イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への無差別爆撃が続き、一般人の犠牲者が増え続けている。国連総会は10月26、27日の2日間、緊急特別会合を開き、人道目的での停戦などを求めるヨルダン提案の決議案が、圧倒的賛成多数で採択された(賛成121、反対14カ国、棄権44カ国)。一方、同決議にハマスの攻撃や人質の拘束を非難する文言を加えるよう求める修正案をカナダが提出したが、否決された。会合で演説した各国代表者は、イスラエルが過去数十年にもわたってパレスチナに対しておこなってきた違法な行為こそが現在の状況を引き起こした元凶であることを指摘するとともに、一刻も早く停戦し、国際人道法を遵守するよう訴えた。イスラエルやアメリカは、ハマスによる「テロ」や自国の「自衛権」を主張し停戦決議に反対した。
殺戮正当化に世界中が反旗
ヨルダンによる決議案は、アラブ諸国が主導しエジプト、オマーン、UAEなど40以上の加盟国の支持を得て国連総会に提出された。決議案は「即時、持続的な人道的停戦」を求め、すべての当事者に対し、国際人道法の遵守と、ガザ地区への必要不可欠な物資とサービスの「継続的、十分かつ妨害のない」提供を要求。また、捕虜となっているすべての民間人の「即時かつ無条件の解放」を求めるとともに、国際法に則った安全、福祉、人道的な処遇を要求している。
イスラエルのガザ侵攻をめぐっては、これまで国連安全保障理事会で4回にわたって停戦決議案が提出され、議論を重ねてきた。しかし、「停戦」を盛り込まないアメリカの決議案に中国とロシアが拒否権を行使し、アメリカはブラジルの「人道的一時停戦」を求める決議案に拒否権を行使。一向に停戦は実現せず、その間もガザ地区ではイスラエルによる空爆で毎日1000人もの死者が出続けてきた。
安保理が機能しないなかで今回、国連総会で停戦決議案が採択された。法的拘束力はないものの、121カ国の賛成で採択された決議は、世界の世論を映し出し、国際社会の停戦に向けた動きを促すことになる。この決議採択を日本は棄権した【表参照】。
国連総会の停戦決議案に対し、カナダは「ハマスの攻撃や人質の拘束」を非難する文言を加えるよう修正を求めた。しかし、現在パレスチナで起きていることは「イスラエルの占領こそが原罪」との批判の声が強く、修正案の採決結果は賛成85カ国、反対55カ国、棄権23カ国となり、必要な3分の2の賛成は得られず否決された。
国連総会での議論は2日間にわたっておこなわれ、各国の代表者が意見をのべた。このなかで、イスラエルによるガザ地区への人権を無視した残虐な侵略や過去数十年にわたる占領の歴史を非難する意見が圧倒的に多くあがり、一刻も早く停戦し、必要な人道支援をおこなうよう求める発言があいついだ。
▼国連総会議長
総会で最初に演説した国連総会デニス・フランシス議長は、イスラエルとパレスチナで展開されている惨事に「深く動揺し、とり乱している」とのべた。「中東における暴力と敵意の拡大が過去数十年でもっとも深刻な真っ只中に、私たちは集まっている」「暴力は今すぐ終わらせなければならない」と宣言し、即時かつ無条件の人道的停戦と人道回廊の開設を求めた。
10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を「ハマスの攻撃の残虐性は衝撃的で容認できず、私たちの世界に居場所はない」と非難。加えてイスラエルによるガザの無辜(こ)の市民を標的にした攻撃や重要インフラの破壊を非難し、「イスラエルによるガザ地区への絶え間ない爆撃とその結果は、非常に憂慮すべきものだ」と訴えた。
さらにフランシス議長は、パレスチナ人が何十年にもわたる占領、16年間の封鎖、そしてガザでの五回の戦争を生き延びてきたとし、「イスラエル人とパレスチナ人の殺害に対する答えは、これ以上の殺戮ではない」とのべ、国連加盟国に対し将来の世代を戦争の惨禍から守るよう求めた。
