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国際世論の力で軍事作戦中止を 電気も水も逃げ場もないガザ 東京外大「イスラーム信頼学」研究グループが緊急セミナー開催

イスラエルの爆撃で跡形もなく破壊されたガザ地区の商業中心地(10日、パレスチナ自治区)

 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所を拠点に研究活動をおこなっている「イスラーム信頼学」の二つの研究班は、12日、緊急セミナー「緊迫するパレスチナ/イスラエル情勢を考える」を開催した。このセミナーは、7日のハマスによるイスラエルへの武力攻撃、それに対するイスラエルの反撃が、いまやイスラエルによるガザ地区の完全封鎖と地上侵攻の切迫という深刻な状況になっているもとで、今回の事態の背景と現状、今後の見通しを考えるために持たれたものだ。東京大学中東地域研究センター特任准教授の鈴木啓之氏と、最近現地から帰国したパレスチナ子どものキャンペーン・エルサレム事務所代表の手島正之氏が報告をおこない、質疑応答で深めた。両氏の報告と質疑応答の要旨を紹介する(写真はパレスチナ子どものキャンペーンより提供)。

 

・緊迫するパレスチナ/イスラエル情勢を考える


東京大学中東地域研究センター 鈴木啓之   

 

 現在まで(12日現在)にわかっていることとして、パレスチナ人の死者は1126人(うち26人がヨルダン川西岸地区で死亡)、負傷者約5700人。イスラエル人の死者は約1200人、負傷者約3200人となっている。

 

 7日午前6時30分頃から、ガザ地区からロケット弾2000発(ハマスは5000発と主張)が発射され、ハマスなどパレスチナ系の武装戦闘員が1000~2000人規模で越境攻撃を始めた。過去に少人数がイスラエルに潜入して自爆攻撃をやったことはあったが、今回は誰が見てもハマスの戦闘員とわかる格好でイスラエル内で軍事行動をやったことは驚くべきことだ。イスラエル軍兵士や警察と交戦し、非武装のイスラエル人や外国人も多数殺害された。イスラエル国籍アラブ人も10人が犠牲になった。ハマス軍事部門のムハンマド・ダイフ司令官が声明を発表し、攻撃作戦名が「アル・アクサーの大洪水」であるとされた。

 

 同日、イスラエルのネタニヤフ首相は、軍事作戦「鉄の剣」を開始。予備役を召集し、「われわれは戦争状態にある」と宣言した。また、ガザ地区から80㌔圏内に特別非常事態が宣言され、警察による地域封鎖、個人の家屋への事前通告なしの立ち入り、市民に車両提供命令を可能にするなど、非常に強い権限が警察に与えられ、イスラエル領内での戦闘がおこなわれていく。そして3日間、イスラエル軍と警察は、ガザ地区周辺に流入したパレスチナ戦闘員との戦闘をおこなった。

 

 翌8日、イスラエル軍によるガザ地区への空爆が、夜半~早朝から実施され、現在まで続いている。イスラエル軍は、パレスチナ武装戦闘員を400人殺害したと発表。また、イスラエルでの死者が、民間人を含めて600人に達することが判明した。

 

 周辺では、レバノンのヒズボラが、ゴラン高原最北部ドヴ山のイスラエル軍施設に向けて迫撃砲を発射した。

 

 ブリンケン米国務長官がハマスによる民間人殺害を非難し、アメリカ政府は東地中海に空母打撃群を派遣すると発表した。

 

 9日、ガザ地区への空爆が2日目に入る。イスラエルはガザ地区に対し、電力、食料、燃料、飲料水の供給を停止する「完全封鎖」を宣言した。ガザ地区の中に備蓄されているものには限りがあり、ここからガザ地区の約230万人の生活は秒読みに入った。

 

 この段階で米紙『ウォールストリート・ジャーナル』が、ハマスの攻撃をイランが支援したと報道し、議論を呼んだ。イランは後日、これを否定した。

 

 10日、イスラエルは、ガザのイスラーム大学が「ハマスの訓練機関」だとして砲撃をおこなった。また、ガザ地区周辺の戦闘が終わり、イスラエル軍はパレスチナ戦闘員の遺体1500体を回収したと発表した。

 

