いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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イラク全土で反占領軍斗争   世界の反戦斗争と連動  人民には勝てない侵略者 

 イラクではここ数日、米占領軍とその下請外国軍隊がデモに発砲したことをきっかけに、全土の主要都市でイラク人民が武器を持って反撃、1年にわたる占領支配反対のたたかいが文字どおり人民戦争の様相を呈している。ブッシュ政府は、ヤシン師暗殺に抗議するパレスチナ人民の蜂起、3月20日の国際反戦デーでわき起こった「占領軍のイラク撤退」の斗争に包囲されて進退きわまり、30年まえのベトナム戦争のような大敗北に直面している。
   
 言論弾圧に怒り噴出
 米英占領当局は3月の下旬、イスラム教シーア派の発行する週間新聞『アルハウザ』が「重大な脅威となっている」として、2カ月の発禁処分という言論弾圧をおこなった。3月31日に約1万人がそれに抗議して首都バグダッドの占領軍司令部に押しかけたことを皮切りに、抗議行動は中部のナジャフ、アマラ、南部のナシリア、バスラなど各地に広がった。
 米英占領軍とその指揮下のイタリア、スペイン軍などは、武装ヘリ、装甲車、戦車などをくり出してデモ隊に発砲。バグダッド北東部のサドルシティーでは、反米勢力の民兵も自動小銃やロケット砲で反撃して、激しい市街戦となった。
 ナジャフの占領当局に押しかけたデモ隊にたいし、スペイン軍とその配下のエルサルバドル軍、応援にかけつけた米軍が銃撃を加えた。アマラでもイギリス軍と銃撃戦となり、ナシリアではイタリア軍との武力衝突となった。「もっとも安全」とされてきた南部の都市バスラでは、デモ隊はイギリス軍の妨害・弾圧を排して、州政府ビルを占拠し、イラクの国旗を立てた。

 サマワでも西洋教育に抗議 キャンプにこもる陸自
 陸上自衛隊が進駐したサマワでも1日、市民数百人が占領当局のすすめる「西洋型教育」に反対し、「イスラムの文化と伝統を尊重せよ」と書いたプラカードをかかげてデモ行進した。サマワで占領政策に反対するデモははじめて。近くのナシリヤで市街戦がはじまったことに恐れをなした自衛隊は、給水や施設復旧などの「人道復興支援」の活動を停止し、息をひそめてキャンプ内にたてこもったと伝えられる。
 この1年、米英など占領軍にたいするイラク反米武装勢力の抵抗戦争は、しだいに組織的、計画的となってきていた。だが、4日のバグダッドやナジャフなどの市街戦は、一部の武装勢力によるものではなく、大衆的な抗議行動が発展したものであった。しかも、イラクの人口の六割をこえるイスラム教シーア派が反米勢力の最前列に立ち、イラク中部から南部への各地に反米行動が広がった。米英占領当局は、フセイン前政府に弾圧されたシーア派をとりこみ、イラク占領支配の柱にしようとしてきた。そのもくろみは無残にはずれ、6月末のイラク人への主権移譲の芝居もうてなくなった。ブッシュ政府のかかげたイラクの「民主化」、それをてこにした「中東民主化」という中東戦略全体の破たんが浮き彫りとなっている。   

 占領で生活は劣悪 失業者は1200万人
 今日、アメリカのイラク侵略の目的が「大量破壊兵器の武装解除」とか「テロ組織につながる政権の排除」でなかったことが、だれの目にもはっきりした。その究極の目的は、世界第2位の豊富な石油資源を強奪し、軍事力で市場をこじあけ、「復興」の名でブッシュ政府につながる独占企業が巨額の利権をものにするための泥棒戦争であった。それは、フランス、ドイツ、ロシアなどを排除して、アメリカ一国で中東を支配するグローバル化の一環にほかならなかった。
 ブッシュ政府は、イラク開戦と同時に石油省を無傷で残し、ルメイラ油田をはじめ全油田を確保した。五月に「本格的な戦斗の終結」を宣言すると、ただちに大統領で国営企業の100%民営化、関税撤廃、「利益の無制限国外移転」などアメリカ資本がイラクの富をすべて強奪できる体制をつくった。
 石油権益は、ロイヤル・ダッチ・シェルをはじめ米英系メジャー(国際石油資本)が独占した。186億㌦(約2兆円)にのぼる電気、水道、交通など26件の「復興事業」も米国企業がほぼ独占した。それらはチェイニー副大統領をはじめブッシュ政府の主要閣僚を利益代表とする独占企業が分けどりをした。
 結局、米英占領者は罪のないイラク人民1万人余りを殺して、石油を奪い、国営企業を外資に売り飛ばし、市場原理の経済構造にする、すなわちイラクを植民地にしたのである。
 そのもとで、イラク人民は奴隷状態を強いられている。イラク人を中心に欧米各国人も参加した非政府組織である「イラク占領監視センター」は、イラク占領の実態について1月、つぎのように報告している。
 国土の大部分が停電状態で、停電時間は1日に平均して16時間におよぶ。現在のイラクの発電能力は、必要とされる2000万㌔㍗の20%以下で360万㌔㍗しかない。
 世界第2の産油国でありながら、ガソリンを買うために1晩明かさなければならない。米軍が警備するバグダッドのあるガソリンスタンドまで、2列縦隊の車列が3㌔にもわたり、閉店時間を過ぎると、持ち主はそのまま車を止めおいて明日の給油を待たなければならないからだ。
 全国で1200万人(総人口2267万人)が失業している。占領当局の前にある検問所の付近には、かすかな希望を抱いて毎日何人もの失業者がたむろする。あるいはホテルのロビーで、運転手はいらないか、通訳はいらないかと、マスコミ関係者などに尋ねて回る人も多い。大学教官、エンジニア、公務員のなかに当座をしのぐため、タクシーの運転手になるものも少なくない。
 たまさか建設企業に就職できた労働者も、正規雇用ではなく短期契約であったり、インド人やパキスタン人労働者に入れかえられたりで、抗議行動を起こさなければならないほど身分保証もない。
 昨年5月にイラク軍が解体されたため、バスラ州だけでも6万人が失業した。かれらは手当(事実上の退職金と失業手当)の支払いを要求するデモを何回も起こし、雀の涙ほどの手当をもらったこともある。だが、バグダッドやバスラなどでは、占領軍に発砲され命を落としたり、けがをしたものもいる。就職要求も命がけである。
 「復興事業」で第2位の元請企業となったアメリカ最大の建設・エンジニアリング会社ベクテルの創始者は、「われわれは建設・土木のビジネスをやっているのではない。金もうけのビジネスをやっている」と語っている。ガソリンスタンドで長蛇の列をつくらなければならない理由の一つも、電力不足のために精油所が操業できないためである。もう一つの理由は、米ハリバートン社の子会社が精油所を修理していないことである。
 なにをしているかといえば、アメリカはイラクの原油を輸出し、コストに利益を上積みする方式でトルコやクウェートからガソリンを輸入している。これらの企業は、石油施設の復旧でももうかるし、復旧をしなくてももうかる仕組みをつくっている。イラク人の生活に不可欠な電気などどうなってもよいのである。
   
