パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの大規模侵攻が続き、数百万人の避難民が追い詰められたガザ南部ラファへの総攻撃が予告されるなかで、アメリカをはじめ世界中の大学で、ガザの即時停戦と虐殺の停止を求めるとともに政府や大学当局に対してイスラエルへの軍事的、経済的、学術的な関係を絶つことを求める抗議行動が広がっている。激しい抗議行動が広がっているのは、イスラエルへの武器弾薬供与等の軍事支援を続けるアメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリアなどのいわゆる「西側」の国々であり、その足下で国境をこえて自国政府や大学機関に対してジェノサイドへの関与を問う声が高まっている。学生たちの運動は社会的な共感を集め、高校生もストライキ(学校閉鎖)をおこなうなど、いわゆる「Z世代」が運動の主体として前面に登場している。
パレスチナと境遇重ねる若者たち
パレスチナ・ガザへのイスラエルによるあからさまなジェノサイド(大量虐殺)が進行するなかで、「テロリスト(ハマス)殲滅」「自衛権の行使」という名目で四万人近くもの民間人(大半が女性や子ども)を無差別に殺害してきたイスラエルと、それを容認して停戦仲介にも動かず、イスラエルに武器や弾薬を供給し続けるアメリカをはじめとする欧米諸国の対応に抗議する若者たちの運動が各国で高まっている。
パレスチナでは、70年以上続くイスラエルによる違法な土地収奪、占領、人種隔離政策のうえに、昨年10月7日から200日以上にわたってガザ地区への爆撃と地上侵攻が続いているが、国連安保理ではアメリカが拒否権を使って停戦決議を葬り、主要メディアの報道も一昨年2月以降のウクライナ戦争と比較しても圧倒的に少ない。
だが、中東衛星メディア「アルジャジーラ」や独立系ジャーナリスト、現地の人々によって毎日のように無残な映像やガザ現地の声がネットやSNSを通じて世界に拡散され、とくにイスラエルを側面支援する欧米諸国で暮らす若者たちのなかで「なぜジェノサイドを容認するのか」「これ以上の虐殺を許すな」「パレスチナを解放せよ」の世論が堰を切ったように表面化した。
抗議デモや座り込み、イスラエル支援企業へのBDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動、また大学にイスラエルや軍需関連企業との経済的、学術的な提携を絶つことを求める学生たちの学内キャンプ運動が拡大している。
アメリカでは、ハーバード大学、ブラウン大学、コロンビア大学、ペンシルベニア大学、カリフォルニア大学などの名門校を皮切りにパレスチナに連帯する抗議行動が、大学当局の停学や卒業資格剥奪の処分、警察当局による暴力や逮捕の圧力にもかかわらず、全米150校にまで拡大した。
1948年のイスラエル建国以来の盟友であるアメリカには、国内にユダヤ人も多く、イスラエルで事業を展開する企業をはじめ、金融・メディア・エンタメ・IT・軍需などのあらゆる業界に強力な資金力を持ったイスラエル・ロビーが存在する。それらの企業や投資家の代理人が送り込まれている米国議会は「大学が反ユダヤ主義に侵食されている」「ユダヤ人学生の保護を怠っている」として大学当局に圧力をかけ、大学は警察に学生運動の弾圧を要請。市警察だけでなく、テキサス州やカリフォルニア州などでは対テロ特殊訓練を受けた州警察の武装警官が警棒やテーザー銃などの武器をもって丸腰の学生たちを弾圧・逮捕し、オハイオ州立大では屋上に狙撃兵が配置されるなど常軌を逸した弾圧措置をとっている。
抗議行動に参加する学生たちは、集会やメディア取材SNSを通じて口々にのべている。
「これまでどんなに学内でマイノリティへの人種差別事件や銃乱射事件が起きても学生を守るための措置をとらず、銃規制もせず、政府や大学は“自分の身は自分で守れ”といってきた。だから私たちは子どものころから、銃乱射が起きたときに備えて木製の机でバリケードを作ったりする避難訓練を受けてきた。今回の抗議活動で学生たちが身を守るために作ったバリケードはそれを応用したものだ。すると今度は大学が警察を介入させ、学生に銃口を向けてくる」
