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殺人労働の延長がイラク派兵  労働者の社会的使命の回復を

 アメリカがばく大な軍事力でフセイン政府を転覆して石油を略奪し、「自由化」「民主化」を叫んで市場開放・植民地経済を強要したイラク戦争は、日本の労働者のなかで「人ごとではない。自分たちの職場も同じ戦争状態だ」と実感をこめて論議されている。労働現場では80年代後半からアメリカの「グローバル戦略」で世界中に営利最優先の「規制緩和・自由化」が強要されるなかで、人間生活の極限をこえた競争があおられ、安全も人員もコストも切り捨てられ、工場の爆発事故、火災、交通事故、死亡災害などがひん発し殺人的なものとなっている。「自由競争」への改革といって、大資本ことに外資の金もうけの自由だけがばっこし、生産した商品の有用性も、生産労働の安全、労働する人間の生活条件も破壊され、まさに奴隷状態が進行している。アメリカのイラク戦争と小泉政府の自衛隊派遣は、国内における殺人労働状態の延長線のうえにある。

  爆発事故などが多発
 製造現場で「いつ爆発や死亡事故が起きてもおかしくない」というのは大手中小問わず労働者共通の実感である。
 昨年9月にブリヂストン栃木工場で起きた大火災も「どこで起きてもおかしくない問題」とさまざまな職場で論議された。下関のブリヂストン労働者は「タイヤ製造工場は空気中にコークスのかすがいっぱい飛んでいて引火しやすい。下関でもボヤが起きた」と語り、いつも「安全だ」と危険であることすら知らされぬまま危険作業を強要されている現状を訴えた。
 大火災になった栃木の工場は大量のゴム、炭素粉末、ブタンガス、硫黄など可燃性薬品の集積場。しかし事故が起きてもすぐ発見できないほど徹底的に無人化されており大火災となった。 労働現場自体が人数をへらしたうえに「生産ノルマ」を上げていた。ラインのスピードを上げ「安全ベルト」もできず、昼休みもフル稼働して休みがなく、熱中症で倒れる労働者もおり、退職して一年以内に亡くなる人が多いと語られた。それは「賃金カットどころか命をカットされる」という実態だった。
 死亡労災事故がひん発した新日鉄八幡などでも「コスト優先で人をへらしすぎた結果だ」と憤りが広がった。集団作業でたがいに気を配りあって仕事をするのではなく、長いラインを一人で受け持たされ、ライン間の連絡も無線でなければ届かないほどのコスト削減のなかで昨年は、老朽施設の床が落ちて転落死、溶鋼に巻きこまれて焼死、落下したクレーンの下敷きになって死亡など、痛ましい死亡事故があいついだ。製造現場はコスト削減競争のなかで死と隣り合わせの実態となっている。

 運送業でも大事故連続
 追突事故が連続したトラック運転手のなかでも「運賃規制がなくなりどんどん値が下がる。とくに下請はひどい」と語られている。もともと営業エリアが広く一晩で九州から関東まで走る運転手はざら。そのうえに参入規制の緩和で運賃切り下げに拍車がかかった。ただでさえ高速に乗らずにスピードを出し、過積載をし、睡眠時間を削る運転手は多いが、さらに睡眠時間を削る状態となった。そうしたなか愛知で昨年、夜中はトラックに乗り昼間にアルバイトをしていた運転手がふらふらの状態で大事故を起こし問題となった。
 納入先も人員削減で「ご自由にお使いください」とリフトしかおかない工場がふえた。夜中に寝ずに運転して朝は自分でリフトを使って荷物をおろし、自分で積みこんでまた夜中走る殺人労働が横行している。
 軽急便名古屋支店に運転手がガソリンをまいて火をつけた問題も「あそこまで追いこんだのは会社だ」と同業労働者のなかで話題にされた。仕事がなく生活苦にある失業者に月賦で「お古」のトラックを100万円で買わせ「がんばれば手取りが月四〇万円は可能」とおだてて働かす。しかし実際は日通など大手企業の食い残した、小さな荷物を遠くに一つずつ運ぶもので運賃以上のガソリン代がかかる。「わりに合わない」と訴えると「夜もやれ」といわれ、昼も夜も寝ずに働いて手取りは10万円以下。しまいにサラ金に手を出し破産させる仕組みだった。
 JRでも昨年七月の長崎での大脱線事故をはじめ、運転手が意識を失い駅をとおりこす状況がひん発した。長崎での事故は約130㌔の落石(直径約50㌢)をはねて脱線したものだがJR九州の運転士たちは「一時間七本ぐらいだった電車の本数がふえ、落石などあっても速度を落とすことができない過密ダイヤが原因」と指摘した。
 JR九州では国鉄民営化後、「株式上場」をかかげて徹底した人べらし「合理化」をすすめ、不採算区間はワンマン化。もうかる区間は昼間は超過密ダイヤとし、夜中は貨物便を走らせ、保線作業の時間を削った。
 そうしたなかで深夜に保線労働者が感電死したり特急にはねられて死亡する事故も起きた。快速列車が緊急停止した普通列車に追突し77人負傷する事故も起きた。トンネルのコンクリートや列車部品落下事故、過労運転による停車駅通過ミスも多発した。こうした営利優先、乗客の安全も無視した過密ダイヤ、過密勤務はバスやタクシー、航空労働者なども共通の問題に直面している。それは「こんな状態なら日当3万円をもらってイラクにいった方がまし」と語られるほど生死のかかった問題として論議が広がっている。