最後に、「前進する唯一の道は、パレスチナの人々のための正義だ」と強調。「殺戮を止めるために、そしてこの狂気を止めるために投票する」「復讐ではなく、正義を選べ。これ以上の戦争ではなく、平和を選べ。ここ数十年で最悪のダブルスタンダードがほぼ3週間にわたって続いていることに終止符を打つために投票を。命が懸かっている。どうか、命を救ってください、命を救ってください、命を救ってください」と訴えた。
▼パレスチナ
パレスチナ国家の常任オブザーバーであるリヤド・マンスール氏は、「ガザのパレスチナ人が爆撃を受けている間、私たちはここで会合を開いている。家族が殺され、病院が停止し、地域が破壊され、人々が安全な場所を失い、ある場所から別の場所へと逃げている」と涙ながらに語り、死者数の増加を強調した。また、現地生活での体験談を引用し、人道支援が切実に必要とされているとのべ、「病院は麻酔なしで運営されており、医師も患者も同様に、助けが近づいているかどうか疑問に思っている」と窮地にさらされる人々の声を代弁し訴えた。
また、毎日1000人のパレスチナ人が殺害されており、戦争犯罪や人道に対する罪を正当化できるものは何もないとのべた。「なぜ殺害を終わらせる緊急性を感じないのか」「あなたたちは、イスラエルが今やっていることを正当化しようとして、私たちを80年前に逆戻りさせるのか」と呼びかけた。
▼ヨルダン
アラブ諸国を代表して発言したヨルダンのアイマン・サファディ副首相は「グレーゾーンの余地はない」「私たちは平和、人間的価値、国連憲章のために立ち上がらなければならない」とのべた。そして「歴史がわれわれを裁く。戦争にノーといえ。殺害にノーといえ。戦争犯罪を叫べ」と強く訴えた。
また、イスラエル政府のなかに「パレスチナ人をこの地球上から一掃する」と呼びかける閣僚がいると指摘し、殺戮が続くなか、「イスラエルはガザをこの世の地獄にしている」「トラウマはこれから何世代にもわたって付きまとうことになる」と警鐘を鳴らした。
そして、「イスラエルは価値観を守らなければならない。自衛権は免責権ではない。イスラエルは法を超越したままではいられない」といい、「銃を沈黙させ、生きる意志と生を勝ちとらせなければならない。この紛争をきっぱりと終わらせる唯一の道として、和平プロセスへの信頼をとり戻そう」と呼びかけた。そしてヨルダンが提出した決議案に投票するよう各国に呼びかけ「これ以上の流血に反対するため叫ぼう。平和のため、命のために立ち上がり、それを確固たるものにしよう」と訴えた。
▼イラン
イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外務大臣は、国際社会が「ガザとパレスチナ西岸地区における占領イスラエル政権の戦争犯罪と大量虐殺」を目撃してから3週間が経過したとのべた。また、アメリカといくつかのヨーロッパ諸国がイスラエルに味方し、パレスチナ解放運動を「テロリスト」と呼んでいると非難した。そして米国に対し、人々、女性、子供に対する戦争ではなく、平和と安全のために働くよう呼びかけ、「米国は、ガザとパレスチナでの大量虐殺を支援するのをやめるべきだ」と訴えた。
また、「パレスチナでの大量虐殺を管理しているアメリカの政治家たちに率直にいう。この地域での戦争の拡大は歓迎しないが、ガザでの大量虐殺が続けば、彼ら(アメリカ)はこの火事から免れることはできないと警告する」と強調。「西アジアは我々の故郷であり、われわれはいかなる政党ともいかなる側とも妥協せず、自国の安全に関しては何の躊躇もない」と訴え、イスラエルによるガザ侵攻を支持する米国に批判の矛先を向けた。
そして最後に「イランとの交渉で、ハマスは民間人捕虜を釈放する用意がある」としたうえで、「国際社会はイスラエルの刑務所に収監されている6000人のパレスチナ人の釈放を支援すべきだ」とのべた。
「まるで中世の慣習だ」
▼エジプト
エジプト大使のオサマ・マフムード・アブデルハレク氏は、ガザで砲火にさらされているパレスチナ人の基本的人権について沈黙することは「もはや選択肢にはない」とのべ、二重基準ではなく、パレスチナ人を含むすべての人に「一つの基準」を適用しなければならないとのべた。
