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「米国の狙いはロシアの政権交代」 オリバー・ストーン監督が語るウクライナ問題

 『JFK』『ニクソン』『ウォール街』『スノーデン』など数々の社会派映画で知られる米国の映画監督オリバー・ストーン氏が12日、インターネット討論番組「PBD Podcast」に出演し、現在のウクライナ情勢について自身の見解をのべた。ウクライナ問題を客観的に捉えるための材料として紹介する。

 

 ストーン監督は、「残念ながら現在のアメリカのすべてのメディア報道は一方的なものであり、反対側(ロシア側)からは何も得ようとしない。公平なキャンペーンをしていたRT(ロシア発の国際放送局)さえも放送禁止にし、実際に起きていることさえも偽情報として眼に触れさせないようにしている」と指摘。

 

 「実際に2014年からウクライナ東部のドンバス地域では、ウクライナ軍によって住民が犠牲にされ、とくにネオナチ(ナチズムに由来する極右民族主義)の武装集団が彼らを血まみれにし、ロシア系住民1万6000人が殺されたと推定されている。これはプーチンを挑発するためのもので、アメリカが代理としてウクライナ政府にやらせているというのが真実だ。彼らはウクライナのことなど本当は何も気にしていない。彼らが気にしているのはロシアだ。この危機はロシアを不安定にするチャンスであり、国のトップをすげ替えるレジームチェンジ(政権交代)をやってのけることができれば、これは彼らの大勝利となる。最初からウクライナの人々への懸念などない。“今日も殺された”“今日も殺された”と毎日報じているメディアは、反対側(東部)でウクライナ軍によって殺された人々については5年も6年も言及すらしてこなかった」とのべた。

 

 またストーン監督は、2015~2017年におこなったプーチン大統領との30時間におよぶ対談をまとめたドキュメンタリー映画『プーチン インタビュー(邦題オリバー・ストーン オン プーチン)』(2017年公開、約4時間)の内容に触れ、概略次のようにのべた。

 

*       *

 

オリバー・ストーン監督

 映画のなかでプーチンは、現在のウクライナ問題に対する重要な事実を、彼の視点から語っている。2014年のマイダン革命(ヤヌコヴィッチ政権を転覆したクーデター。騒乱のなかで市民や警官数十~100人が死亡)で、誰が誰を撃ったのかについても。あの銃弾は親ロシア派や警察ではなく、反政府側の抗議者たちが占拠したビル内から撃たれたものだった。

 

 群衆に向かって発砲していたのはスナイパー(狙撃手)であり、警察と抗議者の群衆との両方を殺しているのだ。同じ頃ベネズエラで起きたことと同じく、それがCIA(米中央情報局)による「カラー革命」のテクニックだ。暴力によって誰かが誰かを殺す構図をつくりあげ、実際は両方が殺され、そこに騒乱が生まれる。警察も抗議者もたくさん殺されたのに調査もされていないのだ。

 

 建物から狙撃していたのは、西ウクライナからキエフに来たネオナチといわれ、おそらくそうだろうが、海外から送り込まれた傭兵の可能性も否定できない。暴力シーンを創出し、「チェンジしなければ!」というムードを煽り、不法に大統領を国外に追放した。そして選挙はおこなわず、暫定的な政権を据えた。当時、米国ネオコン(新保守主義)のリーダーであるビクトリア・ヌーランド国務次官補と駐ウクライナ米国大使との電話記録が公開されており、法的手順を踏んで大統領を選ぶべきだというEUについて、ヌーランドは「EUくそったれ!」と吐いていた。フランスとスイス、さらにドイツが、大統領選を前倒しするなど民主主義的な手続きを重視していたが、暴力による混乱のなかでそれはおこなわれなかった。

 

 ネオナチは一般の人が考えるより、現在のウクライナ国内ではるかに強い権力を持っている。アメリカは「ゼレンスキーはユダヤ人だから、ネオナチと結託することはあり得ない」という理由でそれを否定するが、それは馬鹿げたことだ。ネオナチはゼレンスキーが出てくるずっと前から存在している。ゼレンスキーには何の力もない。彼が大統領になったときには、ネオナチが大統領に指示を出す関係だ。「あなたにウクライナの政治を変えることはできない。アメリカとネオナチが何をすべきかを指示する」と。もっとも腹立たしいのは、ウクライナにおけるネオナチの横行をアメリカが容認しているということだ。

 

 NATOの拡大によってロシアは壁を背にして追い詰められている状況にあり、さらにNATOはロシアをとり囲むように攻撃的な弾道ミサイルを配置した。バルト海を非常に攻撃的にし、スウェーデンやフィンランドまで引き込み、ポーランドやルーマニアにも弾道ミサイル迎撃システムを持たせた。そして彼らはみんな核兵器を共有しており、5分もかからずにモスクワを破壊できるのだ。

 

 ロシアが窒息するなかで、プーチンはどうするか? 彼には戦争を起こすことも、やり返すこともできる。ロシアは荒削りなものであっても巨大な核兵器を持ち、超音速ミサイルのような最新鋭兵器も持っている。だが誰がこんな戦争を望むだろうか? 誰も望んでいない。世界にとって意味のある戦争でもない。だが、なんの理由もなく始まった戦争ではない。プーチンを壁に押しつけてきた側が得たいのは、ロシアのレジームチェンジだ。そして、1990年代のエリツィンのようにアメリカにとって都合のいい大統領を招聘(へい)する。あの当時のようにロシア国内で共食いさせ、その資源をアメリカが搾取できるようにすることが目的なのだ。

 

関連:ドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイヤー』 監督 オリバー・ストーン

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この記事へのコメント

  1. 白川優親 says:

    とても参考になりますありがとうございます。

  2. 篠崎泰彦 says:

    Facebookでシェアします。
    今信頼できる日本のメディアは貴紙のみという惨状です。
    さらなるご奮闘を期待しています。

  3. 京都のジロ- says:

    AmazonPrimeでドキュメンタリー映画『オリバー・ストーン オン プーチン』みました。プーチンの人柄がよく分かる秀作です。米国の横暴,傲慢さに忍耐強く辛抱している様子が会話の中で滲みでてきます。礼儀と相手を思いやる紳士的な面もあります。日本では朝から晩までロシア叩きのテレビ放映が多いですが、洗脳される前にプーチンの人柄に触れるのはヒ-トアップした頭を冷すのにお薦めです。

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