「今回の行動で、大学という身近な場所でさえも虐殺と繋がっていることが明らかになった。不正を不正ということすら許されず、誰からも守られない。みんなパレスチナやガザの人たちの境遇に自分を重ねている」
「私はユダヤ人だが行動に参加している。ここには暴力は存在せず、お互いをリスペクトしあっている。でも警察はそんな私たちユダヤ系学生さえも羽交い締めにして連行する。イスラエルの残虐な行為は、ユダヤ人とは何の関係もない。私たちはユダヤ人としてシオニズム(ユダヤ人の名の下におこなわれる虐殺や占領)に反対する」
「絶望すると同時に、私たちにはもう失うものがない。虐殺が正当化され、おかしいことがおかしいといえない世界で自分が優秀な成績をとって大学を卒業しても意味がない。たとえ逮捕されたり追放されてもかまわないと考える学生が増えている」
「学生は歴史的に道徳的羅針盤だった。今まさに歴史の転換点にいる。自分たちの教育がパレスチナ人の命やあらゆる人命を犠牲にしておこなわれることがないように厳しく要求する。そして、イスラエルの違法な入植、アパルトヘイト政策、もっともらしい理由による大量虐殺行為を支援したり、利益を得たりする企業からの撤退を求める」
カリフォルニア大学バークレー校などマイノリティ出身の学生が多い大学では学内キャンプを取り締まらない大学もある。同校の歴史学教授は「バークレーでは、学生キャンプを違法とせず、大学の授業は休みとし、このこと自体を教育の場とみなしている。イスラエル批判と反ユダヤ主義を同一視することに問題がある。新たなマッカーシズムに対抗しなければならない。自分もイギリスでの学生時代に反アパルトヘイトのストライキをやった。“何も変わらない”と当時もいわれたがアパルトヘイトは終わったではないか。教え子たちのパレスチナ連帯キャンプを誇らしく思う」と語っている。
これまでに全米で逮捕された学生は2500人をこえ、米下院はイスラエル批判や抗議を禁じる「反ユダヤ主義啓発法」を急遽可決するなど火消しに躍起だが、正当な抗議活動や言論を強権や暴力で封じる動きは、学生たちの怒りに油を注ぎ、教職員組合も「学生と学問領域を言論弾圧の暴力から守れ」とストライキを起こすなど世論はそれに反比例して拡大している。
フランス 高校生も学校封鎖スト
ストックホルム国際平和研究所によると、2019年から2023年までのイスラエルの主要通常兵器輸入先は、アメリカがトップで65%以上を占め、ついでドイツ(約30%)、イタリア(約4・7%)となっている。イギリスやフランスをはじめG7やEUに属する欧州主要国もイスラエル支持をうち出して支援を続けている。イスラエルと密接な関係にあるアメリカ国内での若者たちの行動は、これらの国々の学生たちも動かした。
フランスでは昨年10月、マクロン政府がパレスチナ連帯デモを禁止したが、大規模な市民デモがくり返されてきた。フランス有数の名門校パリ政治学院で4月26日、学生たちがパレスチナに連帯する集会をおこない建物の一部を占拠。パレスチナ国旗や「虐殺をやめよ」などのプラカードを掲げ、大学当局にイスラエルのガザ虐殺への正式な抗議を表明するよう求めた。即座に機動隊が出動して学生らを逮捕・排除し、大学はキャンパスを閉鎖したが、その後も学生たちによる大規模デモが続いている。
パリのソルボンヌ大学では、4月29日から学生ら100人がイスラエルによるガザ地区での虐殺に対する抗議活動をおこない、機動隊がデモ参加者を排除した。翌日、パリ市役所前広場では、逮捕された学生らの解放を求める人々で埋め尽くされ、「ソルボンヌはガザとともにある!」の声がこだました。
学生たちは米国の大学やパリ政治学院の学生たちに連帯して、政府や大学にイスラエルとの提携撤退を求め、学内でキャンプを開始。「私たちがフランスで教え込まれてきた価値観が今、踏みにじられている」「イスラエルに武器を送り、無条件支持を表明している政府を強く批判する」「虐殺への批判の声は、大学をはじめ、生まれたいたるところで同時に潰されている」と抗議した。
ソルボンヌ大学の学生たちは緊急声明で、「私たちは国際法の多くの基本原則に違反してラファ(ガザ南端の街)で続いているイスラエルの大量虐殺的行為に抗議するために立ち上がった。私たちは、以前から抗議の手段として占拠されていた象徴的場所であるソルボンヌの講堂を平和的に占拠することを決定した。この行動と抗議は、(ガザ地区)ラファの状況に対する学生たちの全般的な憤りから始まった。だが、私たちは88人もが警察に逮捕されるとは想像もしていなかった。これはフランスにおける学生運動に対する前例のない規模の弾圧だ」と訴えた。
