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記録的な値上げの秋到来 生活直撃する食品や電気代上昇 まずは消費税を廃止せよ

 かつてない物価高が家計や企業活動に深刻な影響を与えている。昨年末ごろから上昇し始めていた物価は、ウクライナ情勢や円安の影響で今年に入って急激に上昇し、原材料費の高騰に耐えかねた企業が値上げに踏み切る動きが加速している。今秋は再値上げ、再々値上げも含む、記録的な値上げの秋になるといわれている。日本は20年以上にわたり実質賃金が右肩下がりという異常な状態が続いているところで、急激な物価の高騰は家計を直撃している。

 

 今月10日に日本銀行が発表した7月の国内企業物価指数(2020年平均=100、速報値)は114・5となり、過去最高を更新した。1年5カ月上がり続けていて、7月は前年同月比で8・6%上昇となった【グラフ参照】。4月の上昇率10・0%と比べるとわずかに上昇率は下がっているが、7月は1㌦139円台と24年ぶりの円安水準となったことも加わり、原材料費の高騰が続いている。

 

 日本国内では、非正規雇用の拡大とともに実質賃金の低下が20年にわたって続いており、安い賃金に見合った価格設定でなければ売れないデフレ状態にある。とくに食品は流通事業者の力が強くなり、生産者側はコストを下げるために原材料を輸入に頼っており、円安の影響は甚大だ。

 

 こうしたなか物価高倒産が急増している。帝国データバンクの調査によると、1~7月で116件(2018年1月~2022年7月までの累計は558件)に達しており、過去5年で最多だった2021年(138件)を大幅に上回るペースで進んでいる。燃料高騰の影響が大きい運輸業(33件)が全体の3割を占めたほか、木材・資材価格の上昇の影響を受けた建設業(27件)などが目立つ。物価高倒産の約8割が負債5億円未満の中小企業だ。

 

 7月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理)は499件となり、3カ月連続で前年同月比を上回った。これまでコロナ融資などの支援策で倒産件数は抑制されてきたが、いよいよ支援策が切れ、収益力が回復しないまま借入金の返済が始まっている。そこに襲いかかった物価高が経営体力の弱まった中小企業の倒産を加速させており、今年後半にかけてさらに増加していく趨勢だ。

 

 この企業が置かれた状況が「価格転嫁」という形で消費者の家計に押し寄せている。7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比を2・4%上回り、11カ月連続で上昇している。エネルギー価格は電気代が19・6%、ガス代が18・8%アップ。食料品は3・7%の上昇だが、うち食用油は40・3%、食パンが12・6%上昇などとなっている。

 

食品の値上げ 10月は6305品目

 

値上がりを続ける食料品

 食品は、今年1年間で値上げが2万品目をこえると見込まれている。帝国データバンクが食品の主要メーカー105社に対して実施した調査(7月末集計)では、1~7月までに累計で1万8532品目が値上げされており、8月は2431品目と単月で初めて2000品目をこえた。秋以降はさらに加速し、10月には6305品目と年内最多の値上げ計画が明らかになっている。平均の値上げ率は14%と、6月末の調査時から上昇しており、値上げ幅も拡大していることがうかがえる。分野別に見ると、

 

・加工食品…7794品目(9月以降2334品目)、値上げ率平均16%
・調味料…4350品目(同2601品目)、値上げ率平均14%
・酒類・飲料 3732品目(同2753品目)、値上げ率平均15%
・菓子…1192品目(同257品目)、値上げ率平均13%
・原材料(製粉など)…526品目(同37品目)、値上げ率平均13%

 

 となっており、水産加工品やハム・ソーセージ、冷凍食品などの加工食品が群を抜いて多い。調味料ではだし製品など水産品関連の値上げがあいついでいることに加え、年内に砂糖や食用油が複数回値上げされたことを背景に、マヨネーズ製品などでの値上げが顕著だったとしている。食品だけで平均14%上がるというのだから、一つ一つは数十円でも家計に与えるインパクトは大きい。

 