大使は、「民間人を標的にすること、テロリズム、国際人道法違反に反対する。また病院や医療センターを爆撃すること、子どもを殺すこと、包囲すること、生活必需品をすべて遮断することに反対だ」と訴えた。強制退去や人権の清算を断固拒否し、「ジェノサイドにノー。すべての人は平等だ」とのべた。そして、アラブのことわざを引用し、「真実を語らない無言の悪魔」にならないように声を上げることが重要だと呼びかけた。
「もう十分だ。パレスチナ人に起きていることに、私たちはもはや耐えられない」「ガザ地区の民間人を包囲し、飢えさせる政策を非難する。彼らに水を与えないことは、21世紀においてすでに居場所を失った“中世の慣習”を彷彿とさせる」とイスラエルの侵攻を非難。国連議会に対し、ガザへの援助を「無条件に」要求するよう求め、さもなければ「ガザの人々に対する死刑宣告」を意味すると付け加えた。そして、歴史上3度目となるガザの人々の土地からの強制退去は「断固として拒否」されなければならないと訴えた。
▼モーリタニア
モーリタニアのシディ・モハメド・ラグダフ国連大使は、イスラム協力機構を代表して演説。道徳的、法的、政治的合意の欠如は、イスラエル占領軍による植民地の拡大と併合という違法な政策を処罰なく継続することを許すことになるとのべた。そしてイスラエルによる長年にわたる封鎖、パレスチナ民間人の強制退去、組織的な民族浄化、組織的なテロ行為、エルサレムのアル・アクサ・モスクを含む聖地の冒涜を指摘し、「この受け入れがたい状況を終わらせなければならない」とのべた。
▼ベネズエラ
ベネズエラ大使兼副常駐代表のホアキン・アルベルト・ペレス・アイエスタラン氏は、即時停戦と、民間人や病院、難民センター、食料倉庫などの民間インフラに向けられたすべての攻撃の停止を求めた。そして、「我々は自制を求め、すべての“扇動的で非人間的な言葉”を終わらせるよう促す。これは、緊張を緩和するために進行中の政治的・外交的努力には決して役立たない。それどころか、緊張と暴力をさらに煽り、何千人もの無辜の命を危険にさらすだけだ」と指摘した。
そして最後に、安保理に対して国連憲章、ジュネーブ諸条約、および関連する国際法の原則を遵守することを含め、国連事務総長による最新の呼びかけに耳を傾けるようイスラエルに促すよう求めた。
「集団的懲罰」は明確な国際法違反
▼ジャマイカ
カリブ共同体カリコムの代表を務めたジャマイカのブライアン・ウォレス常駐代表は、「紛争を直ちに終わらせなければ、より広範な地域戦争にエスカレートする可能性がある」と指摘。特にカリコムのような脆弱な小島しょ国にとって壊滅的な結果をもたらす、国際的な安定への影響について懸念を表明した。
▼カタール
カタールのアリヤ・アフメド・サイフ・アル・タニ国連大使兼常駐代表は、「今回の危機は地域と世界の安全を脅かしている」とのべ、国連安保理が行動を起こさなかったことに遺憾の意を表明した。また、すべての当事者に対し、緊張を緩和し、完全な停戦に向けて動くよう呼びかけた。
そして「占領者イスラエルによる包囲を断固として拒否する」ことを再確認し、民間人、特に女性と子どもを標的にしたイスラエルの攻撃を非難した。そのうえですべての加盟国に対し、ヨルダン主導の決議案を支持し、「希望のメッセージ」を送るよう促した。最後に、「カタールは、パレスチナの同胞の流血を止め、委任条件に従った持続可能な政治的解決を確保し、地域が混乱と暴力に陥らないようにするための出口を見つけるため外交努力に貢献し続けている」とアピールした。
▼サウジアラビア
サウジアラビアのアブドゥルアジズ・M・アルワシル国連大使兼常駐代表は、ガザ地区での殺戮と破壊は人道的大惨事を引き起こしているだけでなく、地域と世界の安全保障に悲惨な結果と影響を及ぼしていると指摘。
さらに、「われわれは、いかなる当事者による民間人への標的行為も明確に非難し、停戦、流血の停止、包囲の即時解除、人質の解放、被災者への人道支援と支援の提供を求める」「戦争の武器としての民間人の飢餓を含む、ガザの住民に対する強制移住の試みと集団的懲罰の政策を非難する」とのべた。
さらに、和平のために努力することが優先事項であることを再確認するとともに、国際条約や国際法の遵守を求めた。そして「現在の危機は、二国家共存を実施に向けた国際社会のとりくみの失敗によるものだ」と強調し、「過去70年間あるいは最近になっても、イスラエルの違法な行為に対して沈黙することが、この地域を現在の危機に導いた」とのべた。
