沖縄における米軍ヘリ墜落炎上事件は、日本の民族的な主権が奪われていることをあらためて教えた。小泉政府は日本の主権を売り渡し、米軍の下請軍隊として自衛隊をアフガン、イラクに派遣し、在日米軍基地のために犬馬の労をつくし、そればかりかアメリカのいうグローバリズム・自由化、規制緩和の要求に従い、政治も経済も文化や教育も社会生活の全分野で民族的利益を売り飛ばす政治をつづけている。その方向は、日本の植民地的荒廃をすすめたうえに、核基地化をすすめ、日本とアジアを原水爆戦争の戦場にするというものである。第二次大戦で広島、長崎の原爆投下や沖縄戦におけるみな殺し作戦などでさんざんの犠牲を払わせたうえに、ふたたびアメリカの国益のための戦場にしようというのである。このようななかで、宜野湾のみならずすべての米軍基地の撤去、安保条約の廃棄による主権の回復の斗争が日本人民の死活の課題となっている。そのような日本の独立と平和を実現するたたかいは、同じようにアメリカの占領・主権じゅうりんに反対し、アメリカの犯罪に打撃を与えているイラク人民の犠牲を恐れぬたたかいを支持し連帯することと切り離すことはできない。最強の帝国主義アメリカの不法占領にたいして正面からたたかうイラク人民の精神は立派であり、アメリカの戦争政治を挫折させ、世界の人民を激励している。日本において、日本人民の独立と平和という根本的利益の問題として、イラク人民の斗争との連帯を強めることが重要になっている。
破たんするブッシュの戦争目的
イラクを侵略・占領した米英軍と自衛隊をふくむ下請軍隊は、いまや民族独立に決起したイラク人民の抵抗戦争によって、袋のネズミとなっている。ほんとうに力を持っているのは正義の人民であり、強力な武器ではないことをいま一度全世界に示した。イラク人民の勝利は、世界各大陸の反米斗争と平和運動を励まし、戦争屋ブッシュ政府を四面楚歌の窮地に立たせている。米軍の撤退を求めるイラク人民のたたかいは、沖縄の米軍基地撤去をはじめ日本人民のアメリカの植民地化に反対し、米軍基地の撤去、「日米安保条約」破棄を要求する共同斗争となっており、共通の敵とたたかう固い絆で結ばれている。
イラク開戦からわずか1年半で、アメリカの戦争目的はあますところなくあばかれた。ブッシュ政府は戦争の口実として、「大量破壊兵器」とか「テロリストとの結託」とか「民主化」とかさまざまいってきたが、ことごとく真赤なウソであった。あるがままの姿は、罪のないイラク人2万人以上を殺し、よその国に土足で踏みこみ武力で占領したのである。石油を強奪し、国営企業をアメリカ企業が乗っとり、市場原理の経済構造にする、すなわちアメリカの植民地にすること、「中東民主化」といって中東・アラブ世界全体をアメリカが1国で支配することが、真の戦争目的であった。小泉政府がイラクに派兵したのは、そのおこぼれにあずかろうとするものにほかならなかった。
だが、イラク人民の頑強な抵抗戦争によって、いまやその戦争目的もはたせなくなっている。
2週間余りの戦斗でフセイン政府を転覆し、占領支配をはじめたアメリカは、国営企業の100%民営化、関税撤廃、利益の無制限国外移転など、イラクの富を勝手気ままに強奪できる体制をつくった。米英系メジャー(国際石油資本)が、フランス、ロシア、中国などを排除して、イラクの石油権益を独占した。だが、イラクの反米武装勢力の石油施設やパイプラインの破壊によって、生産や輸出がしばしばストップする事態となっている。