値上げ目白押し 調味料や清涼飲料、酒

 

 9月、10月には8000品目近くの商品が値上がりする予定だ。
 9月はヱスビー食品がレトルト製品59品目(平均5・0%)やインスタント麺製品5品目(平均9・7%)を値上げするほか、マルハニチロがアサリやツナ、ホタテなどの缶詰25品目を5~25%、フィッシュソーセージやちくわなど練り製品44品目を5~20%値上げする。はごろもフーズもシーチキンを5・7%から6%値上げ。チーズや納豆商品、カレールーやパスタソース、バターやマーガリンも値上げだ。

 

 10月には調味料やマヨネーズ類も値上がりが控えている。宝酒造がタカラ本みりん(1㍑ペット)を約11%、キッコーマンは焼き肉のたれなど34品目を5~10%、本みりんなど調味料41品目を4~11%値上げ。マヨネーズ類や関連商品を見ると味の素は4~15%、キューピーは2~20%、ケンコーマヨネーズは1~30%など値上げ幅も大きい。

 

 また、伊藤ハムは家庭用のハム・ソーセージ110品目と家庭用調理加工食品51品目を3~30%、日本ハムもシャウエッセンなどハム・ソーセージ78品目やハンバーグなど加工食品125品目を2~34%値上げする。丸大ハムも300品目超の値上げを予定している。

 

 10月の品目数を押し上げているのが清涼飲料水の一斉値上げだ。サントリーがペットボトル飲料を20円値上げするほか、キリンビバレッジは「午後の紅茶」「生茶」「キリンレモン」などペットボトルとボトル缶127品目を6~25%値上げ。ネスレ日本も飲料製品で9~27%など、各社が軒並み値上げする予定だ。ビールやチューハイ、日本酒や焼酎も5~10%程度上がる。

 

 かまぼこなど練り製品を販売している商店主は、「今年3~4月にも値上げがあったが、9月1日入荷分から値上げすると、いくつかの仕入れ先から通告が来ている」と話した。500円で販売していた地元メーカーの袋入り竹輪は九月から600円に値上げせざるを得ない状況だという。かまぼこなども50円、100円と値上がりしている。「抱き合わせで値下げするなど必死で販売しているのに、値上げせざるを得なくなる。地元メーカーはこれまで値上げを控えてきたのもあるが、原材料の輸入すり身が大幅に上がっていて、包装資材、運送費、光熱費などを入れたら持たなくなったのだろう。国の支援策もなにもなく、非常に苦しい状況だ」といった。

 

 同じくかまぼこや佃煮などの食品を販売する商店主は、「10、20円の値上げが多いが、200円ほどの卵豆腐は50円上がると連絡が来た。卵やビニール関係、輸送費などが上がっているからだという。250円になると買うお客はいないので、顧客にはもう仕入れないと連絡した。ほかにも仕入れをやめたものがある」と話した。

 

 食品以外の分野でも資材の値上げや卸価格の値上げ通知があいつぐ。
 ある理容店には10月からタオルの値上げ通知が届いた。タオルは理美容の必需品。かつては年に一度、すべてを新しいものに買い換えていたが、客数が減少している最近は節約している。それが、220匁(もんめ)12枚で2600円だったのが3900円に、250匁12枚は2800円から4110円に、といった具合に40~50%値上がりするという。

 

 時計店の店主が直面しているのは掛け時計の値上がりだ。この店では5000円程度の商品が一番売れ筋だったが、メーカーが最低価格を7000円程度まで引き上げた。同じような商品を5000円程度で仕入れるルートを探したが難しそうだ。顧客は年金暮らしの高齢者が多いので、2000円も値上がりすると買うことが難しくなる。

 

 消費者と顔を合わせて販売する商店主たちに聞くと「価格転嫁するのは難しい」という声が多い。「政府は国葬で2億5000万円使うというが、やめてほしい。何度も葬儀をせずに、その金をコロナで困っている飲食店に回してほしいし、これだけ物価が上がっているのだから消費税をやめてほしい。そうすれば買い物をする人も出てくるのではないか」「客が来ないので商品を捨てる場合もあり、いつまでやっていけるだろうかと気持ちが暗くなる。政府は私たちのような状態をどうにかしようとはまったく思っていない。消費税は廃止してほしい」など、切実な思いが語られている。

