下関市では1月末におこなわれた市議選後初の定例会が開かれている。3月定例会は来年度の予算審議が中心に置かれている。本池市議は11日、2期目最初の個人質問にのぞみ、放課後児童クラブの運営についてや緊急雇用対策事業の大幅な減額について、また消防庁舎をライトアップする予算が計上されていることについて質問し、市民生活を向上するため再検討を求めた。質疑応答の要旨を紹介する。
放課後児童クラブ
本池 共働きにせよ片親世帯にせよ、保護者が仕事や看病、介護などで昼間に子どもをみることができない家庭が増えるなかで、児童クラブの存在はありがたいものになっている。子どもが放課後に集団で遊んだり宿題をしながら過ごせることは、保護者にとっても大変安心できるものだ。
来年度予算では今年度と比べて約1億2000万円の増額で、3億5858万5000円が計上されている。来年度は現在と比べて何がどう変わるのか。
佐伯こども未来部長 現行は小学校3年生までが対象だったが、来年度から小学校6年生まで拡大する。利用時間については開所時間を30分延長して午後6時半まで、土曜日は午後6時までにしたいと考えている。職員については平成26年9月に条例制定した放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準に基づいて、支援の単位ごとに2名以上の配置をしたいと考えている。
本池 開所時間が平日に30分延長されたり、土曜日に午後6時まで見てもらえるということは仕事を抱えている父母にとって大変助かることで、ほっとしている人も多いと思う。5時以降は親の迎えが必要ということなので気持ちの余裕ができるという声も聞いた。また六年生までが対象になったことで、子どもだけが家にいるよりも安心だということで希望する子どもたちも出ていると聞いている。しかしもう一方で父母が支払う保育料も変更されることになっている。これはどうなっていくのか。
佐伯こども未来部長 現在月曜から土曜までの利用で月額3000円、夏休み中の利用加算を2000円としているが、新年度からは月曜から金曜の利用で月額4000〇円、土曜も利用の場合は加算を1000円、夏休み期間の加算を月額2600円とする予定だ。
本池 今議会で審議している話で、議会としての結論はまだ出ていない。ところが、すでに学校の説明会でも話されているというので驚いている。現行の1カ月3000円が新年度から4000円になり、土曜日に預ける人はさらに1000円を加え5000円になる。夏休み加算は現行の2000円を2600円に値上げするというもので、このうえにおやつ代が1日50円、1カ月1300円程で、通常の月では土曜日も利用すると6300円になり、夏休みには8900円となる。これは1人分なので、2人の場合は2倍になる。来年度からは減免制度が始まるということで、2人同時に預けると2人目は半額になると聞いたが、減免はどのような条件の家庭が対象になるのか。
佐伯こども未来部長 生活保護世帯、市民税非課税世帯、多子世帯の負担軽減は考えたい。
本池 担当課に聞いたところ、「下関では国の基準よりも父母負担を減らし、市の負担を増やしたから値上げがこれくらいで済んだのだ」といわれていた。ただ、やはり問題として、利用する若い親世代にとっては負担増になるわけで、昨今の厳しい経済情勢のなかでこうして各種の公共料金が上がっていくことは家計の重しになる。下関は県内でも市町民所得が低く、就学援助の受給率は群を抜いて高くなっている。親は子どものために一生懸命働いているが、正社員ばかりではなく派遣や臨時も多く、母親たちもパートを掛け持ちしながら働いていたり、食べていくのがやっとという家庭も少なくない。学校へ納める校納金や給食費、教材費も1万円はこえる。そこに児童クラブで子ども1人なら6300円、2人目が半額なら1万100円という負担が加わることになる。児童クラブを利用したいが、「金銭的負担が大きいので、やめざるをえない」という声も耳にする。働く父母の手助けとなり、子どもたちの放課後の居場所を社会的に保障するという制度で、せっかくありがたがられているのに、金銭がネックになって行けない子どもが出てくるのでは本末転倒だと思う。値上げと関わってその辺りの問題、影響について市はどのように考えているのか。
近年児童クラブの予算のほとんどが指導員の報酬・賃金、共済費となっている。少なくとも合併前の旧四町では無料であったし、旧市内でも保育料が1000円だったときは、そのなかに指導員の手当などは含まれなかったと思うが、どうか。
佐伯こども未来部長 クラブの運営を始めたのは一番古い記録で昭和42年くらいからで、確かに平成13年まで無料で続けてきた。平成14年に保育時間の延長、土曜日の開級日の実施、夏休みの終日実施クラブの増加で1000円もらっていた。平成16年から指導員の増員と、夏休みの終日実施クラブを増加させ2000円とした。平成22年、冷暖房の設置と、すべてのクラブで夏休みの終日実施を整える過程で保育料を3000円、夏休みの終日加算を2000円とした。
