ドキュメンタリー映画『医師 中村哲の仕事・働くということ』(47分)の上映会が1月24日(金)、25日(土)、26日(日)の3日間、山口県内の岩国市、下関市、光市で連続して開かれる。この映画は、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)が作成したものだ。中村哲医師の生き方、働き方に強く共鳴し、21年の歳月をかけて中村医師を約1000時間記録してきた日本の電波ニュース社に依頼して“働くこと”と“仕事観”に焦点をあてて製作された。2022年に公開されて以降、東北から沖縄まですでに300カ所で自主上映会が開かれており、このたび初めて山口県内で上映会が催される。
中村哲医師は1984年に医療支援をスタートし、その活動は35年にわたった。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを契機に、アメリカがアフガニスタンの空爆を開始し、大干ばつと戦乱のなかで栄養失調と感染症で多くの子どもの命が奪われた。中村医師は「医者を100人連れてくるより、水路1本が人々の命と暮らしを守ることになる」と考え、2023年から水路建設が始まった。現地の人たちの力に依拠し、中村医師も人々とともに働いた。着工から7年でガンベリ砂漠に到達し、総延長は25㌔㍍となり、干ばつによって荒れ果てた大地は、恵み豊かな大地へと姿を変え65万人の命を支えている。
映画は、中村医師が残した言葉をいくつか紹介している。
「己がなんのために生きているかと問うことは徒労である。人は人のために働いて支え合い、人のために死ぬ。そこに生じる喜怒哀楽に翻弄されながらも結局はそれ以上でもそれ以下でもない」――もその一つだ。
中村哲医師の軌跡を通して、今一度、人は何のために働くのか、仕事とは何かという本質的な問いを考えようという上映会となる。ワーカーズコープは、「雇う/雇われる」という関係ではなく、働く一人ひとりが出資して経営にも参加し、福祉や子育て、公共サービスといった社会に役立つ仕事にとりくむ団体だ。1本の用水路が人々の希望をつないだように、当事者とともに仕事をおこして地域課題を解決していくこと、「協同労働がみなさんをつなぐ」という理念で活動する。
下関の主催メンバーに聞く
下関市の上映会に関わるワーカーズコープのメンバーで下関市金比羅町の「下関地域福祉事業所・きしゃぽっぽ」(児童発達支援事業、放課後等デイサービス事業)所長の女性は、「こんな時代だからこそぜひ中村哲さんの映画を観て欲しい。とくに若い人たちや医療関係者などに見て欲しい」と語る。
女性が所長を務める「下関地域福祉事業所・きしゃぽっぽ」は、障がいを抱えた子どもたちが放課後や長期休業中などに過ごせる場所で、療育専門家も定期的に通って勉強ができる放課後の塾のような機能も果たしている。きっかけは17年前。ダウン症の子どもを連れて地元下関に帰ってきた女性が、障がいを持つ子どもの放課後や休日に預ける場所がない現実に直面し、「預ける場所がないなら自分でやろう」と立ち上がり、ワーカーズコープの力も借りて開所につながった。
「天職と思っていた看護師を辞めなければならない怒り、学童保育はあるのに、障がいを持つ子どもを放課後に預ける場所がない不条理に対して、当時は怒りがパワーとなって施設を立ち上げた」とふり返る。
障がいをもつ子どもだけではなく、家族やそれを支える地域がないと、誰もが安心して生きていける社会はつくることはできないことを痛切に感じる日々だという。「地域の子どもたちや社会のために何かしたいなと思っているけど、何をすればいいかわからないという人が多いと思う。そんな一人一人が持っている力が活かされる社会になってほしい。この映画上映会が何かのきっかけになれば」と語り、多くの人の参加を呼びかけている。
上映会の日程は以下の通り。
【岩国市】2025年1月24日(金) シンフォニア岩国(2階多目的ホール) ①14時~、アフタートーク「今、地域で何が必要か! 中村哲医師の仕事が私たちに問いかけること」を予定。
(事前申し込み)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf5D4vExrIRjFin7KxL7uM4IgwXnO2Zvip0qVDT3pCLpBTdEw/viewform
【下関市】1月25日(土) 下関市民会館(中ホール) ①午前10時半~、②午後2時~、アフタートーク「中村哲先生の取組から学ぶ誰もが参加できる地域づくり」を予定。
(事前申し込み)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdgthGb-ntf1T4j4Yx5myJRg4BVE7aaTtLELDZXTEEu3S7DEA/viewform
【光市】1月26日(日)光市民ホール(小ホール) ①午前10時半~、②午後2時~
(事前申し込み)https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdc67iZFN1t0I8vGBxtZvj4JKN_rC2CFf1MM5KEULE6RhkJDA/viewform
参加費はいずれの会場も一般1000円、学生・障がい者500円、高校生以下無料。
事前申込み制で、上記の各申し込みフォーム、FAX(0836-37-0830)、あるいは090-4749-2705(ワーカーズコープ・日本社会連帯機構)まで。