 

電気・ガス代値上げ 事業者や家計を直撃

 

 家計や事業経営などすべてに関わるあらゆるエネルギーコストが高騰している。なかでも目を引くのは電気代だ。この間の電気料金高騰のおもな原因は、日本の発電電力量の70%以上を占める火力発電の燃料となる石炭やLNG(液化天然ガス)の輸入価格が高騰しているためだ。

 

 電気代には基本料金(最低料金)があり、そこに電力量料金や「燃料費調整額」、再エネ賦課金が加算されて全体の料金が決まる。電気料金のなかでここ最近値上がりしているのが燃料費調整額だ。発電に必要な燃料の価格変動を電力量料金に反映させるためのもので、昨年1月から少しずつ増額へと傾いてきた。

 

 日本国内の電力大手10社は、昨年から毎月のように電気料金を値上げしてきた。そのため燃料費の値上がり分を電気料金に転嫁できる金額の上限を設けた「燃料費調整制度」において、すでに全社が上限に達している。大手電力はこれ以上値上げができないなかで高い燃料費を払って発電しているため大幅に利益が落ち込んでおり、今年4~6月期の最終損益は大手10社中7社が赤字となった。

 

 電力大手がさらなる抜本的な値上げをおこなうには国への申請が必要となる。だが現時点で経産省が早期値上げに向けて動くことは難しいと見られている。それでも毎月のようにニュースで「電気代値上げ」がとりざたされているのは、2016年の電力自由化以後各社がもうけている「自由料金」プランの値上げが続いているためだ。電気料金には「規制料金」と「自由料金」があり、規制料金は電力大手各社が燃料費調整制度の上限に達しているため値上げができない。しかし自由料金は各社が独自にプランをもうけているため、もともと値上げ上限がなかったり、独自に上限を撤廃することができる。

 

 中国電力は、すでに今年3月分の電気料金から燃料費調整制度の上限に達しているため、規制料金の値上げはできない。しかし、自由料金に関してはもとから上限をもうけていないため、毎月のように値上がりしている。

 

 中国電力の9月の電気料金は、家庭向けの低圧自由料金プランで一般的な家庭の使用量(260㌔㍗)の場合、8月分よりも634円値上がりしている。中国電力の同プランの値上げは19カ月連続で、一般的な家庭の使用量での九月分の料金は9605円となり、昨年9月の7087円から1年間で36%も上昇している。このまま発電燃料の高止まりが続けば今以上に電気料金が値上がりし、家計や事業経営にとって大きな打撃となることも危惧されている。

 

 30代の女性Aさん(3人家族)の1年間の電気代の推移を見せてもらうと、昨年7月に約9000円だったものが、今年7月は1万5000円をこえていて、およそ6000円値上がりしていた【表参照】。この3年、コロナ禍で自宅時間が増え、どの家庭もただでさえ光熱水道費の上昇に悩まされてきたところだ。

 

 電気料金が上がり続けるなかで迎えた今年の夏、生鮮食料品を扱う店舗では商品の品質を維持するための冷蔵・冷凍設備や、店内の冷房設備の使用が増えるため、電気料金の負担はいっそう増えている。下関市の唐戸市場のある商店主は、7月分の電気代が2万円をこえたという。店主は「六月分までは8000円くらいで他の月もだいたいそれくらいの料金だったのに、突然2万円もの請求が来たのでびっくりした。商品の品質や店員の体調のために冷風機を店内に置いて涼しくしているが、それは毎年のことだ。特別電気を多く使っているわけでもないのに…」と驚いていた。

 

 市場の別の店主も、店内で使う電気代と冷房に使われているガス代を合わせた料金が6月分までは2万円台だったが、7月分から突然4万円台にまで値上がりしていたという。

 

