福島第一原発の破局的な危機が進行している。使用済み燃料貯蔵プールの水がなくなり、大量の放射能が放出される危機である。そうなれば、敷地内は放射能まみれとなって立ち入り不可能となり、他の5基も操作不能の暴走状態となる。チェルノブイリ原発事故を上回る大惨事となりかねない。この危機に対する政府の対応は、まるで指導力がなく、統治能力を喪失している。万事アメリカ頼みできた売国政治が、国民の生命、安全を守る意志も能力も喪失した姿である。
現場では東電職員、下請企業の労働者、さらに消防隊員、警察官、自衛官が放射能まみれで命がけの対応をつづけている。現場で前面に立つべきは、読売の正力松太郎と中曽根康弘をはじめとする歴代の原子力を推進してきた自民党であり、それを継承して現在も推進の旗を振ってきた菅政府であり、原子力保安院など経産省官僚、東電ほか電力会社の経営者、テレビで緊張感のない解説をしている専門家、それ以上に原発をつくった原子力メーカーである。
沸騰水型原発はアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社の設計で、東芝などが下請でつくったものである。元元原発は、アメリカが第二次大戦中に原爆材料であるプルトニウムを生産する際、原子炉で発生する熱を発電に利用したことからはじまっている。それをアメリカのエネルギー戦略と核戦略の都合から日本に建設させた。GEは莫大な特許料を巻き上げ、大事な部分はブラック・ボックスでわからぬようにしてきた。その機械が大事故をしているのに、メンテナンス責任を持つメーカーが、前線に立って責任を果たすのではなく、知らぬ顔をしているのは異常なことである。
この原発の構造について、一番知悉しているのは開発し売りつけたアメリカである。さらにこの事故の進展について、日本からの情報に加えて、地上の人間の顔までわかるという高性能な偵察衛星や無人偵察機などを駆使して、日本の当局よりはるかに正確に把握していることは明らかである。そして大惨事を想定しながら、アメリカ大使館の西日本への移動をはかったり、在日米軍家族の国外退避をすすめたり、独自の判断で半径80㌔までの範囲で在日アメリカ人の退避を指示したりしている。聞こえるのは「愚かな日本人だ」というせせら笑いである。
さらに震災は日本経済に大打撃を与えているが、このなかで株価が乱高下し、円高が進行している。それはアメリカのヘッジファンドが投機を仕掛けているからである。売りを仕掛けて株価を下げ、下がったところで大量に買い占めるなどを繰り返して、日本企業の安値買い取りをやっている。強欲アメリカ金融資本は、未曾有の大災害を日本市場支配のチャンスとみなしている。それは規制全面撤廃のTPPで日本を支配するチャンスと見なしていることは明らかである。火事場泥棒のたぐいである。
この日本の危機は、大災害に泣き寝入りしてアメリカの蹂躙と無力な売国政府のもとに甘んじた哀れな民族になるのか、日本民族の底力を示すかが迫られている。東日本が大打撃を受けているのなら、西日本がそれを支えるのが必要である。被曝に苦しむ人たち、とくに影響の大きい東日本の子どもたちは、広島、長崎の直接の体験を持つ西日本が疎開を引き受けるなどが必要である。また食糧は外国から輸入するチャンスなどという商社発想ではなく、日本の食糧生産、農漁業は西日本が支えるという農漁民の役割が重要な課題になる。
東北が破壊されて困っているのは東京である。電気も食糧も水も来ないし、輸出企業も部品が集まらず仕事にならない。地方のおかげで大東京が成り立っているという当然の現実を認めて、東京に集まっている資金を地方に振り向けるのは当然のことである。金から物流から東京一極集中で全国ネットを組み立てていることから、東北の大災害は全国の経済に影響している。地方復権を基礎にした東京との関係をつくらなければ国は脆弱であることを示している。
東北の大地震・大津波災害と原発大災害は、戦後日本社会の売国亡国性という根本的な脆弱性を暴露しており、日本民族の独立精神の発揚が待ったなしであることを教えている。