(2024年12月13日付掲載)
れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は6日、参院予算委員会で質問に立ち、元日の地震と9月の豪雨で被災した能登半島に豪雪の季節が訪れる前に自衛隊を投入して民有地の土砂撤去を加速させることを石破首相に直接求めた。なお、れいわ新選組は12日、補正予算案の衆院通過にあたり「30年の不況と能登の二重被災外を救えない補正予算に反対」とする声明を発した。以下、山本氏の質疑要旨と声明全文を紹介する。
豪雪前に動かずいつ動くのか
山本 能登半島地震から今日で11カ月と5日。復旧半ばの9月には豪雨と土砂が奥能登を再び襲った。農地、宅地、道路など、いわゆる民有地で土砂撤去が進まないまま雪の季節を迎えている。この12月から2月までの3カ月予報で能登地方の雪の予測と過去3年間の雪の予測は?
国交省気象庁長官 11月19日に新潟地方気象台が発表した今月から来年2月までを対象とした3カ月予報では、北陸地方について冬型の気圧配置が強まる時期があるため、降雪は平年並か平年より多いと予報している。また、昨年までの3年間に12月から翌年2月を対象として発表した3カ月予報では、北陸地方の降雪量について、2021年11月発表の3カ月予報では平年並みか平年より多い、22年11月発表の3カ月予報では平年並みか平年より多い、23年11月発表の3カ月予報では平年より少ないと予報していた。
山本 内閣府。過去3年間、雪の影響で能登では何が起きたか?
内閣府防災担当政策統括官 委員から孤立集落の状況についてと通告を受けているので、それについて答える。2021年1月に北陸地方で短時間に降雪量が増加した大雪により、最大で4集落57世帯。また、22年12月中旬からの断続的な大雪により、最大で14集落84世帯。23年12月の石川県輪島で48時間降雪量が観測史上1位となった記録的大雪により、最大で25集落223世帯が倒木等による道路の断絶で孤立したと承知している。
山本 平年より少ない、平年並みとされる年であったとしても、私たちの想像を絶する雪の降り方だ。今年11月、石川県は、本格的な雪の時期となる12月中旬までに住宅に流れ込んだ土砂の撤去を終えたいとコメント。農地、宅地、道路など、いわゆる民有地で土砂撤去に使える国の事業は? それぞれ最大の国庫補助率は?
国交省都市局長 宅地に堆積した土砂撤去に使える堆積土砂排除事業については、激甚災害指定による国費率のかさ上げがなされた場合には、過去5年間の平均の率は98・7%になる。また道路等の公共土木施設災害復旧事業については、激甚災害指定による国費率のかさ上げがなされた場合、過去5年間の平均の率は99・2%になる。
農水省農村振興局長 農地の土砂撤去に使える事業は、農地農業用施設災害復旧事業だ。本事業の最大の補助率は、激甚災害指定による補助率のかさ上げ分を加えた過去五年間の平均補助率に、さらに今回、地元負担分をすべて市町が負担すると伺っている。その場合の市町への地方交付税措置も加味すると、99・4%となる。
山本 これらの事業を使えば費用の9割以上が国負担。なのに、ほとんど使われていない。なぜか?
現場の声を要約すると、省庁の縦割り(3省にまたがる事業)、要件の厳しさ、事務負担が重すぎるなど、こういった批判を受けて、10月末、国は3つの省庁の制度をまとめて、農地、宅地、道路の土砂撤去を縦割りなし、一括で使えるスキームを導入。その目的と中身を説明してほしい。
国交省 宅地や農地を含めた一括撤去スキームを活用する場合は、それぞれの施設の土砂と瓦礫(がれき)とに契約や業者等をわけることなく、一括した発注により撤去をおこなうことが可能となる。この枠組を導入することにより、自治体の事務負担の軽減や土砂等の撤去の効率化が図られると考えている。
山本 11月7日、県知事は、道路、河川、農地は建設業者に発注、国の一括撤去スキームを活用して面的な処理を進めると発言。これで土砂撤去は進むのだろうか? 一括撤去スキームの現在の申請件数は?
