参議院選挙が24日公示され7月11日に投開票となる。選挙戦は、自民党も民主党もいろんな新党も、その政策に大差はなく、国民にとってしらけたものとなっている。どの政党も日米同盟重視で一致し、オール翼賛選挙である。国民の信を問おうというのではなく、アメリカとそれに従う売国勢力に認められるための選挙になっているかのようである。すべての日本人民にとってこの選挙における真の争点は何か、この選挙のなかで国民の力をどのように示すか考えてみたい。
昨年の衆議院選挙で自民党は大惨敗し、戦後つづいてきた自民党政府は倒壊した。自民党の惨敗は3年前の参議院選挙であらわれていたものであった。それはアメリカのいいなりになって日本社会をさんざんに破壊してきた小泉構造改革、それにつづく安倍戦争政治に対する国民の鉄槌としてあらわれた。
民主党は昨年の衆議院選挙で、「普天間基地は最低県外移設」「米軍再編を見直す」とか「日米地位協定を見直す」とか「対等な日米関係」などといって票を集めた。しかし発足した鳩山民主党政府は、アメリカから恫喝され、日本のメディアや官僚から圧力をかけられ、「日米同盟重視」、「普天間基地の辺野古移転への回帰」で日米共同声明をやり、野たれ死にした。日本の首相は誰がなってもアメリカの代理人になるというのが目の前で見せつけられた日本の現実である。
鳩山にかわった菅民主党政府は、メディアが打って変わって、「鳩山のような首相の資質がない坊っちゃんと違う」とか、小沢一郎も一緒に退治して「政治と金の問題」も解決したとして、民主党がまったく別物に生まれ変わったかのように描き、「支持率がV字回復」とはやしたてるなかで立ちあらわれた。そして、国会審議もすっ飛ばし、菅政府が何をどうやろうとしているかバレないうち、「支持率が高いうちに早く選挙をやれ」といって、選挙戦に突入した。
菅民主党政府は、鳩山の挙動がアメリカの機嫌を損なったのがいけなかったとして、第一に鮮明にしたのが日米同盟重視の立場であった。それをアメリカとメディア、官僚などがバックアップして発足した。普天間基地の辺野古移転であり、米軍再編の推進の立場である。さらに郵政民営化見直し法案の廃案、労働者派遣法の見直し法案の廃案、さらに混合医療の推進などをすすめている。そして法人税を減税すると同時に、IMFが要求した消費税の15%増税に応えて消費税率の10%増税を公言した。消費税増税をいっても、自民党もいっており、議席争いに大きな影響はないというおごりである。
菅民主党政府がやろうとしているのは、まぎれもなく鉄槌を加えられた自民党の道、対米従属の小泉構造改革の継承をやろうというものだ。菅のブレーンには、小泉ブレーンの竹中平蔵とかオリックスの宮内とか、ゴールドマンサックス関係者などがいる。
自民党は、日米同盟推進や構造改革は自分のところが本家であり、消費税増税など自分のところが先だといって、民主党が真似たと騒いでいる。消費税増税を選挙演説で自慢する姿を見て、人人はあきれている。自民党は民主党菅政府に自民党がやってきた売国路線を取り上げられた格好となっている。
社民党は辺野古移転反対、消費税10%反対をいっているが、普天間基地の県外移設、基地の全国化推進であり、これも日米同盟優先である。連立離脱であるが、与党ポスト願望はありありとなっている。
「日共」集団は、「アメリカにも財界にもものがいえるのはわが党だけ」といっているが、オバマの「核のない世界」というホラ話を賛美し、訪米などして「アメリカに認められた」といって大喜びしている。本音のところの親米派である。かれらの役割は、基地反対や政府批判のような顔をして、沖縄や徳之島、岩国など基地反対運動を引き回して、人が寄りつかないようにし、運動を無力にさせることでアメリカや財界に認められるという役割である。
こうして選挙戦にあらわれた各政党の間の争点は、基本的なところで変わりがないという様相になっている。国民にとってはしらけるゆえんである。それは政党政治、および選挙というものが、日本をどうするかという国益にたって、国民の意志を代表するというものとは遠い存在になっていることを暴露している。