▼トルコ
トルコの国連常駐代表であるセダト・オナル氏は、安保理が麻痺しているなか、この危機に立ち向かうのは国連総会にかかっているとのべた。「トルコは、今日提出された決議案を共同執筆したが、この決議には大虐殺に終止符を打ち、現場の緊張を緩和するために必要な最低限のものが含まれている」とアピール。そして「民間人や民間インフラを標的にしても、安全はもたらされない。パレスチナ人の自由、尊厳、国家としての願望が否定され続ける限り、平和はあり得ない」と訴えた。
▼ブラジル
ブラジルのセルジオ・フランサ・ダネーゼ大使兼国連常駐代表は、人質の奪取を含むハマスによる凶悪なテロ攻撃に「明確な非難」を表明した。また同時に、ガザ地区の民間人を無差別に殺傷し、家屋を破壊し、生存のための基本的な手段を奪っているイスラエルの攻撃を明確に非難した。
そして、安保理議長国であるブラジルが、ヨルダンが提出した決議案を強力に支持したことは「バランスの取れた文書であったことを示している」とのべ、決議は国際人道法と人権法に「しっかりと根ざしている」と見解をのべた。
一方的虐殺容認しつつ「人道」唱える米国
世界各国がイスラエルによるパレスチナへの歴史的な占領、虐殺を批判し、即時停戦を求める決議に賛成の意見を示すなか、イスラエルはこれに真っ向から対立する演説をおこなった。またアメリカも「国際人道法の尊重」を訴えつつイスラエルの「自衛」を認め、ガザ地区における国際人道法違反を黙認する主張を展開した。「ハマスの殲滅」や「テロの撲滅」への対処を口実にしておこなっているパレスチナへの攻撃を正当化した。
イスラエルの国連大使兼常駐代表であるギラッド・エルダンは、10月7日のハマスによる虐殺とその後に起こったことは、パレスチナ人、アラブ・イスラエル紛争、パレスチナ問題とは何の関係もなく「これはパレスチナ人との戦争ではない」とのべた。
そして、「イスラエルは大量虐殺のジハード主義者ハマスのテロ組織と戦争状態にある。それは、現代のナチスに対抗するイスラエルの法を守る民主主義だ」といった。ハマスの唯一の目標は、「イスラエルを絶滅させ、地球上のユダヤ人を一人残らず殺害すること」だとし、「ISISはイラクとシリアのイスラム国であり、ハマスはガザのイスラム国だ。ISISに対しておこなわれたように、ハマスはもはや存在してはならない」と宣言した。
イスラエルの目標は「ハマスの能力を完全に根絶することであり、われわれはこれを達成するためにあらゆる手段を用いる」「復讐のためでも、報復のためでもない。しかし、このような堕落と残虐行為が二度と起こらないようにするためだ」とのべ、みずからがおこなっているガザへの大規模な空爆や過去最大規模の地上侵攻について正当化した。
アメリカのリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使兼常駐代表は、「ハマスによる野蛮なテロ行為」を引き合いに出し、「テロを正当化する理由は何もない。ハマスのテロ行為を非難しなければならない」と強調。ハマスのテロリストにとって、民間人は「消耗品」であり、イスラエルは「ハマスから自国民を守る権利と責任を行使している」と攻撃を擁護したうえで、「戦争法規に則り」、国際人道法を尊重して行使しなければならないと二枚舌を披露した。
さらに、ヨルダンが提出した決議案について米国大使は、二つのキーワードが欠けていると強調。一つ目は「ハマス」で、「決議が10月7日のテロ攻撃の加害者を名指ししていないのは言語道断だ」と指摘。もう一つの欠けているキーワードは「人質」だとし、決議案について、「ハマスの残虐行為を隠蔽し、力を与えるものであり、いかなる加盟国もそのようなことを許すべきではない」と主張した。そして、「ハマスがイスラエルを恐怖に陥れ、パレスチナの民間人を“人間の盾”として利用する状況に逆戻りしてはならないし、過激派入植者がヨルダン川西岸地区のパレスチナ人を攻撃し、恐怖に陥れることができる現状に逆戻りしてはならない」とのべた。