 11日、ガザ地区への空爆の4日目。国連は、26万人のガザ市民が住宅を追われたと発表した。また、ガザ唯一の火力発電所が燃料切れで送電停止となった。それは病院などの機能にも大きな影響を与える。

 

 一方、イスラエルは予備役30万人を含む部隊をガザ地区周辺に集結させた。ネタニヤフ首相のもとに野党が合流し、戦時内閣が結成された。つまり地上侵攻の準備を整えたといってもいい事態だ。

 

 ハマスは声明を発表し、アラブ諸国とイスラム諸国、国際社会に人道主義的責務を果たすよう要請した。

 

 12日、ガザ地区の病院が「燃料があと4日でつきる」と緊急アピールを出した。エジプトは6時間の人道的停戦を呼びかけた。

 

特徴と注目すべき点

 

 パレスチナとイスラエルとの関係は、現在、イスラエルという国家をはさむ形でパレスチナ自治区が形成されている。それがヨルダン川西岸地区とガザ地区だ。ガザ地区は2007年から、ハマスという政治組織が実効支配している。それを理由にイスラエルは、ガザ地区を封鎖下においてきた。それがこの15年の経過だ。

 

 今回のハマスやパレスチナ武装勢力の行動の特徴、注目すべき点としては、過去に例のない計画性と規模だ。1日に数千発のロケット弾を発射して、イスラエルの防空システムを撹乱した。それと同時に陸海空から1000人規模の武装戦闘員が、7カ所の検問所を襲撃して越境し、軍事行動をおこなった。

 

 また、イスラエル社会に与えた被害の大きさも過去に例がない。国家同士の戦争ではなく、イスラエルという国家とハマスという武装集団との戦闘で、イスラエル側の死者が100人をこえるというのは前代未聞のことだ。

 

 作戦の規模を考えれば、感情が爆発して出ていった、というものではないと思う。中長期的な背景を探ることが重要だ。ハマスの司令官は7日の声明で、エルサレムとアル・アクサー・モスクが蹂躙(じゅうりん)されていること、イスラエルの占領が継続していること、パレスチナ人4500人が囚人として捕らえられていること、などを指摘している。

 

 国際社会の反応では、アメリカは今回のハマスの行動に対して明確な拒絶と批判をおこなっている。ヨーロッパ諸国はガザ地区への支援を停止した。岸田首相は両当事者に行動の自制を求める見解を発表したが、駐日イスラエル大使はこれに苦言を呈した。

 

背景として考えられる問題

 

 では、今回の出来事はなぜ起きたのか。五つの問題がからみあって起きたのではないか、というのが今の私の見解だ。

 

 第一に、ハマスの内部事情だ。ハマスはガザ地区の外に政治指導部の多くの幹部がいる一方、ガザ地区の内部に軍事部門カッサーム旅団の幹部や戦闘員がいる。軍事部門のウェブサイトは、軍事作戦をいかに展開したのかを動画や映像で広報している。一方で政治局のウェブサイトは「ガザ地区に対して人道物資の搬入をおこなうようアラブ諸国と国際社会に訴える」「われわれ抵抗運動は子どもを標的にすることはありえない。西側メディアには正確な報道を求める」と訴えている。両者の温度差に驚いている。

 

 これまでハマス政治局は、「2006年、われわれはパレスチナ自治評議会の選挙に勝利し、民主主義にもとづいて選ばれた統治者であるのに、国際社会の介入、ファタハのクーデターの試みによって頓挫した。正当性はわれわれにある」と、国際社会にも理解できる言葉で訴えてきた。今回の行動は軍事部門が主導しているが、政治局との関係性が変化しているかどうかを今後、見極めていく必要がある。

 

 第二に、今年はヨルダン川西岸地区が過去15年間でもっとも緊張した年だった。西岸地区北部のジェニーンやナブルスで、若い構成員でつくられたパレスチナ人の新たな武装部隊が台頭し、パレスチナ社会で支持が広がった。これに対してイスラエル軍は年頭から軍事作戦を展開し、軍用ヘリ「アパッチ」やドローンで連続してパレスチナ人を殺害していった。今年、西岸地区で殺害されたパレスチナ人は9月19日時点で189人で、これは2008年以降最大だ。

 

