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米国の巧妙な洗脳に憤り 広島・戦争体験者の声

 戦後の日本はアメリカを「解放軍」と美化するとともに、1部のA級戦犯だけを処罰し、あとの責任は「1億総懺悔」といって国民全体に押し付け、戦争をおこした財閥、政治家、官僚、マスコミ指導者などはアメリカによって守られた。兵隊経験者を「加害者」といって排除することは、第2次大戦の真実にベールを掛け、ふたたび日本を戦争にたたきこむアメリカの利害から出発していた。
 体験者たちは、戦争の真実を明らかにし、戦後60年たって荒廃した日本を立て直さずにはおれない切実な思いを語っている。
 戦後、広島で戦友会の世話人をしてきたYさん(88歳・男性)は、昭和13年から4年間、朝鮮から中国にかけて西部第2部隊・歩兵砲中隊の事務員として参加した。
 「行くときは1週間で漢口まで上がったが、帰りは、先に出た船が2隻撃沈されたこともあり、朝鮮半島の西側を回りながら数カ月かけて帰国した。中国での戦況は、一段と厳しくなっていた。交代の兵隊は帯剣もなく、小銃も1個中隊に2丁しかない。私たちのものを受け継いでやったが、こんな粗末な軍装で戦えるものとは思えなかった」と中国戦線を振り返った。
 Yさんは、「中国の人たちとの交流が忘れられない」という。「中支の沙市で難民区を巡察していたとき、中国人の老夫婦が“兵隊さん、私の息子たちといつどこで銃撃戦をするのかわからないが、どうかお互いに傷つけあうことないようにお願いします”と、アヒルの卵を持ってきてくれたり、わが息子のように心配してくれた。身内のような付き合いをして、出発の日はお互い涙で別れた。日本の侵略戦争のおろかさを感じずにはおれなかった。最近は“中国は日本を狙っている”というが、敗戦後、置き去りになった日本人孤児を立派に育ててくれたのは中国の人人だ。チャンコロとはやし立てたマスコミなどの扇動と、実際の人人の姿はぜんぜん違う。教育を恨んだ」と、かみしめるように話した。
 「アメリカは当時の日本以上の独裁国家だ。グローバルというのと大東亜共栄圏とは同じ。日本政府もくっついて、アメリカだけが国際社会だといっている。国民全体がこれに洗脳されていることに危険を感じている。戦後改革もアメリカが巧妙にやってきたが、“自由”といって親まで殺す時代にした。兵隊は悪者というが、徴兵を拒否すれば家族が危機だった。今の日本もアメリカに経済的に縛られて拒否すると生きていけないといって、金や自衛隊まで出している。これをたたき出すには腹をすえてかからないといけない」と、力をこめて語った。
 通信隊として広島で被爆したTさん(90歳、男性)は、「昭和15年から電信兵として中国に送られていた。中国での物資は本土からの輸送というよりも現地調達がほとんどになっていた。アメリカが本土を片っ端から攻撃しはじめたということで昭和20年5月に本土防衛の任務のために広島に赴き、通信補充隊の隊長をつとめた」と語りはじめた。
 その日は出張のためにいった広島駅にいて、原爆の閃光をあびた。崩れた駅舎の下敷きになって負傷をしながら、部隊のある西練兵場まで市内を歩いた。牛田の工兵隊演習場では、見渡すかぎり地面が見えないほど全身やけどの負傷者が横たわり、そのなかを衛生兵らしき兵隊が数人、自分の負傷もかえりみずに治療に当たっていた。
 「田んぼに避難していた重傷者の中に、家屋の木片が体に突き刺さっている兵士がおり、声をかけると“この仇を討つまで死ねません…”とかすれ声でいったが、おそらく生きてはいないだろう。西練兵場には、召集されて入営する兵士を見送りにきた家族らしき老幼男女の死体が散らばり、とくに赤ん坊が母親に寄りかかったまま死んでいる姿には胸が痛んだ」と、生生しい惨状を口にした。自分の部隊に到着すると、完全に焼けた兵舎には、たくさんの白骨とともに、真黒に焼けた死体は手足でなにかを訴えているようだった。堀の水面にも無数の死体が浮いていた。1昨日まで親しく言葉を交し合った戦友たちの姿だった。
 生き残った5、60名の兵士も数日後から血便や歯茎から血を流しはじめ、それぞれ帰郷させて、残務整理に当たったが、結局、総員78名のうち、73名が死んだ。
 だが、この部隊の慰霊碑もない。「ここの兵隊は3分の2が独身者だったので、両親が亡くなれば身内はだれもいない。私1人では財力もないし、市も取り合わない。この間、老いた母親がきて“息子が死んだ場所を一目見たい”といわれ案内したが、当時の面影はなくお参りしようがない。小さくても、なにか残せないだろうかと思うが、それを拝む人がいないのが問題ではないか」と言葉少なに話した。

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