会見で学生たちは次のように告発している。
「この平和的行動に参加した学生たちは、深刻な暴力の被害者となった。学生たちの行動に過剰に反応した警備員による性的暴行、押し倒し、殴打、絞めつけ、侮辱がおこなわれた。この責任は大学にある。講堂内でおこなわれた学生総会では、イスラエルによるラファの違法な侵攻の緊急事態に対応し、大学ボイコットの要求を進める方法について議論した。だが大学当局の決定により、警察は予告なしに学生を強制排除し、学生総会が中断され、一方的に逮捕された」
「86人の拘留者が異なる警察署に分けられ15~22時間も拘留された。拘留中には、多くの身体的、心理的、言葉による暴力が続き、約10人の学生が全裸になるよう強制され、警官によって警棒で体を触られた。他の女子学生は警官からベールを取るよう強制され、『フランスにシャリーア法(イスラムの法)を導入したいのか?』などのイスラムへの侮辱もおこなわれた。ある学生は、『お前が何をしたか俺に言え、カメラを止めたらお前をぶっ潰してやる!』と叫ぶ警官によって壁に押し付けられた。診療は拒否され、低血糖発作、重度の呼吸困難に陥るなど学生が命の危険にさらされた。弁護士や家族への電話も拒否された。これらの違法行為は、パレスチナ支援者が受けている弾圧の状況と密接に関連している。これらの過剰な攻撃は個人的に私たちを狙ったものではなく、パレスチナとの連帯運動全体を標的としたものだ。逮捕数と不起訴処分の多さは、これらの自由への侵害が、犯罪者を逮捕することを目的とせず、むしろ運動の規模を縮小し、脅しをかけることを意図しているからだ。この占拠は力強く正当な政治行動だ。大学は思考と表現の自由を築く空間だ。私たちは多くの若者と労働者にこの行動に参加し、持続するよう呼びかける。大学に対する私たちの要求は明確で正当であり、どのような暴力的反応があろうとも私たちはそれを断固として要求しつづける」
これに呼応してフランス高校生組合は5日に声明を発し、「6日から、私たちはガザの停戦とパレスチナ国家の承認を要求するために、高校を封鎖することを呼びかける」と表明した。
同組合副会長のマネス・ナデル氏(16歳)は、フランスのニュースメディア『BFMTV』に出演し、「今ガザで起きている大虐殺――それ以外の言葉はない――を目の前にして、私たち高校生は、大学生がこの数週間おこなっている運動に呼応して動かなければいけない。明日と明後日に高校生による全国高校封鎖を実施する。数十校と大規模な範囲で学校が閉鎖されるだろう。私たちはすべての高校生に呼びかける――行動せよ!」とのべた。
また、「米国の学生はバイデンに、イスラエルに対する態度を厳格化するよう強く求めている。私たちもマクロンに対して同じことをしなければならない。国際社会全体がダブルスタンダードをやめ、停戦を訴えるべきだ。イスラエルがやっていることは相応の対応ではなく大量虐殺だ」「停戦が実行されねばならない――人質たちの解放を可能にしながら。必要なのは銃声が鳴り止むことであり、国際法が優先されることだ」と訴えた。
6日、フランス中央部にあるアンブロワーズ・ブルギエール高校では生徒約300人が「ガザ停戦」を求めて学校の正門を封鎖。他の複数の公立高校でも、生徒が数百人規模で授業を欠席して抗議デモを実施した。
デモに参加した生徒は「目の前で虐殺がおこなわれてるのに何も進展しない。今の世の中はすべて繋がっていて、何でも把握できるのに何も起きない」「私たちは若いので意見をする必要がないと思われがちだが、私たちにも意見がある。何が正しくて正しくないかも知っている。大人と同じように運動する権利がある」とのべている。
高校生組合は『X』で「フランス全土で平和のために高校が封鎖されている。ラファの差し迫った脅威に直面して、この国のすべての高校生には行動を起こす義務がある。人質の解放とパレスチナの承認を伴う即時停戦を要求しよう!」とコメントし、今後も活動を継続することを呼びかけた。