 また、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力行為が頻繁に起こり、衝突が激化した。年始には、東エルサレムを除く西岸地区のイスラエル人入植者が50万人を突破した。2月26日、入植者グループが西岸地区のフッワーラ村を夜半に襲撃・放火し、車両100台と家屋35軒を全焼させる事件を引き起こしている。

 

 こうしたなかで、新興武装部隊の台頭に対して、ハマスは既存の政治組織として存在感を示す機会を模索していたのではないか。

 

 第三に、ガザ地区の窮状について、私たちは改めて考えなければならない。2006年からガザ地区は厳しい封鎖下に置かれ続けている。人の出入りや物資の搬入が制限されている。イスラエルがガザ地区の境界線を管理して、ガザ地区に入れる物品を調整・制限している。

 

 国連は2012年にガザ地区に関する特別レポートを発表しているが、タイトルは「2020年には人が住めなくなる」だった。国際社会の介入で封鎖が解除されないかぎり、安全な飲料水や食料が確保できず、人が住めなくなる、と。そこから3年経っているわけで、その悲惨さ、ガザ地区の窮状は目に余るものがある。

 

 実際、2022年段階でガザ地区の失業率は47%、若者に限れば64%で、ほとんどの人が失業している。そして、人口の65%が貧困ライン以下で生活している。難民に限れば、それは80%をこえる。そして、ガザ地区の住民の80%はなんらかの人道支援に頼って生活している。

 

 今回、この封鎖がハマスによって内側から破られたわけだが、それはガザ地区が抱える怒りや悲しみが噴出した一つの形なのではないか。

 

ネタニヤフ首相

 第四に、イスラエルの国内事情がある。イスラエルでは昨年末、ネタニヤフが政権に復帰した。そのとき、この政権のさらなる「右傾化」が懸念された。それは、入植者を支持母体とする愛国主義政党・宗教シオニスト連合が連立政権に入ったからだ。同党は入植活動やパレスチナに対する強硬政策を支持し、反LGBTQの態度をとっている。同党出身のベン・グヴィール国家安全保障相は、今年「神殿の丘」を何度も強行訪問し、アラブ諸国から大きな反発が起こった。

 

 さらに、イスラエル国内はこの半年間、司法改革法案で大混乱に陥っていた。ネタニヤフ政権はこの法案で最高裁が持つ様々な権限を制限しようとし、これに対して毎週末に数十万人規模のデモ行進が展開された。ネタニヤフ自身が汚職疑惑を抱えており、それをもみ消すためではないかという批判がある。ネタニヤフは司法改革に積極的でないガラント国防相を解任しようとしたが、その結果、安全保障上の危機のさいに招集される予備役にまで反対運動が広がった。

 

 第五に、中東全域での対立構図の変化も関係したのではないか。ブリンケン米国務長官は、「イスラエルとサウジアラビアの接近を妨害することが動機の一つであったとしても不思議ではない」と語っている。

 

 私は「妨害」というよりも、ハマスやパレスチナの住民からすれば、自分たちの窮状を救ってくれるかもしれない国が次々と消えていくなかで、この窮状を解決するには自分たちでやるしかないという悲しい選択があったのではないかと考えている。

 

今後の見通しについて

 

 イスラエルの地上侵攻の可能性についてだが、過去にイスラエルがガザ地区に地上侵攻した場合は、空爆の開始から地上侵攻まで1週間から10日かかっている。それは予備役の招集や作戦の立案などによる。現在、予備役が招集され、戦時内閣が形成されており、イスラエルとしては準備万端整っている。

 

 地上侵攻が実行された場合、ガザ地区の犠牲者はケタ違いに増える。とくにネタニヤフ首相が「ハマスはISIS(「イスラム国」)だ」、ヘルツォーグ大統領が「相手は人間ではなく、モンスターの野蛮さだ」と発言しており、こうした政治指導者の下で動く兵士がどのような振る舞いをするのかと考えると恐ろしいものがある。地上侵攻が開始されれば、ガザ地区の民間人の犠牲とともに、ロケット弾発射によるイスラエル市民への影響の甚大化も避けられない。

 

 また、今年非常に緊張してきたヨルダン川西岸地区でも、イスラエル人入植者による挑発行動が強まる可能性がある。西岸地区はガザ地区のようにパレスチナ人とイスラエル人が面で接しているのではなく、網目のように入りくんで対峙しており、ここで衝突が拡大するとイスラエルは対処できるのか。