アメリカが空爆で破壊したものの「復興」事業186億㌦の元請企業も、フランス、ドイツ、ロシアなどを排除してアメリカ、日本などに限定。チェイニー副大統領の息のかかった大手油田開発会社ハリバートン、米国最大の建設・エンジニアリング会社ベクテルなどが群がって、火事場泥棒を働いたが、イラク人民の反抗が全土に広がるなかで、多くの企業が投資に二の足を踏まざるをえなくなっている。
見放されたアメリカのかいらい
「民主化の一歩」とのふれこみでイラク暫定政府への「政権移譲」を演出したが、イラク人民からは「アメリカのかいらい」とみなされて、まったく相手にもされない。中東・イスラム世界をイラクのような植民地にするブッシュの「大中東民主化計画」も、エジプトやサウジアラビアなど親米諸国からさえ「外部世界の意志を他人に押しつけるもの」として反発され、とん挫している。
ブッシュは「独裁からの解放」を叫んで、いまなお「イラク戦争は正しかった」と強弁している。だが、6割をこえる失業率、学齢児童の3割も就学できない、電気も水も1日数時間しか供給されない状況。また「ゲリラ捜索」と称して住民を手当たり次第に拘束し、刑務所にぶちこんで身の毛もよだつような虐待を加え、殺害して闇に葬ることも日常茶飯事となっている。イラク人民は異口同音に、「これが解放か」「独裁者がアメリカに変わっただけだ」と怒りをこめて語っている。
ファルージャ、ナジャフでも人民戦争の勝利へ
現在イラク戦場で主導権を握っているのは、広範な人民に支持された反米武装勢力である。政党・政派や宗教・宗派、民族の違いをこえた広範な占領反対、民族主権を守る全国組織が結成されている。そのもとで、人民みずからが武装した反米武装勢力は、連携を強めながら全土で米軍など占領軍への組織的な攻撃を加えている。占領軍にとって、いまや安全な場所はどこにもなくなっており、アメリカ政府の発表でも、すでに1000人近くの米兵が戦死し、精神異常者、自殺者、脱走兵が続出している。
イギリスのほか、イタリア、ポーランド、スペインなど約30カ国・1万人が下請部隊としてイラクに派遣されていたが、死傷者が続出するなかで、スペインや中米3カ国、フィリピン、タイなど9カ国がすでに撤兵した。規模からして第4位の派兵国ウクライナも、8月撤兵を表明、イラク中西部の連合軍を指揮するポーランドでさえ、来年一月に予定される総選挙後に駐留軍の大幅削減をアメリカに通告した。加えて、北大西洋条約機構(NATO)で決まった「イラク治安軍の訓練」計画は、事実上とん挫しているし、イスラム諸国軍派遣も、「多国籍軍撤退」の条件がついて棚上げとなった。ブッシュ政府はやむなく、交代予定の米軍2万人を残留させたり、在「韓」米軍から約4000人をイラクに回さざるをえなくなった。
今年4月のファルージャ包囲作戦、5月と8月のナジャフ包囲攻撃の失敗は、米軍がイラク占領をつづけることができなくなったことを示した。
ファルージャはイスラム教スンニ派住民の反米の拠点であった。米海兵隊は「ゲリラ掃討」と称して、同市を封鎖し、戦斗ヘリ、戦斗機、戦車をくり出して街を破壊し、狙撃兵によって婦女子まで見境なく射殺し、800人を殺して街中を血の海とした。シーア派の住民は5月、全土9都市で武装蜂起し、ファルージャ住民を支援、救援物資が全国からぞくぞくと届けられた。米軍はついに停戦に追いこまれ、イラク治安部隊に治安維持を頼らざるをえなくなった。
ナジャフの場合も、8月には米海兵隊2000人にイラク治安部隊1500人を投入して、神聖なアリ廟(びょう)周辺に空爆、砲撃を加え、武装民兵に投降を迫った。しかし、民兵は全国からかけつけた数千人の「人間の盾」に守られて廟を死守した。米軍はやむなく、シーア派の最高権威者の調停に頼り、停戦に応じることとなった。アメリカが意図した民兵の武装解除はかなわず、民兵はバグダッドやバスラなど各地で米英軍や下請軍隊への攻撃を強めている。
