被爆地広島を冒涜
米軍岩国基地(山口県)への厚木基地(神奈川県)の空母艦載機部隊移転にむけ、岩国基地沖合約4㌔に超大型浮体式海上構造物「メガフロート」建設を検討していることが明らかになった。現在建設中の空母接岸用岸壁、沖合拡張中の新滑走路に加え、第三の滑走路を増設する大増強計画。10月に発表する在日米軍再編の中間報告に盛りこもうとしている。岩国や周辺住民のなかでは「4㌔沖合に出すからいいという問題ではない。ますます広島湾全体の問題だ」と憤りを募らせている。広島湾一帯を米軍の核攻撃拠点にする米軍再編計画は日本の将来にかかわる重大問題であり今総選挙における重大争点である。
基地沖合4キロに海上構造物
岩国基地では現滑走路の一㌔沖合に2008年度に完成する予定で新滑走路(2440㍍)を建設中。今回の案は新滑走路の約4㌔沖合に新たにメガフロートを建設。建設費は4000億~5000億円と試算している。
岩国に移転する艦載機部隊は、米海軍横須賀基地を母港とする米空母「キティホーク」に搭載されたFA18戦斗攻撃機など約70機。空母が横須賀に停泊するとき陸上の厚木基地に飛来し空母の出港まえにNLP(夜間着艦訓練)を義務づけている。現在NLPは厚木近辺住民の強い反対運動で、約9割は1250㌔離れた硫黄島で実施し、残りを厚木で実施している。硫黄島は横須賀から飛来時間が2時間近くかかる。米側は厚木と硫黄島での訓練を岩国のメガフロートでおこなうよう要求している。
メガフロート計画は、米軍再編に影響を与える米連邦議会の「海外基地見直し委員会」が8月半ば、普天間基地機能を岩国か嘉手納に全面移転させる最終報告を決めた動きと符合している。
戦斗攻撃機三百機配備
普天間航空基地(宜野湾市)はヘリコプター、固定翼機あわせて約70機が駐留し、沖国大へのヘリ墜落事件など事故がひん発。1995年の米兵による少女暴行事件を機に噴き上がった積年の怒りに突き上げられ、翌96年のSACO(日米特別行動委員会)合意で普天間基地返還を決定。米軍は当初、ヘリ部隊を名護沖の埋め立て地に移転しようとして住民の反発でとん挫した経緯がある。
当時米軍が要求した前提は「面積は約200㌶弱、形状は長方形で、長さは約2600㍍で幅が約730㍍」とし「滑走路の長さは2000㍍、旅客ターミナル等の施設面積は約10㌶程度」という内容。代替施設本体は長辺330㍍、短辺60㍍、厚さ13㍍の箱形ユニットを84基つなぎあわせ26基の係留施設で固定。耐用年数は100年、としていた。
厚木艦載機部隊移設にむけたメガフロート計画が「第三の新滑走路」として実行されることはNLPの新施設を増強し、現在新設中の滑走路へ普天間基地機能移転をも可能にする関係である。
岩国の井原市長は市民の強い基地増強反対世論のなかで「メガフロートだろうとなんだろうと基地機能強化にあたり反対だ」と表明。「三本目の滑走路建設」を条件に移転容認を決議しアメリカの要求を代弁してきた岩国商工会議所の笹川徳光会頭は「当然の話が出てきたと思っている」と表明している。
岩国基地は現在、夜間攻撃能力と核攻撃能力をあわせ持つ米海軍と米海兵隊の主力機・ホーネット戦斗機36機と、電子情報収集と電子妨害と目標攻撃の3つをこなすEA6Bプラウラー電子戦機5~6機、佐世保所属の強襲揚陸艦ベローウッドに搭載され垂直離着陸ができるAV8Bハリアー6機、沖国大に墜落したCH53D強襲揚陸用ヘリ部隊8機の約60機を配備している。
岩国基地沖合拡張工事で2440㍍の大滑走路と空母接岸可能な大型岸壁(水深13㍍、長さ360㍍)を増設すれば滑走路を増設したうえ軍港機能を持つようになる。ここにNLP用のメガフロートを増設する計画は、空母の出撃拠点とする意図を示している。
米軍が明らかにしている岩国をめぐる戦斗機部隊の移転・飛来構想は「空母を佐世保基地沖合に配備しその艦載機部隊を岩国に飛来(約70機)」「厚木基地機能移転にともなう艦載機の飛来(70機以上)」「空中給油機部隊15機をふくむ普天間機能の移転(約70機)」などが出ている。現在約60機前後岩国に配備されている戦斗攻撃機部隊を5倍近い300機規模にする大増強構想が動いている。
米軍岩国基地は日本本土に5カ所しかない米軍弾薬備蓄施設と連動する。近隣の広島には秋月弾薬廠(広弾薬庫、川上弾薬庫、秋月弾薬庫)と3カ所の戦略備蓄基地があり、関係の深い佐世保弾薬補給所と針尾島弾薬集積所は米海軍と海兵隊用で両施設をあわせ四万㌧の弾薬を貯蔵している。
米軍の弾薬施設と連動
加えて岩国の海自第31航空群司令部、空母を護衛する潜水艦や護衛艦関連で高い技術を持つ海自呉地方総監部(呉市)や出雲、米子、日本原、防府北、山口などに駐屯地を構える陸自第一三旅団司令部(海田市)とも連動し、自衛隊と米軍が一体化して海外出兵する拠点となる。
このなかで山口県では137万㌔㍗2基という最大級の軍事施設となる上関原発建設計画が進行し、ミサイル攻撃の格好の標的となり、原爆投下と同じ大惨事をひき起こす原発を推進している。
メガフロート構想もふくむ岩国基地大増強は、被爆地である広島湾一帯を米軍が自衛隊を指揮し、アジアへ出撃する体制をつくる屈辱的な計画であり、小泉首相や二井知事がアメリカに尻尾をふって従う屈辱を黙って見過ごすことはできない。原水爆戦争を阻止するために岩国基地増強を許さず米軍基地を撤去させ、上関原発を撤回する世論を強め、総選挙で売国的な小泉政府に広島、山口両県民の厳重な審判を下すことが求められている。