 

 さらにイスラエル北部にはアラブ系市民がたくさん住んでいるが、2021年の武力衝突では、このアラブ系住民をガザのパレスチナ人と同一視してユダヤ系愛国主義者グループが襲撃した。再びそうなれば、イスラエル国内の社会的亀裂を大きく刺激しかねない。

 

 いずれにしろ現在のパレスチナとイスラエルとの間の出来事は、この数日間、この数カ月に起こってきたことだけで理解できるものではない。ガザ地区を封じ込め、パレスチナ問題にフタをして、イスラエルと周辺アラブ諸国との間の関係正常化がおこなわれてきたわけだが、いまやもうそのフタが開いてしまった。

 

 イスラエルだけでなく、日本を含めた国際社会がパレスチナ問題にどのようにとりくむのかが問われている。

 

・国連や国際NGOの事務所も爆撃の標的に


パレスチナ子どものキャンペーン 手島正之   

 

 ガザ地区が深刻な人道危機の状態にあるのは、封鎖が始まってからずっと続いていることだ。戦争がない平時であっても、職に就けない、食料の確保が難しいという状況がずっとあった。

 

 国連の発表(14日時点)では、今回のイスラエルの空爆による死者は2228人、負傷者8774人。国内避難民は40万人以上とものすごい数で、そのうちの27万人が国連の学校に避難している。

 

 しかし誰もがこの避難所に入れるわけではなく、むしろ避難ができない人がほとんどだ。現地のスタッフと毎日連絡をとりあっているが、あるスタッフは「一回避難したが、空爆の危険があるということで、親戚を頼って次の場所に避難した。またそこも危ないので、避難先の家族と一緒に逃げた。どこに逃げればいいのかわからない状態だ」といっている。そうした人がほとんどだという。

 

 まさに今この瞬間も空爆はやんでいない。2014年の軍事衝突のときには、爆撃が一時的に止むとか、一時休戦協定が結ばれるということがあったが、今はまったくそういう状態ではない。1時間に1回といったレベルではなく、ひっきりなしに爆撃が続いている。異常な事態だ。

 

 現地スタッフの声を紹介する。「電気、水、食料のライフラインの確保がほぼ不可能」「ガザ市内は逃げ場所がない。スタッフも逃げまどっている状態」というものがある。

 

 携帯電話の電波塔が爆撃によって破壊されており、通信状況が非常に悪い。こちらからメッセージを送っても既読にならない。しばらく経ってパラパラと返事が来て、また半日つながらないという状態だ。

 

 「(イスラエルは)ガザの軍事基地を標的にする」という報道があったが、ガザの商業中心地や国連施設、国際NGOの事務所は確実に標的にされている。当会の事務所はかろうじて被害を免れたが、事務所から徒歩圏内は建物が粉砕されている状態だ。瓦礫がたまっているのではなく、砂利状態だ。

 

 ライフラインも確保できず、逃げ場もない状態なので、1日半前からはある意味覚悟を決めたメッセージ、たとえば「今までありがとう」「あなたは本当にいいマネージャーだ」「今までのキャリアのなかで一番いいチームで働けた」などが届き始めた。こちらは何を返していいかわからない。それでもなお彼らは私たちに現状を報告してくれている。一刻も早く戦闘が停止してほしいと願うばかりだ。

 

イスラエルの空爆で破壊されたガザ地区(10日)

 また、私たちはイスラエル南部ネゲブ地域でベドウィン(アラブの遊牧民族)の子どもたちを支援している。その村がガザからのロケット弾の被害にあい、ベドウィンの民間人16人が犠牲になり、46人が行方不明になった。犠牲になったり人質になった人がどれだけいるかはわからない。

 

 ところがここにイスラエル国内からの支援がほとんど届かない。彼らは家屋が破壊された村に住み続けなければならない。当会の提携団体がイスラム教慈善団体と共同で食料や生活物資を配っている。

 

 ベドウィンの村は、イスラエル政府から公式に承認されていない。だから公的な支援、医療や教育、電気や上下水道が届かない。イスラエルには、こうしたベドウィンの人たち25万人以上が暮らしている。