 市内の鮮魚店主も今年の夏は例年よりも経費負担が増えているという。店主は「毎年夏場は魚が少なくなるため、仕入れ価格も割高になる。一方で暑さから魚の鮮度を守るために氷をよく使うし、冷蔵・冷凍設備にかかる電気代も高くなる。もともと夏場の鮮魚販売は“赤字にならなければ御の字”といわれるほど厳しい時期だ。しかし今年は例年以上にコストがかかっている。夏は氷、電気、水道代だけで月15万円くらいかかるが、1~2割くらいは例年よりも高くなっている。おまけに今年は梅雨明けから魚が少なく相場も高い。それでも簡単に販売価格は上げられないので、もうけは少ない。店を閉めて休んでいた方がマシだ」と話していた。

 

 エネルギーコストの高騰の波は、市民の健康を預かる医療現場にも押し寄せている。ある病院ではカテーテルや点滴バッグ、手袋などビニール製品全般の医療資材が値上がりしているが、もっとも大幅に値上がりしているのが電気代だという。

 

 この病院の系列の介護施設では、電気料金の契約が原油価格に連動するタイプだったため、原油価格の高騰によって電気代が急騰しているという。この施設では、通常なら冷房を使う夏場でも1カ月の電気代は30万~40万円ほどだったが、今年もっとも高かった時期には1カ月で100万円をこえたこともあったという。

 

 別の施設では、地元の銀行が勧めていた新電力と契約していた。しかし今年に入り、その新電力会社が発電燃料の高騰で経営が困難になったため撤退した。突然電力供給が途絶える事態となったが、入所者がいるため電気が途絶えたままというわけにはいかない。結局中電ネットワークの「電気最終保障供給」に駆け込んだが、これまでよりも2割高い契約を結ばざるを得なかった。

 

 最終保障供給とは、小売り電気事業者の事業撤退や倒産によって契約切り替えをよぎなくされた電力利用者のために一時的に大手電力会社が電力供給をおこなうセーフティーネットだ。だがこの料金はもとの契約の標準メニューよりも2割ほど割高に設定されている。そして現在、新電力の倒産によって全国的に最終保障供給に駆け込む企業や事業者が増えており、大手電力の負担も増えているなかで、最終保障供給料金の値上げも増えている。中国電力も9月1日以降に使用する電力量について、最終保障供給料金の値上げを発表しており、契約者に対して値上げが通知されている。

 

第一次産業 コスト上がり農産物価格は下落

 

 日本国内で食料生産を支える一次産業の現場でも、飼料や肥料、燃料費などが軒並み高騰しているため、生産費負担が大幅に増えている。その反面、農産物などの生産品の価格は下落しており、生産者の経営状況はますます厳しくなっている【グラフ参照】。

 

 農水省がまとめている「農業物価指数」を見てみると、直近の今年6月時点の指標で、資材価格は2020年を100とした指数は前年同月より8・5%上がって115だった。

 

 資材費指数の内訳を見てみると、
 肥料…128・3
 飼料…132・1
 高熱動力…128・4
 建築資材…134・4
 などとなっており、農業生産資材費は軒並み高騰している。

 

 一方、農産物価格の指数は前年同月比5・3%低下して99だった。一年前に比べて米や畜産物、果実などの価格が低下したことが原因だ。
 こうして生産費だけが増え、収入は昨年以上に落ち込むという厳しい状況だ。

 

 この間、農業生産にかかわる資材費でとくに値上がりしているのが畜産業コストの大部分を占める輸入飼料代だ。世界的なコロナショックからの経済回復のもとでの需要増や、ウクライナ情勢、海上運賃の高騰、大幅な円安などが重なって輸入飼料価格が高騰し続け、高止まりしている。

 

 配合飼料価格(工場渡価格・全蓄種平均)を見てみると、2020年末に1㌧当り約6万5000円台だったものが、今年7月には約10万円にまで値上がりした。配合飼料の価格高騰に対しては、1年前の価格を基準として飼料の値上がり分を基金から補填する「配合飼料価格安定制度」がある。しかしこれだけ値上がりが続けば、基金補填の基準となる1年前の価格がすでに割高になっているため、農家の実質負担分は格段に増えている。