学生の抗議活動はトゥールーズ政治学院、リヨン政治学院をはじめ、フランス国内の大学や高校に拡大している。1968年の「五月革命」以来、フランスの学生や高校生たちは定期的に運動を起こしてきたが、大学に機動隊が即座に出動するのは異常事態と捉えられており、学生運動の盛り上がりは「革命の五月」を想起させながら加速している。
ドイツ 言論封じる弾圧に抗議
ホロコーストの過去を抱えるドイツでは、政府が「イスラエル支持は国是」とし、イスラエル批判やパレスチナ支持の言動は「反ユダヤ主義」「ホロコーストを肯定する者」とするレッテルが貼られ、法的に罰せられる。それを主張すれば、それがユダヤ人市民であったとしても、メディア人、学者、芸術家、作家、スポーツ選手に至るまで職場を追われたり、支援金が凍結されたり、活躍の場を奪われるという言論封殺がおこなわれてきた。
アメリカ以上に覚悟を要するといわれるドイツでも、パレスチナに連帯する抗議行動が国内で広がりを見せている。
ベルリンの名門フンボルト大学では3日、平和的に中庭に座っていた学生たちが、ガザ地区での大量虐殺に抗議したとしてドイツ警察に逮捕された。座り込みに参加した学生たちは、「アカデミック(学術)・ボイコット」を提唱し、ガザでのイスラエルの大量虐殺に抗議して、ドイツの加担を正式に拒否するよう大学に要求。また、抗議者たちは軍事利用のための科学研究の停止を求め、イスラエルに対する武器禁輸を求めている。
また七日、ベルリン自由大学で約150人の学生たちが、大学の中庭にテント設置を試みたところ、大学側はただちに警察の出動を求め、80人以上が逮捕された。ベルリン市長は「反ユダヤ主義とイスラエルへのヘイトは、意見の表明ではない。犯罪行為だ」と談話を発し、取り締まりを強化した。
これについて、200人以上の教員が「ベルリンの大学教員による声明」で「抗議キャンプの具体的な要求にわれわれ教員が同意しているかを問わず、われわれはわれわれの学生たちの側に立ち、平和的な抗議をおこなう彼らの権利を擁護する。これには大学の敷地の占拠も含まれる。われわれは、ベルリンの大学指導部に対して、警察の動員及び刑事訴追を控えることを要求する」と訴え、議論を呼んでいる。
ライプチヒ大学では、100人弱のデモ参加者が講義棟を占拠。ドアをバリケードでふさぎ、敷地内にテントを設営した。大学は七日午後に警察を呼ぶとともに、一部の参加者を刑事告訴した。
ドイツ政府は、親パレスチナ的発言をした移民出身のドイツ国民に対して国籍剥奪までおこなっており、ホロコーストを掲げてイスラエルの虐殺を全面的に支持し、「自由と民主主義」とかけ離れた言論統制を強化することへの国内外の反発は今後さらに高まる趨勢にある。
イギリス 消防連盟も連帯を表明
イギリスでも、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、リバプール大学、ロンドン大学、エディンバラ大学など20以上の大学で学生や教員の抗議活動がおこなわれている。
名門オックスフォード大学では6日から学生たちが敷地内にテントを張り、抗議活動を開始。学生たちは、大学に対してイスラエル軍などと関係する企業への投資撤退、それらの企業からの研究費を拒否すること、破壊されたガザ地区の教育システムの再建を支援することなどを要求している。
学生たちは「大学の資金は教育に使われるべきであり、破壊行為に使われるべきではない」「大学や警察の反応は不安だが、勇気をもって立ち上がった人々が世界的なうねりを生み出しているという事実に背中を押されている」と主張。ケンブリッジ大学の抗議に参加するユダヤ人学生は、「ケンブリッジには、私たちのような考えを持つユダヤ人学生が多くいる。イスラエル国家が私たちの名の下におこなっている大量虐殺に対して声を上げることが、私たちの義務だと信じているユダヤ人たちだ」と語っている。
オックスフォード大とケンブリッジ大の親パレスチナ団体は共同声明で、大学に対しイスラエル政府への「財政的・精神的支援」をやめるよう要求し、「パレスチナ人の命を犠牲にして大学の利益を増やし続けることはできず、彼らの評価がイスラエルの犯罪をごまかすことで築かれてはならない」と主張している。
スナク英首相は7日の閣議で「キャンパス内での反ユダヤ主義の高まりは受け入れられない」とのべ、官邸に各大学責任者を呼びつけて強硬策をとるよう求めた。
