米空軍の特殊作戦司令部は8月16日から、所属するCV22オスプレイ全52機の飛行を停止し、世界中に配備している全機に地上待機を命じている。機体の不具合があいついでいるためだ。今回の措置は空軍だけにとどめられているものの、海兵隊仕様で国内各地の在日米軍基地で運用されているMV22オスプレイも同様の問題が以前から指摘されている。2016年には沖縄普天間基地所属のMV22オスプレイが名護市沿岸で墜落する事故も起きているが、在日米軍基地では現在も運用が続けられている。
欠陥機を日本上空で飛ばす異常
今回、CV22オスプレイをめぐって問題となっているのは、2つあるエンジンのうちの1つと、ローターを繋ぐ「クラッチ」が噛み合わなくなる不具合があいついでいることだ。米空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)の説明では、クラッチが繋がらない場合、もう一つのエンジンから動力を伝達する設計になっているが、操縦士はただちに着陸を余儀なくされ、そのさい「機体を制御できない場合がある」とされており、米空軍も墜落の可能性を認めている。
そしてこの不具合は2017年以降4件起きているが、そのうち2件は直近6週間以内に発生している。日本国内では東京の横田基地に配備されている6機配備が全機地上待機となった。
横田基地以外の在日米軍基地でもCV22は運用されており、今年7月には嘉手納基地に所属する空中給油機MC130と一緒にCV22が岩国基地付近で空中給油を実施していたことが確認されている。
今回問題になっているのは米空軍所属のCV22だが、米軍普天間基地に所属し、岩国基地(山口県)などでも運用されている海兵隊仕様のMV22もクラッチの不具合が以前から確認されている。クラッチの不具合は2010年以降15件発生しているが、そのうち10件はMV22で起きており、空軍仕様のCV22よりも多い。今年に入ってからMV22の事故は世界であいついでおり、3月のノルウェーでの墜落事故では乗組員4人が死亡。6月にも米カリフォルニア州南部の砂漠で墜落し、乗組員5人が死亡している。
深刻な事故があいついでいるにもかかわらず、MV22が24機配備されている普天間基地(沖縄県)では現在も飛行停止等の措置はとられていない。
また、オスプレイは陸上自衛隊に17機配備する計画も進められており、現在陸自木更津駐屯地(千葉県)に9機を暫定配備している。なお、今回の事態を受けて空自もオスプレイの飛行を一時停止している。
日本への陸揚げ拠点は米軍岩国基地であり、今月末から9月上旬までの間に新たに2機を陸揚げする予定となっている。オスプレイの点検や飛行試験をおこなうのは岩国基地であり、この間もオスプレイが岩国上空を飛行する様子が何度も確認されてきた。米空軍みずから全機の地上待機を命じるほど重大な欠陥が明らかになっているにもかかわらず、同機の陸自配備や在日米軍基地での運用拡大が進められようとしている。