 殺傷や拷問が続出 本性暴露した占領軍
 「イラク占領監視センター」は2月の報告で、米軍がイラク人を虫けらのように殺傷する実態、武装襲撃による家宅捜索、不当逮捕の様子をつぎのように伝えている。
 バグダッドの北約50㌔にあるアブヒシュマという米軍占領下の町は、町のおよそ半分は有刺鉄線で囲まれ、検問所がおかれ、夜間は外出禁止である。しかも、敵に利用されかねない場所を砲爆撃で破壊するため、なんの罪もない女や子どもまでが犠牲になっている。
 町はずれに住む33歳の農民の家庭の場合、昨年10月、あたりかまわず砲撃する米軍戦車を先頭に米軍が町に近づき、大学4年生であった弟を撃ち、弟を助けようとした農民の妻を射殺した。
 また、米軍は夜間の家宅捜索で目にあまる蛮行を働いている。まず、装甲車両か爆薬で入口を破壊して米軍が突入、ドアや窓を吹き飛ばし、動くものすべてにいっせい射撃をして、殺したり傷つけたりする。
 旧イラク農業省の男性職員はゲリラの容疑で逮捕され、バグダッドの基地に連行された。後ろ手に縛られたまま2日間独房に入れられ、くり返しなぐられた。その間、1日にスプーン1杯の「食事」とコップ1杯の水を与えられただけであった。その後、バグダッド空港の囚人収容所に移され、「医師の診察」なるものを受けたのち、電気ショックによる拷問を受けた。
 昨年11月12日付の『ワシントン・ポスト』紙によれば、ギャラップがイラクで世論調査をしたところ、「アメリカが民主主義をうち立てるために来た」と考えているイラク人は、回答者のわずか1%であった。「復興」の過程でイラク人のあいだには失望が広がり、アメリカが助けてくれるという神話は音をたてて崩壊しつつある。
 「監視センター」の1月報告は、「イラク人は叫ぶ。“アメリカ人よ、おまえたちが無事でいたいならわれわれに賃金を支払え。もし支払わないのなら、つぎは武器を持ってくるぞ”」と結んでいる。
 このイラク人の叫びはいま、現実となっている。職もなく、電気もなく、ガソリンもなく、生きていけないうえ、占領軍から虫けら同然に好き勝手に殺されるという植民地的状態を、誇り高きイラク人民がこれ以上がまんすることはない。
  
 崩れる米国の支配 各国の反米斗争高揚
 アラブの同胞パレスチナでも、戦争狂のシャロン政府が「テロ撲滅」を口実に民族解放運動の指導者ヤシン師を殺害したことを契機に、アメリカの叫ぶインチキ「和平」がイスラエルへの降伏であることが多くの人人に見ぬかれ、いまあらためて武器を手に総決起する情勢となっている。
 イラク戦争1周年にあたって3月20日全世界でとりくまれた反戦統一行動には、少なくとも45カ国、1000万人以上の人人が街頭にくり出して、アメリカ主導の占領軍がイラクから即時撤退し、イラクを占領から解放することを要求した。
 世界で盛り上がる反米世論と斗争をまえに、スペイン新政府が6月末に自国軍隊のイラク撤兵を宣言、中米ホンジュラスやシンガポールもそれにつづいた。ブッシュにもっとも忠実といわれたポーランド大統領も「だまされた」といい出し、「韓国」政府も追加派兵先の変更をアメリカに要求するなど、アメリカ主導の「有志連合」もがたがたに崩れはじめている。小泉政府もいつまでもアメリカの下請戦争に肉弾を提供し、イラク植民地化に協力するような愚かなことをやめて、自衛隊をただちにイラクから引き揚げるべきである。
 今日のイラクをめぐる情勢は、30年まえのベトナム侵略戦争の末期にそっくりである。古今東西の歴史で他国を侵略し植民地的略奪をしようとしたものは、ことごとく大敗退の末路をたどっている。いかにアメリカが最新の強力な武器を持とうとも、民族の独立を守り、奴隷となることを望まず、社会正義を貫くイラク人民を屈服させることはできない。最後の勝利はイラク人民のものである。

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