 

 さらに輸入乾牧草の価格(通関価格)も2020年末に1㌧当り約4万円だったものが今年6月には5万8000円にまで値上がりした。輸入乾牧草に関しては輸入価格が値上がりしても補填制度はないため、直接農家経営を圧迫している。

 

 これほど畜産農家の生産コスト負担が増えているにもかかわらず、生産品の価格は上がらない。肉用子牛の価格推移をめぐる農畜産業振興機構の調べによると、黒毛和種子牛の雌雄平均価格は今年7月時点で一頭当り64万円。昨年7月時点の一頭当り74万2000円から、この1年で約14%も値下がりした。

 

 その他の肉用子牛の年度別平均価格を見ても、7月時点での前年度比は褐色和種14・8%値下げ、ホルスタイン種15・9%値下げ、交雑種(F1)11・1%値下げとなっている。

 

 子牛価格下落の原因は、子牛の購買者である肥育農家の先行き不安が大きく作用しているためだといわれている。肥育農家は購入した子牛にエサをやって肉用牛として出荷するが、生産コストの大部分を占める飼料がかつてなく高騰して経営が厳しくなっており、業界全体で不安感が高まっている。

 

 肉用に限らず、牛乳を生産する酪農業界も生産コストの上昇に見合った乳価とはほど遠い状況となっている。生乳価格は、2019年4月に1㌔当り4円値上げされたが、それ以降は現在に至るまで3年連続据え置きだ。そのなかでも飼料価格は上がり続けている。

 

減税や給付など 実効性ある対応急げ

 

 事業者や家計に深刻な影響を与えている物価高騰。今春時点で、1年間の物価上昇にともなう家計負担は年収400万~500万円世帯で月6000円、年間7万円程度になるとの試算もなされている。食料品や日用品の支出割合の高い低所得世帯ほど負担は大きく、「ひとり親支援協会」(大阪市)が全国のひとり親世帯を対象に実施した調査では、9割以上が物価高騰による生活苦を感じており、食事の回数を減らさなければ家計が回らないなど、厳しい状況を訴える回答が寄せられている。

 

 岸田政府は物価高騰対策に最優先でとりくむなどとしているが、これまでにしてきたことといえば、原油高騰が顕著となった1月から、「燃料油価格激変緩和補助金」として石油元売りに補助金を支出している(予算総額1兆9000億円)ほか、電力各社の節電プログラムに参加した家庭に2000円分のポイントを支給する施策(予備費から1800億円を支出)、農家の肥料価格上昇分の7割を補填(化学肥料の使用量を2年間で2割以上削減することにとりくむことが条件。予備費から800億円程度を支出)する施策をうち出しているくらいだ。地方創生臨時交付金で各自治体が給食費の負担軽減や生産者への燃油高騰分の補助などの施策を実施しているものの、現状に見合った対策がなされているとはいえない。

 

 9月上旬までに追加の物価軽減策をとりまとめる予定で、今月15日には「物価・賃金・生活総合対策本部」が開かれた。そこで「経済は生き物だ。切れ目なく大胆な対策を講じていく」といった岸田首相だが、うち出されたのは、輸入小麦の売り渡し価格の据え置きだ。すでに今年四月の17・3%引き上げで過去2番目の高水準となっている価格を据え置くだけで、「家計負担軽減」効果はなきに等しい対策といえる。そのほかにはガソリン補助金の延長と、地方創生臨時交付金1兆円の上乗せだ。

 

 この期に及んでも減税や給付などは検討の俎上にものぼらないまま、免税事業者から消費税をとりたてるインボイス制度導入の準備も進んでいる。日銀ですら、現在の物価上昇は賃金の上昇をともなう正常なものではないとの認識を示している。世界各国でも消費税を減税する動きは広がっており、事業者や家計を直接救済する減税や給付など、実効性のある支援策が急務となっている。

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