米国は「二国家共存」を中心に据え、パレスチナにおける国際人道法の遵守を呼びかけつつも、イスラエルの「自国民を守る権利と責任」を認め、イスラエルによるジェノサイドを容認している。
「明確な国際人道法違反」 国連事務総長
そして、ヨルダンが提出した「敵対行為の停止につながる人道的停戦」を求める決議案が121カ国の賛成で可決されると、これに怒りを露わにしたイスラエル国連大使は、「今日は悪名を残す日だ」とのべた。
ハマスとの会談や議論はおこなわれていないといい、「イスラエルは彼らが再び残虐行為を犯すのを黙って見ているつもりはない。決議は、あたかも戦争が勝手に始まったかのように、ハマスに一度も言及していない」と批判。また「ハマスを破壊する唯一の方法は、彼らを根絶やしにすることだ。なぜハマスの責任を追及しないのか」「国際人道法に則った人道危機は存在しない」といい張った。そして、決議案が採択されたことに「今日は国連と人類にとって暗黒の日だ。イスラエルはみずからを防衛し、ハマスの能力を根絶し、人質を帰国させるためになすべきことをする」と怒りを露わにし、さらなる侵攻を明言した。
修正案を提出していたカナダのボブ・レイ国連大使は、ハマスについて触れられていないことを強調し、「10月7日のハマスによるテロ攻撃と人質事件を認めずに行動することはできない」とのべ、もし修正案が採択されなければ、国連総会は世界最悪のテロ攻撃の一つを認めず、「悲劇が展開し続けるなか、私たちは皆その失敗とともに生きていかなければならないだろう」とのべた。そして、カナダの修正案は「名前を付けなければならないものに名前を付ける」ものだと強調した。
カナダの主張に反論したパキスタンのムニール・アクラム国連大使は、「もしもカナダの修正案が公正であるならば、ハマスと同様にイスラエルを名指しするべきだ」とのべた。ヨルダンの決議では、どちらの側も名指ししないことが最良の選択だったと指摘した。
そして、「イスラエルによる占領とパレスチナ人の殺害が50年続いている。誰がこれを始めたかは誰もが知っている。イスラエルは真実を直視することも、正義を直視することもできない。イスラエルの占領こそが原罪であり、それは10月7日から始まったことではない」と訴えた。
国連の対応をめぐっては、10月24日にグテーレス事務総長が安全保障理事会で、イスラエルが「100万人以上の人々に対して避難所も食料も水も医薬品も燃料もないガザ南部に避難するよう命じ、そのうえで南部を爆撃し続ける」ことは、民間人の保護に反すると非難した。そして、「ガザで見られる“明白な国際人道法違反”を深く憂慮している」と発言した。
さらに、10月7日にハマスによるイスラエルへの襲撃は、「何もない状況で急に起こったわけではない」「パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた。自分たちの土地を入植によって少しずつ失い、暴力に苦しんできた。経済は抑圧されてきた。人々は家を追われ、破壊されてきた。そうした苦境を政治的に解決することへの希望は消えつつある」と危惧を示した。
また同時に「パレスチナの人々が怒っているからといって、ハマスによるおぞましい襲撃が正当化されるわけではない。また、おぞましい襲撃を受けたからといって、パレスチナの人々に対する集団的懲罰が正当化されるわけではない」とのべ、イスラエルがおこなう「明白な国際人道法違反」を厳しく指摘した。
これにイスラエル側は反発。ギラッド・エルダン国連大使は、「指定テロ組織によってイスラエル国民に対して実行された、このうえなく恐ろしい行為に理解を示す人々と話をすることに、何の正当性も意味もない」と、事務総長を非難。同氏は「X」(旧ツイッター)に「(グテーレス事務総長の)即時辞任を求める」と投稿した。
国際社会においては、イスラエルによるパレスチナへの長年にわたる侵略と虐殺が現在の悲劇を生んだという見方が圧倒しており、それをさらに深刻化させる戦争の即時停止を求める声が増している。イスラエルとその背後で二重基準による分断を仕掛けるを米国やG7主要国の主張が宙に浮いており、国際的な信用は失墜している。