国交省 本年10月に関係省庁から通知をした、いわゆる一括撤去スキームの活用について、現時点で自治体より申請はない。
制度あっても申請ゼロ ボランティアに丸投げか
山本 スキームはあっても、公費解体やその他、復旧作業等々、手が一杯で土砂撤去する事業者が見つからない。スキームが導入されて1カ月以上経過するが申請はなし、そういうことだ。過去の災害でも、復旧で事業者が足りず、入札不調がくり返されてきた。平成28年熊本地震の後、29年度の市長村の事例を紹介してほしい。
国交省 国土交通省九州地方整備局及び熊本県が共催した熊本地震等復旧復興工事情報連絡会議において、県内市町村工事における不調・不落状況として、入札件数計9150件に対し、不調・不落の件数が計2311件。発生率は約25%あると報告されている。
山本 どこも手が一杯、引き受けられる県内業者もおらず安い単価では見合わない。県外の事業者も足を伸ばせない。そんなことが全国の被災地で起こり続けてきた。ここ能登においてもだ。結局それをどうするか? NPO、ボランティアが無償で引き受けている。こんな不条理があるか?毎度くり返してきたのが日本の災害現場だ。
地震と豪雨を受けた奥能登でも事業者不足となることは想定内だったのではないか。
11月1日、県知事の発言。「個人の住宅など宅地については、被災家屋が多数におよび、すべてを建設業者などに発注することが困難。より多くのボランティアのご協力をいただいて、宅地内からの泥出し作業を加速させたい」。
農地や道路どころか宅地に関しても事業者不足と、宅地の土砂撤去はボランティア、NPO任せになるということを県知事自身が認めている。家の後ろに山を背負っている場所では土砂崩れのリスクもある。それもボランティア、NPO頼みでやるなど正気じゃない。
11月21日、「ボランティアが1万4000人足りない。さらに急がなければいけない。ぜひ政府を挙げて応援をお願いしたい」と知事が発言している。
来年1月から珠洲市では雪や、ボランティアの不足を鑑みて、ボランティア活動を週末限定で対応する。雪が降ればさらに応援の数は減る。
12月1日、私も珠洲市にお邪魔した。ボランティアが担当する宅地の土砂撤去について、ボランティアセンターで関係者に話を聞いた。要請のあった宅地で土砂撤去が完了していない件数は216件。作業終了のメドは「来年2月~3月」という。昨日、念のためにもう一度電話で確認をしたが、その数字、内容は一切変わっていない。ボランティアは週末型に移行して、この冬は豪雪。新たに相談も増えてきている。2月、3月に作業終了など到底無理です――そういう声もある。
私が奥能登に入った2日後、県知事が驚愕の発言。「災害ボランティアが増加し、被災者から市町のボランティアセンターに要請のあった箇所については年内には対応できる見込みとなった」と議会で発言している。ちょっと待ってほしい。珠洲では来年2月から3月に終われるかもわからないのに、年内でなんとかなるって、全体の話としてそういう風に語るのはまずくないか。豪雪のシーズンを前にトップのこの振る舞いは自殺行為だ。
総理、自衛隊に土砂撤去をしてほしい、してもらってほしい。至急対応していただきたい。自衛隊は22万人いる。このうち2万人でも投入して一気に進めてほしい。
解散総選挙の前、10月8日、私が総理に直接、能登で土砂撤去に自衛隊投入を求めたさいの総理答弁を教えてほしい。
防衛省統合幕僚監部総括官 令和6年10月8日、参議院本会議における山本議員に対する総理のご答弁の該当部分について申し上げる。
「山本議員から今般の豪雨災害にかかる自衛隊の災害派遣についてお尋ねいただきました。現在、被災地におきましては民間の事業者等が活動しておる状況にあり、被災自治体からの自衛隊に対して泥のかき出しといったご要望は出ていないものと承知をいたしておりますが、今後、具体的なニーズが生じました場合には、自衛隊の活用の検討も含め政府全体で必要な支援をおこなってまいります」。以上。
見て見ぬ振りする石破首相 「要請ない」の逃げ口上
山本 具体的なニーズがあれば自衛隊の活用も考える、総理はそうおっしゃっている。県知事は11月13日、自民党の政調会長と会談。土砂撤去に自衛隊の派遣を含めた支援を求めている。これに対して総理、検討したか? どう検討したか? そして、どう返答したか?
石破首相 ご要請をいただいてないということが事実としてある。そのうえで緊急性、公共性、非代替性――つまり自衛隊という組織を動かすときにはこの3要件が必要なのはご案内の通りだ。これを充足し、石川県のしかるべき方、それが石川県知事であれ珠洲市長であれ、それからご要請があった場合、自衛隊の派遣は当然あり得る。今回はそのご要請をいただいていないということだ。
山本 知事が自民党に気遣ったのだ。政権に気を遣ったのだ。だから自民党の政調会長と会って、これは結局握り潰されたのだろう。自衛隊に出てほしかったのだ。やめてほしい。国会でも(石破総理は)「能登を忘れた日がない」、そうおっしゃったじゃないか。けれども、その一方で、あなたは解散総選挙までやっている。
能登に冬が来る前にすぐに手を打たなきゃいけないときに、あなたは選挙に打って出て、何カ月放置したんだ、事実上。リップサービスだけだ、やっていることは。
能登を見捨てるな。
雪が降る前に何とかしてほしい。
このまま年を越せというのか?
