柳井市の県立柳井高校で先月24日、安保関連法案について2年生の生徒が自分たちの意見をまとめ、模擬投票に臨む授業がおこなわれた。32人の生徒が八グループに分かれ、六グループが反対、二グループが賛成を表明。投票の結果、「自衛隊が戦争に巻き込まれてからでは遅い」と反対を訴えたグループが最多の得票を獲得し、全体で反対が29票、賛成が3票という結果になった。生徒たちは、来年一八歳になり選挙権を持つというなかで、安保法案をみずからの問題として真剣に論議し、投票した。しかしなぜかこの模擬投票が県議会で問題となり、教師の指導責任が問われる事態に発展している。
18歳有権者にしたの誰か
県議会で発言したのは、自民党の笠本俊也県議(長門市)で「政治的中立性が問われる現場にふさわしいものか、疑問を感じる」などと、一般質問で県教委を問いだたした。これに対して浅原司県教育長は、「法案への賛否を問う形になり、配慮が不足していた」として、今回の柳井高校での模擬投票を問題視する発言をおこなった。さらに県教委として「主権者教育の進め方について学校への指導が不十分だった」とし、今後「政治的中立性の確保、授業の進め方、資料の取り扱い」などについて新たな指針を作成し、各学校におろすことを表明した。
今回の模擬投票について、当の生徒や地域住民に聞くと、異口同音に「なぜこれほどまでに問題になっているのかが疑問だ」と驚く人が多くいた。生徒たちが配布された新聞や国会での状況、憲法学者の意見などを学び、さらに各自で勉強した結果、みずからの論点をまとめてグループごとに発表、投票をおこなったもので、「授業として何ら問題はない」という意見が大多数だった。
授業に参加し、投票をおこなった生徒の一人は、「今回の授業の目的は、自分の意見をしっかり持ち、発言できるようにするためだ。私たちがちょうど来年に18歳になるということで、自分たちで考え、“なるほど”と思える発言をしたグループに投票した。先生が賛成、反対どちらかを強制するというものではなく、本当に中立な投票だったと思う。“中立性がない”とかいわれるような授業ではなかった」と問題になっていることに疑問をぶつけた。
柳井市内の商店主の一人は、「“中立性に疑問”というある新聞の記事を見て、この書き方自体が疑問だと思った。模擬投票をすること自体に何の問題もないし、自民党が安保法案に対して相当ピリピリしていることが想像できる」と語った。
また別の商店主は、自身の子どもも高校生であることを語り、「先生たちの授業が“中立じゃない”とか子どもからも聞いたことはないし、どちらかを一方的に押しつけたわけでもない。生徒たち自身が今まで学んできた情報と、これから戦争になっていいのかという点で、判断したことだ。私たち親世代も当然戦争には反対であり、なぜアメリカのために外国に行って戦争をし、日本が攻撃されるようなことをするのかと思う。生徒がしっかり考えて投票した結果ではないか」と語った。