北朝鮮がミサイル発射実験をした問題で、小泉政府は「脅威」を叫び経済制裁と軍事的な対抗をエスカレートしようとしている。拉致問題での騒ぎといい、「横暴な北朝鮮を制裁せよ」の騒ぎはきわめて危険なものである。かつての戦争による破滅に至る出発点となった中国への全面侵略戦争は、1937年7月7日北京郊外の盧溝橋で駐屯していた日本軍の近くで数発の銃声音がしたと難クセをつけることによってはじまった。そのスローガンは、「暴支膺懲」すなわち「横暴なシナを懲らしめる」というものであった。当時の新聞などはこのワンフレーズ宣伝で国民を破滅的な侵略戦争に動員した。しかし横暴であったのは日本の側であったし、その結果第2次大戦の無惨な敗戦に至った。これと同じことをまたもやっているのである。
北朝鮮の核武装とミサイル開発は日本にとって脅威であることに疑いはない。ところがそれはなにを原因にしており、どうすれば解決するのか。デタラメなメディアや政府の扇動に乗せられるわけにはいかない。客観的な現実は、北朝鮮が1発のミサイルを放ったなら、数千発のミサイルを食らうという関係にある。アメリカが日本や「韓国」の基地、潜水艦や空母、イージス艦などで取り囲み、いつでも壊滅させうる圧倒的な核攻撃態勢をとっているからである。北朝鮮の核兵器とミサイルが使用可能なほどに開発されたとしても、北朝鮮を核攻撃したならば、「どこに撃ち込むかわからないが核兵器による報復攻撃を覚悟しなければならない」と躊躇させる力にしかなりようがない。しかもアメリカにとっては、日本本土から核攻撃をするわけで、報復されるのも真先に日本であり、攻撃するだけで報復される心配が少ない。そのようななかで日本がアメリカに先走って「横暴な北朝鮮を懲らしめる」などと騒ぐことほどバカげたことはない。政府やメディアは拉致問題を、北朝鮮への制裁をするための道具としている。拉致事件の復讐のために戦争をやるなどバカげたことである。
自分は核兵器を独占して、他の国が自分の言いなりにならずに核兵器を持つなら先制攻撃をすると騒ぐ。アメリカから好きなだけ殴られて、「ご無理ごもっとも」といってきたのが日本の戦後歴代政府である。独立したふつうの国であれば殴られっぱなしで黙っているところはない。アメリカの飼い犬となってきた自民党政府は、自分がアメリカの言いなりになるだけではなく、他の国もアメリカの言いなりにならなければ許さないと叫んでいる。そして経済制裁をし、武力参戦をもしかねないエスカレートぶりである。
朝鮮をはじめ中国、アジアの近隣諸国との関係は、力ずくの関係ではなく、話し合いで解決し、友好団結の関係を発展させることが第二次大戦の痛ましい経験から得た重要な教訓である。最近の「横暴な北朝鮮を懲らしめよ」という仕組まれた扇動は木っ端みじんに粉砕することが、日本民族の根本的な利益である。