しかしすべての日本人民にとって、国政がどっちを向いてすすむかは死活の問題である。これらの政党をも道具にしたアメリカとそれに従属する売国独占資本集団がすすめる道と、それに対立する日本人民との間の争点を鮮明にし、全国的な大衆世論を強めて、選挙戦を揺り動かすことが必要となっている。
日米同盟への態度焦点 国の命運かけた問題
日本の命運をかけた最大の問題は、日米同盟にどういう態度をとるかである。菅は沖縄に行って「沖縄の基地がアジア・太平洋の平和と安全に貢献したことに感謝する」といった。在日米軍基地は、沖縄戦や広島、長崎の原爆投下、全国空襲によって、日本人を無慈悲に虐殺したことによって、占領された証であった。そして基地の存在が、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン、イラク戦争と、平和どころか戦争をやるために「貢献」したことは子どもでも知っている。
そして日米同盟は、「日本を守るため」という建前もかなぐり捨てて、アメリカが世界中でやる戦争に日本が下請軍隊となって参戦するため、さらに日本を核戦争の戦場にするものとなっている。今度はアメリカから召集令状が送られ、日本本土がまたもアメリカのために焼け野原にされる。日本の破滅の道である。自民党政府がその道をすすめ、菅民主党政府がその道を継承しようというのである。
菅政府は消費税増税をやり、郵政民営化の見直しを見直そうとしている。消費税増税はIMFの要求つまりアメリカの要求である。日本の国家財政からも郵貯、簡保資金からもアメリカにもっと金を出せというものである。貿易黒字というがその金は返るあてのないアメリカ国債を買い込んでいたり、国民が働いて貯めた預貯金や年金資金などが、アメリカの証券投資などで食いつぶされている。国家財政の借金は1000兆円になっているというが、アメリカに巻き上げられている資金は500兆円を超えている。日本の勤労者が貧乏になる根源である。
80年代のプラザ合意以来の低金利はアメリカの命令でつづけてきたものであり、日本の資金がアメリカに流れるためである。日本の大企業は、アメリカに隷属し、日本の労働者や農漁業、中小零細企業を犠牲にすることによって、内部留保を200兆円も貯め込んでいる。
労働者に職がない、職があっても妻子を養える賃金がない。農業も漁業もつぶれてしまい、食料の自給もできない。「経済大国」といっていたが、世界有数の貧乏大国になっている。貧困の広がりのなかで、毎年3万人を超える人が自殺し、犯罪が頻発する殺伐とした国になっている。
日本の医療費、教育費、福祉などの政府支出は、先進国のなかで最低の水準となっている。自己責任などといって社会保障はずたずたに切り捨ててきた。
このような状況になったのは、アメリカ政府が作成した年次改革要望書を小泉政府などが構造改革などと称して忠実に実行してきた結果である。自民党がこの方向をすすめて日本をデタラメにしてしまったが、菅民主党政府も総選挙の公約を覆してこの売国政治の方向をやろうとしている。
参議院選挙は、対米従属の日本破滅の道を行くのか、独立して日本の立て直しの道を行くのか、戦争の道か平和の道か、貧困の道か繁栄の道か、聞く耳のないファッショの道か民主主義の道か、鋭い対立となっている。自民党がうち倒された道、そして自民党を批判して登場した鳩山民主党政府が裏切って野たれ死にした道、菅民主党政府がそういう国民にうち倒された道を開き直って突っ走ることを許すかどうか、大きな注目点となる。
選挙戦は、対米従属オール与党の翼賛選挙の様相となっている。しかし政治は政党の政治がすべてではない。政治家あっての国民ではなく、国民あっての政治家であることをはき違えるわけにはいかない。大衆の政治がもっとも基本的な力である。選挙戦において、国の進路をめぐる真の争点をめぐって国民的な大論議を広げ、大衆の声を形にし、各政党、各候補者に最大の圧力を加えるたたかいとなる。