 「規制緩和」で拍車
 この弱肉強食の血も涙もない競争社会は、アメリカの市場開放要求、規制緩和要求を政府が推進するなかで進行した。それは外資の参入を自由化し、独占資本集団の利潤拡大の自由を推進し、生産労働の安全、製品の社会的有用性といった企業の社会的責任など切って捨てて、社会をデタラメなものにしてきた。
 戦後世界を構成してきた米ソ二極構造が崩壊する1990年代に入ってアメリカは「自由・民主・人権」を叫んで、ソ連・東欧の社会主義国を転覆し、湾岸戦争を引き起こした。そして「社会主義の終焉」「資本主義の永遠の勝利」を叫んであらわれてきたのが、世界の独裁者としてのアメリカのふるまいだった。それは金融通信の優位をテコとした金融投機を中心にしたグローバル戦略のもとでアメリカ資本が「自由化・規制緩和」をかかげ、年金や健保、介護保険など社会保障的なもの、農漁業などや医療や福祉、教育などの公共的なものも企業のもうけ一本槍にし、安全基準など社会的規制をとり払い、各国の市場を力ずくでこじあけ支配することであった。
 イラクは反抗したため軍事力で転覆したが、日本の歴代政府は反抗するどころか対米盲従で「規制緩和・構造改革路線」で突っ走り小泉政府は「聖域なき構造改革」とまで叫んでいる。「公的事業の民営化」や「労働時間・解雇制限の緩和」などの「改革」で労働者はおびただしい倒産と失業、「合理化」にさらされた。自殺は数年連続して3万人をこし、昨年の死傷災害は全国で11万8000件をこえ、戦争と同じ状態にある。
 この労働者の困難は、一企業内で解決できるものではないのはだれが見ても当然である。その根源はアメリカのグローバル戦略であり、「日米安保」条約による植民地的な抑圧にほかならない。そのようなアメリカが日本の独占資本集団を従えて好き放題な支配をする根拠が、アフガンやイラクを爆撃して破壊したアメリカの軍事力、在日米軍である。
 したがって労働者の生活をよくし、労働者とその子弟をアメリカの戦争の肉弾にするのでなく平和を守るためにも、対米従属からの独立の課題、すなわち日米同盟に反対する課題が不可欠である。とりわけ労働者が、アメリカとそれに従う小泉政府の売国政治に反対する政治斗争を担うことがきわめて重要である。

  グローバル戦略に根元
 戦後日本の労働運動は、アメリカおよびその目下の同盟者となった独占資本集団と正面からたたかうときに、真に広大な大衆基盤を持った力のある斗争が発展し、政治的経済的な譲歩をさせてきた。その伝統は、戦後五年目の1950年、朝鮮戦争を開始し、レッドパージ、GHQによる総評結成による朝鮮戦争支持などのなかで、広島で突破された八・六平和斗争にあった。
 1950年に突破した原爆反対のたたかいは「戦争を終結させるためにやむをえない原爆投下」といった欺まんを暴き、真正面から日本を単独占領し戦後世界を支配するという目的のために眉ひとつ動かさずに数十万の無辜(こ)の人民を瞬時に殺したアメリカの原爆投下の犯罪を暴露し、大多数の広島市民の願いを代表して突破した。それがたちまちにして全国的、世界的な運動となった。
 このたたかいの中心を担ったのが中国地方の労働者だった。ここで白熱的に論議されたのは、日常斗争主義、経済主義は誤りであること、反帝反戦斗争、階級宣伝と国際連帯が労働運動の第一義的な任務であることだった。ここで突破した流れが60年安保斗争まで発展した。それは日本の独立・民主・平和・繁栄・民族文化の発展をめざす反米愛国の人民の統一戦線に立った斗争であった。
 だがそのような労働運動は、「安保」斗争後60年代、敵が労働者の政治斗争を弾圧し、また労働組合の幹部をアメリカに呼んで手なずけ、労働運動の内部から「高度経済成長」のおこぼれを自分だけが求める経済主義をふりまくなかで、アメリカの支配の枠内でわずかな改良を求める路線がまんえんしてきた。そしていまや労働運動をすっかり破壊するものとなった。
 今日労働者を困難にしている根源はアメリカのグローバル戦略でありそれを忠実に実行する日本の独占資本集団の規制緩和・自由化の構造改革路線である。それに対応した軍事面が有事法制化であり、対応した経済政策が、働いても「過労死」か「生活できない」状態に追いこんで、「日当3万円で死ねば1億円」でイラク戦争の肉弾にしようというものである。
 独立、民主、平和、繁栄の日本を実現するために、日本の労働運動をかつての1950年8・6斗争から60年安保斗争にいたる伝統を回復し、規制緩和・構造改革、イラク派兵とたたかう労働者の新鮮な力を結集することが切望されている。

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