ファルージャとナジャフはこうして米軍の「立ち入り禁止区域」となった。これからも米軍占領に反対する斗争を、米軍が力ずくで制圧しようとすればするほど、米軍の踏みこめない都市がふえることになろう。13万8000人の米軍とその下請部隊はまさしくイラク人民に包囲され、人民戦争で袋だたきにあう運命にある。ちょうどベトナム戦争における米軍、中国侵略戦争における日本軍と同じである。戦争の勝敗は武器の優劣ではなく、人民の力で決まるという真理を証明したもので、侵略者の敗北は必然である。
全世界の反米斗争を励ます
米侵略軍をたたき出し、民族独立と自由をめざすイラク人民の斗争は、いま世界各大陸でほうはいとして起こっている反米斗争の焦点となっている。
アメリカが「裏庭」としてきた中南米では、近年アメリカが「新自由主義」の名で押しつけたグローバル化に反対する新しい政治勢力が力強く登場している。
その筆頭はベネズエラのチャベス大統領であろう。チャベス氏が「貧困解消」をかかげて1999年に大統領に当選し、外資に握られていた石油企業の国有化、農地改革などを実行したため、アメリカと結びついた売国資本家、大地主らは軍事政変、石油産業ゼネストそして先日の大統領罷免の国民投票などで大統領の追い落としをはかった。だが圧倒的多数の貧困層の支持で、つぎつぎにそれらの陰険な策動を粉砕した。
ベネズエラの例は、アメリカがもはやその「裏庭」でさえ好き勝手に支配できなくなったことを示した。その民族の独立、経済の自立をめざす流れは、中南米諸国に広がっている。「新自由主義」がアメリカなど多国籍企業を肥え太らせ、労働者、農民などをますます貧困化させるなかで、ブラジル、アルゼンチンなどで左翼的政府が誕生するなど反米世論が強まっている。そうした背景のもとで、イラクに派兵していたニカラグア、ドミニカ、グアテマラが撤兵し、残るエルサルバドルでも撤兵世論が高まっている。
アジアでも、マラッカ海峡の防衛に米軍を進駐させることにインドネシア、マレーシア、シンガポールが「主権の侵害」として反対した。タイやフィリピンがイラク派遣部隊を引き揚げた。「韓国」の盧武鉉政府も、イラクへの増派部隊をいまだに派遣できないでいる。これらアジア諸国の政府はアメリカと切っても切れない関係を持っているが、グローバル化やアフガン、イラク侵略などに反対する人民世論の高まりを無視できなくなっている。
ヨーロッパでも、イラク戦争をめぐってフランス、ドイツなどとイギリス、イタリアなどに分裂した。当初アメリカに与したスペインも、総選挙で勝利した労働党政府は、イラクから撤兵した。「反テロ」を口実に先制攻撃をかけるブッシュ政府、グローバル化で欧州市場の侵食をはかる米独占財団など、「一国至上主義」に反対する大衆世論と斗争の高まりが背景にある。
日本でも、イラク侵略に反対する世論が米軍ヘリの沖縄墜落事件で見られた占領者然とした対応と結びついて、米軍基地の撤去斗争が新たに高まっている。多くの人人が今回の沖縄での事件を「イラクでやっていることと変わらない」と語り、日本がアメリカの植民地同然となっていることに心底から怒っている。
広島、長崎への原爆投下によって日本を単独占領したアメリカが、歴代日本の売国政府を手下にして「日米安保条約」をてこに、日本をイラクなど世界を侵略する基地にしている。今度沖国大に墜落したヘリの同型機六機は、墜落原因の究明もないまま、イラクに派遣された。沖縄をはじめ全国で「安保」破棄、米軍基地撤去の斗争を発展させることは、日本人民のイラク人民との国際連帯を強める責務となっている。