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秋山、参院選に出るってよ(棒読み)

 下関市及び山口県は政治的な節操などない地域なのだろうか。この夏の参院選に、立憲民主党が安倍事務所の元私設秘書である秋山某を擁立すると発表し、いったい何事かと事情がわからない全国の人々をざわつかせている。

 

 秋山某については、地元では「安倍事務所に捨てられた秘書」という見方が一般的である。20代の若い頃から安倍事務所の秘書として尽くし、その後、2000年代に小泉チルドレンとして政界にあらわれた西川京子の事務所に飛ばされたものの、最終的には「いらない」といって安倍事務所に戻されそうになり、その際に安倍事務所も「うちもいらない」といって切られた――が安倍派関係者たちの説明である。そうして私設秘書という仕事を失い、働き盛りの40代になって他に潰しがきかないというのも残酷なもので、ある意味、厄介払いした安倍事務所の無慈悲さを感じさせる話でもある。

 

 そんな秋山某がどうして山口県の野党統一候補として参院選に出馬するまでになったのか? いったいどんな紆余曲折があったのか? である。安倍事務所との決別は、まず2017年の市長選と同時に実施された市議会議員補欠選挙で顕在化した。市長選では安倍派の前田晋太郎と林派の中尾友昭がバチバチの代理戦争をくり広げ、市議補選では安倍派が星出を担ぎ上げたなかで、秋山は林派・中尾陣営の応援を頼りに林派に与してデビュー戦を飾ることになった。そして、いずれの選挙も安倍派が勝利をおさめ、林派は敗北した。

 

 続いて、2019年の市議会議員選挙にも立候補したものの、1000票そこら(当選ラインは1700票台だった)でまるで太刀打ちいかなかった。山の田地域を地盤にした市議会議員は多いなかで、組織票がバックにないことが秋山にとって難点であることが得票数からも伺えた。安倍事務所の元秘書という肩書きがあるとはいえ、その安倍事務所から見離されている状況について安倍派企業その他はみんな熟知しているし、「○○病院グループの○○○票」等々のまとまった票をもらえるわけでもないのが現実なのだろう。他の安倍派の若造たちが安倍事務所に組織票を割り振ってもらえるのと比べても、それは傍から見ていて可哀想なものでもあった。補欠選でタッグを組んだ林派すら世話していないのが歴然としていたのだ。

 

 そうして、政界渡り鳥になっていたのを拾い食いするように囲い込んだのが立憲なのだろう。立憲としては2019年の市議選で東城某を丸抱えして当選させたが、1年もしないうちにこれが離党して、あろうことか自民党最大会派の仲間入りを果たすという「転向」をやってのけた。これまた政治的節操などあったものではないが、おかげで市議会の市民連合(連合関係者で構成する会派)は会派消滅に追い込まれ、立憲としては来年2月に迫る市議選で新たな候補者を担ぎ出さなければ格好がつかないという事情を抱えている。

 

 そこで白羽の矢が立ったのが、宙ぶらりんになっていた秋山なのだろう。勝つ気もないのになぜ参院選に擁立するのかというと、夏の国政選挙で名前を売って、本命はその半年後に迫る下関市議選なのだと、大方の下関の事情通たちは眺めているのである。従って、参院選については江島を倒すために擁立したというより、無投票にして野党として格好がつかないよりは、アリバイ的に誰か出しておけくらいの熱量であり、はっきりいってその程度なのである。

 

 安倍事務所の元私設秘書が立憲民主党から立候補――。これだけ見れば確かにインパクト大で、古巣に対抗して勇気を振り絞ってたたかいに挑んだかのような印象を抱く人がいてもおかしくない。ただ、地元で秋山某が安倍事務所の暗部について暴露したことなど一度も聞いたことはないし、恐らく市議になれるなら何党でも構わないのだろう。節操のない「立憲の拾い食い」について、「アイツらまた東城のときみたく食あたりを起こさなければいいけどね…」と話題にしている関係者も少なくない。役者不足とはいえ、深く考えるでもなく、なんでもかんでもすぐに拾って口に入れるのは悪い癖だと――。

 

吉田充春          

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