総理、自衛隊を派遣してほしい。一気に進めてほしい。いつまで続けるのか。自衛隊の派遣によって土砂の撤去を一気に進めてほしい。いかがか?
石破首相 石川県知事も私、長い友人だが、自民党に配慮してあえて要請しなかったなどという無責任な人ではない。私どもも地元のことはよく知っている。自衛隊員はそういうときに派遣されることを厭(いと)うような者もいない。そういうことはない。公共の電波にのってこういう話があるので、私どもはそういうつもりはまったくないし、要件が合えば派遣する。そして、石川県知事はそんな無責任な人ではないということは私なりに断言させていただく。
山本 もう一度検討してほしい。直接要請されてないだけだろう。検討していただけないか? もう一度。
委員長 質疑時間が来ている。以上で山本太郎君の質疑は終了した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【声明】30年の不況と能登の二重災害を救えない補正予算に反対
本日12月12日、衆議院本会議において、
自民・公明・立憲が修正合意した補正予算案が可決(自民・公明・維新・国民民主党が賛成)。
れいわ新選組は反対した。
日本は先進国で唯一、30年に渡る不況。
そこにコロナと物価高まで上乗せされ、能登半島では震災と豪雨の二重災害。
その状況下で、あまりにも足りない補正予算が通過した。
なお、足りない補正予算の割には、原発、軍事ビジネス、
万博の増額はキッチリ含まれていることは付け加えておく。
そして、今回も自公政権に最大のアシストをしたのは野党第一党・立憲民主党だ。
そもそも、当初の政府案(13兆円規模)に対して
「規模感ありきはダメ」と半額(7兆円規模)の対案を公表した立憲民主党。
与党も野党第一党もお話にならないところからのスタート。
その野党第一党が、おいみんな、今回は衆院総選挙で過半数を取った野党で、
歴史的な修正案を通過させよう。自公は打倒しようぜ。
と呼びかけ話し合いになった。野党8会派で協議することとなった。
れいわの補正予算提案は60兆円規模であるが、
野党第一党は政府案に減額すら求める貴族っぷりであったため、
そもそもテンションに大きな開きがあり、気まずいものがあった。
しかし、一緒にやろう、一緒にやろうと言ってきて、
そうであるなら超ドケチな奴らでも最低限飲めるだろうミニマムを、こちらから提案した。
私たちとしても、ひょっとして野党過半数の中で、減税や、能登の被災者が
冬を越すためのなけなしの予算を取れる可能性はゼロではないと思ったのだ。
そこで、やむなく消費税5%減税などを提案した。
しかし一向に進まないので、能登半島地震で被災した全ての世帯が、
この冬に暖房器具を買ったり、自分で使い先を決められる10万円給付を提案した。
(対象は、石川県に限定せず、また一部損壊も含む全ての被害区分の世帯とする。
13万9690世帯×10万円=139億6900万円。)
立憲民主党は、それさえも飲まず、政府案減額にこだわり続けた。
私たちは、もうこれは無理だと判断し、政府案にも立憲案にも乗らないと考えた。
そして最終局面で、8会派をまとめると言っていた野党第一党・立憲が、
ちゃぶ台返しを行って自民にすり寄り、
自分たちがやりました!
たった1000億円の予備費の付け替え(増額ではない)を勝ち取りました!
とアピールする運びとなった。
繰り返し言うが、今は30年の経済災害、
中小零細事業者がばたばたと倒産している中にある。
消費税廃止、一律給付金(金持ちからは後から回収)などをやらないままで
「物価高に負けない賃上げ」「日本の景気回復」とは、一体どんな世界観をしているのか。
このような貴族たち、30年日本を不況にしてきた者たちが
「現実をみろ」とのたまう国会というお喋り小屋において、
不況が40年になる予算が無事通ったようである。
でも私たちはあきらめるわけにはいかない。
苦しい思いの国民、事業者と力をあわせながら、
党勢を拡大し、キャスティングボートを握る存在になっていくしかない。
世界では、野党が内閣の緊縮予算や専横と闘い、
内閣を追い詰め国会に風穴を開けている。
国会の外には国民がいる。ただ、その声を聴くかどうかだ。
私たちは、これからも国会の中で外で、みなさんと国民運動を形成していく。
2024年12月12日
れいわ新選組