 安倍政府は一方で集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、特定秘密保護法をゴリ押しし自衛隊が米軍の下請軍隊として機能するため日米ガイドラインの改定に向けて突っ走っている。今国会ではガイドライン改定とかかわった安保法制の改定が目玉になっている。民主主義を否定して突き進もうとしているその道は、戦前回帰とか太平洋戦争前への復古というものではなくアメリカの支配層と日本の支配層の結託のうえに立った極めて奴隷的な戦争の道である。
 第2次大戦後、表向きはサンフランシスコ講和で独立したように振る舞ってきたが、アメリカが軍事的にも経済的にも日本を支配し、完全なる従属下に置いてきたことは、いまや誰の目にも明らかとなった。70年にわたって日本を東アジア侵略の基地として利用し、ベトナム戦争であれ、イラク戦争であれ飛び立っていったし、米軍基地は「日本を守る」ためではなく、東アジア地域に睨みを効かせ、攻撃を加えるためのものだったことははっきりしている。「守る」どころか、今度は日本人をアメリカの戦争に駆り出し、弾よけに使おうというのが集団的自衛権の行使である。アメリカのために自衛隊が武力参戦の道に引きずり込まれ、海外の戦闘地域で殺し合いの任務まで担わされる。この道が日本民族にとって滅亡の道であることははっきりしている。
 問題は戦後70年にわたって、このような屈辱的な占領状態が貫かれ、日本政府、警察、裁判所、メディア、官僚機構にいたるまですべての支配機構が国民の側に立たず、いつも民族的な要求を裏切って米軍やアメリカ政府の手足となって機能し、その代弁者や番頭になっていることである。民主党政府になろうが、自民党政府になろうがやることは同じで、沖縄基地問題や米軍再編問題になるとみなアメリカに頭が上がらない。この売国政治が民族的利益を明け渡すTPPを強行し、みずから米軍の肉弾になるために安保法制を改定し、すべて聞く耳を持たずに大暴走をくり広げているのである。アメリカの要求なら邦人の生命を危険にさらすこともいとわないような者が権力を振り回し、調子に乗って中東で演説したおかげで人質だけでなく観光客の邦人まで生命を失わせ、国民に対しては戦争動員の強権政治をやっている。
 米軍基地の問題は辺野古、普天間にとどまるものではない。沖縄全土に米軍基地が置かれ、さらに日本全国に置かれ、対米従属の構造を軍事力によって抑えてきた。極東最大の基地となる山口県の岩国基地では、目下、辺野古のコンクリートどころでない勢いで基地建設が進められ、地下シェルターや最新の司令塔など、防衛省が巨額の予算を注ぎ込んで次次と施設を完成させている。辺野古への新基地建設に世論が釘付けになっている間に、米軍再編に照応して一気に進められているものだ。こうした戦争体制に立ち向かうためには、沖縄だけの斗争ではなく、岩国だけの斗争でもなく、売国政治を打ち負かす全国的な力を束ねた政治斗争として構えることが待ったなしの課題になっている。
 平和と独立を勝ちとるたたかいは今日差し迫ったものとなっている。米軍基地撤去を望む沖縄県民のたたかいは、翁長をして安倍政府との全面対決に向かわせ、全国世論を激励しながら先陣を切って発展している。戦後70年におよぶ米軍支配への怒りを根底にした決起であり、沖縄の統治に無力な政府が恫喝したところで突き崩せるものではない。
 なお、憲法九条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記してきた。憲法を否定して武力参戦の道を進み、「我が軍」などと口にする側が「法治国家」を語るのだから、なにもかもが本末転倒である。

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