先月、下関市内でも市県民税の納税通知書が届き市役所に問い合わせの電話が殺到した。子どもを持つ世帯にこれまであった年少扶養控除が廃止され、6月徴収分から市県民税が跳ね上がったからだ。野田政府は消費税増税を強行しようとしているが、消費税だけでなくあまりめだたないようにこっそりと、収入が減る一方の一般市民の家計から、さまざまな税金の増額、新たな課税などを進めている。
大企業には減税と優遇措置
増税・負担増の日程のうち一般市民のかかわりの深いものを見てみると、
◆2012年
1月…子ども手当から児 童手当に。支給額は3000円減額。
6月…市県民税の年少扶養控除の廃止。
10月…「地球温暖化対策のための税」導入。
◆2013年
1月…所得税の復興増税。
退職金にかかる市県民税の10%控除廃止。
◆2014年
4月…消費税8%に。
6月…市県民税の復興増税。
◆2015年
10月…消費税10%に。
税金関係だけでもこれだけの増税が控えている。国は今年度の税制改正で3030億円の増収を見込んでいる。そのうえに消費税率を10%にして13兆5000億円を国民から巻き上げようというのである。
年少扶養控除の廃止は、民主党の目玉公約だった「子ども手当」の導入とひき替えに決めていたことだ。なくなる控除額は、所得税で年38万円、市県民税で年33万円にもなる(子ども1人当り)。所得税は昨年4月から引き上げられていたが市県民税は今年度分から反映された。16歳以下の子ども1人につき33万円なので、単純計算でその10%(市県民税の税率)=3万3000円が年間で増税となる。子どもが2人いれば6万6000円だ。
一方で、増税の根拠となっていた「子ども手当」は4月に廃止されて児童手当に逆戻り。支給額は1人当り月1万3000円が1万円へと減額になっている。
続いて10月には、「地球温暖化対策のための税」が導入される。これまで原油・石油製品1㌔㍑当り2040円だったが、10月1日から250円上がって2290円に。段階的に引き上げて4年後の2016年には2800円までなる。ガス状炭化水素や石炭など税金も値上げだ。
東日本大震災からの復興財源を確保するためとして、昨年11月30日、総額10兆円超にのぼる臨時増税が可決された。所得税は2013~2037年の25年間にわたって、現在の税額の2・1%を上乗せするという、事実上の恒久増税だ。
またなぜか市県民税にも復興税がかかることとなっており、課税されている全世帯が払う「均等割」が一律年1000円引き上げとなることが決まっている。下関市の場合では、97万円以上の所得がある市民は、現在市民税3000円、県民税1500円の合計4500円の均等割部分を払っているが、2年後からは年5500円となる。今のところ期間は10年間。この増税分は下関市の歳入になるようだ。
一方で法人税の方は、税率を30%から25・5%に引き下げた。そのうえで税額の10%を3年間に限って復興税として徴収するというもので、大企業にとっては減税の方が大きい。
法人税に関しては、「試験研究を行った場合の法人税の特別控除」が2年延長となったほか、太陽光発電や風力発電、ハイブリッド車、電気自動車などを限定した物を導入した企業には即時償却ができるようにするなど、自動車産業や新たな産業に限定した優遇措置は盛りだくさんな税制改正になっている。
介護保険や国民年金保険も
値上がりするのは税金だけではない。隠れた税金といわれる保険料も軒並み値上がりしている。
65歳以上の介護保険料はすでに今年4月の見直しで値上げ。下関市は5300円となり、初めて5000円台に突入した。
国民年金保険料も、2017年まで毎年上がっていくことが決まっており、
2009年=1万4660円
2010年=1万5100円
2011年=1万5260円
2012年=1万5540円となっている。
中小企業が加入している「協会けんぽ(社会保険)」の保険料も値上がりしている。山口県の給与所得が15万円の場合の個人負担を見てみると、健康保険料が月額7523円(前年から368円増額)、40~65歳の現役世代が負担する介護保険料も前年から30円上がって月額1163円に。厚生年金保険料も昨年9月に265円上がって、月額1万2309円となった(2017年まで毎年9月に0・354%ずつ上がっていく)。
毎月15万円の給料からこの保険料を引くと、残るのは12万9005円だ。
下関市の場合では、このほかにもここ数年で上下水道料金や、住民票などを交付するさいの手数料なども値上げしており、市民の負担は増す一方だ。大企業は次次に国内の工場を閉鎖して海外移転をしており、失業者は増え、給料は減り、商店も物が売れなくなっているなかでの増税ラッシュ。庶民の収入は税金と保険料で消えていく様相となっており、野田政府への憤激は高まっている。