本池 財源は父母からの負担金1億2800万円を入れて組まれているが、これは人件費だ。本来このような社会保障的政策は国や県、あるいは地方自治体である市が負担してしかるべきだと思う。自己負担や自助努力だけで公共の福祉が営まれなければならないとすると、税金は何のためにとっているのか、社会保障とは何なのか考えなければならない。働く父母たちにとってありがたい政策であるなら、尚更その負担額については利用しやすいものでなければならないと考える。
なお親御さんから聞いた話のなかで、これまで家庭の都合でしばらく休む場合には休会の手続きができ、その間は保育料が徴収されなかったものが、来年度から続けて休む場合には手続きをしなければ自動的に保育料を徴収され、もし支払わなければ退会しなければならなくなるそうだ。子どもたちがたくさん利用できた方がいいと思うが、利用しにくいやり方になるなら、これも検討すべきだと思う。利用料と合わせて、ぜひ再度検討されるよう要望する。
緊急雇用創出事業
本池 緊急雇用創出事業の1400万円について質問する。もともとは、8億円の事業で始まり、翌年には4億円、次には2億円、今年度には9700万円、来年度には1400万円と激減している。このように減らしても良いと見なした判断の根拠は何か。
森本産業振興部長 緊急雇用創出事業については、国の新たな事業がおこなわれないため、平成27年度末までに終了することとなっている。
本池 聞きとりのさいには有効求人倍率の大幅な向上ということもいっていたが…。アベノミクスが成功したという方もいるが、下関に何か波及しただろうか。「緊急雇用創出事業」が必要なくなったといえるほど市民生活全般が上向いたとは思えないのが実情だと思う。職安には今もってたくさんの市民が訪れているし、その雇用に行政が全力で力を入れること、必要とされる政策をくり出していくことが切実に求められている。国がやらないのなら市独自でおこなうべきだと思う。
消防署のライトアップ
本池 消防庁舎ライトアップ事業1400万円について、まず何をライトアップするのか、その目的とどなたの発案なのか答弁をお願いする。
義満消防局長 下関市の安全・安心を醸成することを目的に消防庁舎をライトアップし、一見して消防署と認識していただき、安全で安心な街づくりのランドマークとして消防庁舎を市民にアピールするとともに、周辺街並みの賑わい創出に寄与しようというもの。
消防の認知度を高めるとともに光の織りなす演出により市民の安心感が格段に増し、消防に対する信頼や期待が高まり、街並みの賑わい創出と合わせて防犯面でも効果を有すると考えている。さらに消防防災学習館「火消し鯨」をアピールし入館者の増が期待できる。
この事業は消防局の予算でおこなうものなので消防局で立案した。
本池 消防署は市民の生命と財産を直接的に守る重大な任務を持っている。一昨年、新消防署を建てられ、新しい指令システムの下で教訓とするべき重大な問題が起こったことは記憶に新しいが、光を放つことで市民の安心、安全が守られるのだろうか。
義満消防局長 これにより市民の信頼を得るとともに認知度を深めるという目的である。
本池 消防署が照らされるということと、そのことによって市民の安心・安全が守られるか否かは直接には関係がないものだと思う。市民の生命・財産を守るのは光ではなく、消防隊員一人一人の奮斗にほかならない。その1400万円があるなら、もっと他に市民の生命・財産を守ることとかかわって、例えば救急車を増やすとか、隊員の人数を余裕をもって確保するとか、必要とされる事業に回せないものかと思う。
明るいか暗いかでいえば、明るいにこしたことはない。しかし1400万円もかけて消防庁舎をライトアップする必要があるのだろうか。予算が限られているなかで、父母負担や公共料金が一方で上がりながら、こうした事業にはポンと大きな予算がつけられることに疑問を感じる。あと明るいか暗いかでいうと、この間、市内の市道や県道の脇に立っていた都市照明がスポンサーの撤退で、昨年の11月頃までに五百数十本のうち半分がすでに消され、撤去されているところも出ている。夕方から夜明けまで真っ暗闇になっている場所が増えている。電灯を維持しようと思うと、その費用は1灯につき1年で1万円程度だそうだ。スポンサーが新たに申し込めばいいが、むしろ不況のもとで撤退し、街全体が暗くなっていく趨勢だ。仮にこの1400万円が街灯に回されるなら1400本の街灯が維持できることになる。市民の生活に明るさをもたらす方がはるかに有益であると思う。「選択と集中」が叫ばれる昨今だが、この優先順位について中尾市長はどうお考えか。
中尾市長 この場は個人質問で予算の金額についてのお尋ねの場なので、また改めてそれについては質問をお願いする。
本池 優先順位のことだけだったのだが、答えがなかった。個人質問を終わる。