 

 なお当会は、過去35年間、パレスチナで支援活動を続けている。教育支援やろう学校支援、障がい者の自立支援、女性の救済・自立支援などをおこなっている。

 

■質疑応答より

 

 セミナーは続いて、視聴者からの質疑応答に移った。司会は、東京外国語大学教授の黒木英充氏が務めた。

 

 司会 ガザ地区では、難民になった人々がさらに封鎖された逃げ場のない状況に置かれながら、その上に爆弾が落ちてくるという、人道的に許されない状況だ。しかしアメリカはそれを強力に支持し、ヨーロッパ諸国もイスラエルの立場に立っている。視聴者からの質問だが、「今の状態を戦争といっていいのか?」。

 

 鈴木 イスラエルによるパレスチナ人勢力とのたたかいは、国家同士の戦争とは大きく異なる。圧倒的に強い軍事力を持っている国家が、国を持たない人々に対して軍事力を行使している状態だ。侵攻、軍事作戦、虐殺といった言葉で表現されるような、力の大きな違いがあることは抑えておきたい。

 

 「国連が仲介に入って問題を解決していくことはできないのか?」という質問だが、パレスチナ問題に関しては国連の介入がうまく機能してこなかったのが、この75年間だ。

 

 「ガザ地区の軍事封鎖自体、国際法上問題があると批判する国際的な動きは?」という質問だが、それは国連の場でくり返しおこなわれてきている。しかし、それがイスラエルの政策を変えることができなかったというのがこの15年間だ。それに対するガザの住民たちの絶望感、怒り、悲しみたるや、想像を絶するものがある。

 

 「一部報道で、エジプトから今回のハマスの行動の事前警告がイスラエルにあったといっているが?」という質問だが、まだ確定した情報が出ていない。もしそれが事実で、ネタニヤフがその警告を無視していたとすれば、諜報機関モサドと並んでイスラエル政府中枢の大失態ということになり、どんなにガザを空爆し地上部隊を派遣したとしても、その責任はこの後、厳しく問われ、政権崩壊の危機が訪れると思う。

 

 手島 「ガザから域外への脱出は可能なのか?」という質問だが、ひっきりなしに空爆がおこなわれている状況で、まずガザ地区での移動もできない状態だ。それをかいくぐって避難所に行ったりしているが…。エジプトとの境界にあるラファ検問所も爆撃されていて、まったく安全ではない。脱出はほとんど不可能だと思う。

 

 鈴木 「地上戦が始まらないように声を上げる動きはあるのか?」ということだが、今世界各地でデモ行進や座り込みといった行動が起こっている。日本でも、日本国際ボランティアセンターなどパレスチナで活動するNGO4団体が、ガザ被災者の一刻も早い救援に向け、即時停戦への働きかけを求める要請文を外務省に届けている。

 

 「今後、世界の市民運動ができることは何でしょうか?」については、ガザ地区、パレスチナへの攻撃を私たちは許さないということを明確に示す必要がある。今すでに攻撃されているわけだが、地上部隊が派遣されたら被害者の数はケタ違いに上がる。それを許さないという声を上げることだ。

 

 手島 今、地上波のテレビや新聞で分断が煽られている。イスラエル支持、ガザ支持の陣営に分かれてお互いが批判しあう。「被害の大きさはこっちの方が大きい」とか、そういう空気感が醸成されている。それにくみすることなく、人道危機のさらなる広がりは絶対に回避してほしい、非武装の民間人をターゲットにする行為には反対だと、分断に抗う側で声を上げていくべきだと思う。

 

 司会 世界を見ると、インドネシアやマレーシアの政府はパレスチナ人との連帯をまず最初に表明している。南アフリカの外務省は、大事なことは国連決議と国際法だ、つまりイスラエルこそが国連決議を守らず国際法も無視している、占領下においているガザ市民を守らず封鎖するのはジュネーブ条約違反だ、と的確に指摘し、停戦の仲介に動く用意があると表明している【別掲】。国連安保理の国々がこうした立場に立てば、国連は機能するだろう。戦闘が始まった7日にこうした見解を出している国があることを強調しておきたい。

 

イスラエルによる無差別爆撃が続くガザ地区(10日)

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