これに対して、イギリス消防団連盟(FBU)は、「親パレスチナ活動家による抗議デモが広がっている。これまでのデモで警察はデモ参加者の排除を支援するために消防救助局に支援を要請した。だがFBUは消防士の役割が人道的であることを明確にしており、隊員に対し法執行活動に関与しないよう勧告する」と声明を出し、「消防団連盟には、パレスチナの人々と連帯してきた長く誇り高い歴史がある。この連帯は、現在停戦とイスラエルへの武器供給の停止を求めて抗議しているすべての人々に及ぶ」「消防士の役割は、命を救い、地域社会を守ることだ。消防士が警察のデモ参加者の排除を支援するよう求められることに正当性はない。消防士は警察とともに法執行活動に参加することを拒否する。私たちは抗議活動参加者の権利とガザの平和と正義の呼びかけを支持する」と政府の動きを牽制した。
ヒステリックな当局の弾圧 正義は学生の側にある
オランダ・アムステルダム大学では6日、ガザ虐殺に抗議する学生たちがテントを張り、平和的な座り込みをおこなったところ、大学当局から出動要請を受けた武装警官が警棒で襲いかかりテントを破壊。170人以上の学生が逮捕された。無抵抗な女子学生たちを警棒で殴ったり、地面に押さえつける警官の傍若無人な威嚇の映像がSNSで拡散された。翌日にはそれに抗議する大規模デモがおこなわれた。
アムステルダム大学の教職員らは9日に発した抗議声明で要旨次のように訴えた。
「アムステルダム大学の職員は、経営評議会(大学当局)の行動に恐怖を覚えている。過去3日間、評議会はガザで継続されるジェノサイドに大学が加担していると訴える学生たちに対し、過激な暴力を容認し、警察の介入を要請し続けた。今日、われわれは大学構内で暴力の現場を目撃した。またアムステルダム市長の協力のもと、抗議者たちを標的とした警察の介入を見た。市警察はブルドーザー、警察犬、催涙スプレー、催涙ガスを用い、警察を支援していた者も傍観者も容赦なく攻撃した。経営評議会は学生や職員との対話に悪意をもって臨み、話し合いによる解決を明確に拒み、学生たちが提示した合理的要求について交渉を継続する意思を見せていない。われわれは、評議会のこの完全な無視に衝撃を受けている」
「経営評議会は、大学の安全確保を口実に、ガザ連帯キャンプを解体するオランダ警察の行動を支持している。これらの行動は到底受け入れられるものではない。われわれは、責任を負うべきすべての関係者を非難する」
教職員たちは抗議の意を示すべく13日にキャンパス外で抗議デモをおこなうと宣告した。
同様の大学での抗議活動は、イタリア、デンマーク、ノルウェー、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、ベルギー、スイス、ハンガリー、アイルランド、フィンランドに至る欧州全域に広がっている。また、カナダ、韓国、メキシコ、オーストラリアなどの世界各地の大学や高校でもパレスチナ連帯デモが同時多発的に広がっており、SNSなどを通じて状況を共有しながら統一した動きとなっている。
オーストラリア・シドニーのユダヤ人高校生は9日、ガザ虐殺に抗議して学校ストライキを実施したことを明かし、集会で次のようにのべている。
「昨日、副校長に私が集会でスピーチすることを伝えると、彼はちょっと悲鳴のような声をあげた。彼は、私が私たちの学校のことを話すのではないかと本当に心配していた。今日、ミュアフィールド高校の名前を出せたことをとても誇りに思う。」
「今日ここに立つことが私にとってどういう意味を持つかということから始めたい。私の祖母はまだよちよち歩きのころ、現在のウクライナ南東部にある地域で、選択の余地なく銃を突きつけられ、家族とともに家を追われた。彼らは持ち運べるものを持っていき、オデッサ近くのキャンプに向けて数百㌔行進することを余儀なくされた。そのキャンプでは、他の多くの人々がゆっくりと餓死するか、薬が手に入らないために死亡した。ここ数日間、ラファから避難してきた高齢の祖父母と幼児の家族の写真を見ると、私は祖母の顔が浮かぶ。彼女の妹、そして彼女の両親の顔が浮かぶ。そして、歴史がくり返されることも。」
「私の先祖が想像を絶する被害とトラウマを受けた、それと同じ恐怖が今(ガザで)起きていることに対して私は立ち向かう義務がある。私は日常的な活動家でもなければ、勇敢で名誉ある人でもない。私たちは皆、激しい憤りを共有してここに立っている。」
(5月13日付)