オミクロン株の感染爆発とともに2022年は幕を開けた。島国という疫病封じ込めには有利な環境にありながら、昨年来からの水際対策といっても引き続き空港検疫では抗原検査のみでPCR検査が徹底されるわけではなかった。そうして、ズルズルと国内への変異株流入を招いてしまったが、案の定、年末年始の人々の移動と共に第六波が広がりを見せ始めた。コロナ禍も早2年、遠く離れて暮らす家族に今年こそは会いたい、辛抱も限界を迎えたという気持ちもわからなくもない。昨年秋口以後の収束もあってか、心理的な緩みも災いして今年の年末年始は相当数が帰省等で全国に散らばっており、まさに最悪のタイミングが重なったといえる。昨年の今頃より明らかに緊張感は薄れていたし、下関のような地方都市においても年末年始のスポット的な人流は紛れもなく増えていたのだった。
オミクロン株の変異の特徴や病原性については、科学者をしてまだまだ未解明な部分も多い。各国の事例から「感染力は強いが重症化リスクは低いようだ」といっても手放しで安心できるものでもなく、やはりこれまで同様に感染者の隔離・保護、手洗い消毒、密の回避といった感染対策を施すほかないのだろう。ワクチン接種を進める国々では3回目、4回目の接種が取り沙汰され、その効力がさほど長持ちせず抗体が落ちていることも明らかになるなど、ワクチン頼みだけでもどうにもならないことが浮き彫りになっている。ある意味実験のようなコロナ対応ではあるが、絶対とされるものなど何もなく、結果から何がいえるのか、いえないのかを峻別しながら科学的にアプローチしていくほかないのだ。過剰に恐れる必要もないが、かといってノーマスクで「ただの風邪だぜ!」なんていきがるのもまた違う。本当に世界中に安心できる状況がもたらされるまでは、科学的知見に依拠しながら、疫病対策を的確に実施していく以外にないのだ。
さて、オミクロン株への対応策として、岸田政府は感染者全員を入院治療させるとしていた方針を翻して、感染が急拡大している地域では全員入院を見直し、宿泊施設や自宅療養を認める考えを発表した。オミクロン株の感染力の強さからして陽性者全員の入院や濃厚接触者全員の宿泊施設での待機という現在の手法には確かに限界性もあるが、市中感染が広がるなかで要するに第五波と同じような「自宅療養」という名の実質放置もあり得るというのである。この4カ月間、専門家曰く第六波は必ず到来すると指摘していたなかで、国としてはいったい何をしていたのか? である。空港検疫は抗原検査でユルユル、医療体制は特に強化されたわけでもなく、理由はわからないけれどデルタ株が収束したことにホッとしていただけだったのではないか? そうして、感染拡大の局面を迎える度に「たいへんだ~!」のサイレンだけ鳴らしてPCR検査もまともにやらず、あぶれた感染者を自宅療養の刑に処すとは、為政者としてはいったい国民の生命をなんだと思っているのかである。
デルタ株よりも感染力がはるかに強いといわれるオミクロン株である。東京五輪にうつつを抜かしていた第五波の阿鼻叫喚だけは避けなければならず、検査、保護・隔離、治療の体制を強化し、ウイルスに対するガードを高めることが急がれる。オミクロン株が弱毒化していて「たいしたことはなかったね」「過剰に心配し過ぎたね」といって鼻で笑うのは、本当に「たいしたことはなかった」といえる結果が出てからでよく、対疫病への備えとしては十分過ぎるにこしたことはない。
武蔵坊五郎