二井県政・水産部は、県1漁協合併計画に便乗して、原発という大きな問題を抱える上関の関係漁協に加え、これまで特例として除外してきた祝島漁協も合併対象とした。これは漁協解散、漁業破壊に反対して大規模に立ち上がっている全県とくに内海漁民の重大な関心を呼んでいる。内海漁民は長年、上関原発について発言権を奪われ、行動を押さえられてきたが、それは信漁連再建問題が大きな重しとなってきた。いまその抑えをとっぱらって、漁業を守る力が全県で吹き上がっている。それは県一漁協計画に反対するだけではなく、内海漁業を壊滅させる上関原発を撤回させ、上関の漁民とともに漁業を守ろうという大きな行動が表面化しようとしている。祝島漁協の総会が、29日予定の多くの漁協の総会に先駆けて26日に予定されているが、合併・漁協解散となるなら23年の原発反対の苦労は水の泡になると同時に全県の漁民を落胆させることになり、拒否となれば合併問題とともに原発問題でも全県漁民団結の勝利の局面を開くことになる。祝島、上関関係漁協の合併問題総会は、原発問題23年の重大局面であり、その動向はとりわけ注目に値する。
内海漁業守る重大局面
注目される祝島で20日、夕方から組合員を集めて、県1漁協合併についての説明会が開かれた。合併による具体的な漁協経営にかんする数字についてはほとんど出されず、山戸貞夫組合長は、「合併もしたくないが、除名もされたくない」「裁判が終わりしだい合流したい」とのべた。柳井水産事務所職員と、県漁連職員が同席した。祝島では原発反対世論は根強く、下手な真似は許さない緊張した空気が漂っている。
山口県内でも、とりわけ瀬戸内海側の漁協関係者のなかでは、今回の合併問題をめぐって、突如参加漁協の枠組みに入れられた祝島漁協の動向に大きな関心が寄せられている。祝島が合併参加なら、実質の漁業権放棄を認めたも同然で、上関原発問題は強行して走り出すと見ているからである。
瀬戸内海側の某組合長は、「山戸は永岡(県漁連会長)とのあいだで勝手に“いずれ合流する”というような約束をしていたというが、そんなことは組合長がいえることではない。組合員が判断することだ。協同組合精神でうたった民主主義が逆さまになっているのではないか」と、油代が県下一高いことと合わせてあきれていた。「20年以上も反対してきたのが水の泡になって、海域は中電に好き放題にされるということだ。祝島の漁師が泣く目にあうのもほうっておけない気持ちになるが、瀬戸内海漁業は終わりになるという問題であって、わたしたちにとっても人ごとではない。応援に行きたい気持ちでいっぱいだ」と語った。
別の瀬戸内海側組合長の一人も「祝島の動きは目が離せない」と大きな関心を寄せていた。「祝島が折れて合併参加となったら、実際において漁業権を手放したことになる。合併したのちの“祝島支所”ごときに権限はないのだから、漁師がいくら反対しても、1県1漁協合併後の新漁協トップ連中が裏金でももらったらそれで決定されてしまう恐れはおおいにある。県水産部が原発問題にも推進でかんでいるというし、山根(平生組合長)みたいなのが合併漁協のトップにいたらなおさら漁業の将来は危険だ。緊急対策本部の面面を見て、漁業をたいせつにしている人物がどれほどいるか数えてみたらいい。“漁業権は旧漁協の管理です”と説明しても、将来はどうなるか、法律なんて上の都合でどうにでも書きかえることができる。もともと、浜の親分をなくして支所にするなら漁業権管理などむりな話。それは祝島だけの問題ではない。県1漁協のもたらすものは漁業権放棄が大きな問題だ」と話していた。
また、山戸組合長は早くから信漁連にたいする出資金のうち「七〇〇〇万円(八五%)は返ってこないから漁協経営はたいへんになる」と悲観的に説明しているが、よその漁協では信漁連が違法行為まで犯して各漁協に借入増資させて迷惑をかけているものについて、「相殺にしろ」「返さないというのなら返すように裁判を用意する」と漁協有志連合による対抗措置を検討している。「どうしてはじめからへっぴり腰なのか」「県水産部に弱いやつが中電のような大企業にたて突くことができるのか?」とビックリさせている。原発反対斗争で圧勝した豊北町・角島漁民などを「祝島はどうなっているんだ!」とイライラさせている。
原発反対の声噴出 合併問題の怒り重ね
上関原発は合併問題と切り離せない重要争点の一つになっている。全県の合併反対の漁民の行動が勝利するなら、かならず上関原発反対の世論と行動が動き出すことは疑いない状態となっている。この十数年来、全県漁民と漁協は、信漁連問題が重圧となって、県政・漁連との関係でものがいえない状態におかれてきた。支援するからといっていた県政からの贈与金は貸付金にすりかえられて「返せ」となってダマされたうえに、信漁連の欠損金をとことん押しつける合併で、がまんの限界で怒りは噴いた。
漁業を守るためのあたりまえの行動として、原発反対に動き出すことは避けられないものである。有明海では沿岸漁民が下から決起して九割まで工事が終わった諫早湾干拓をストップさせているが、有明海と比較しても劣らないほどに漁獲が減少し、異変を見せている瀬戸内海において、伊方原発はその原因と指摘する声は強く、原因究明を求める世論と上関原発計画に反対する世論は渦巻いている。宇部でも、防府でも、徳山でも、大島や柳井でも、さらに日本海側や下関海域でも、「上関海域の漁師の底力を見せてほしい」「わしらも応援したい」という声が強まっている。
さらに、上関、四代、室津の上関町3漁協、県と中電のコンサルタント組合長がいる平生町漁協で、漁協解散、漁民の権利放棄の策動にたいする漁民の強烈な反発がまき起こっている。漁民が原発推進というとき、全県の漁民の力がなく、既存の反対運動の多くがインチキで信用できない、権力を使った大企業の攻撃に勝てる条件がないなど、さまざまな条件が作用したものであった。だが漁業で生活する人人は、長年の原発問題が、漁協を解散させる結末になるのでは、二十数年もてあそばれたことになる。山根組合長などは、東部海域では二本の指に入る県べったりの組合長といわれている。漁協を解散させたのでは、漁民の権利を放棄させ、組合員を犠牲にして自分だけが中電や県にとりたてられるというもので、漁民の怒りを買っている。
上関原発問題をめぐる上関関係漁協の漁民、とくに祝島の漁民は、県のいう漁協解散のたくらみで20年余りの苦労を水の泡にするか、それとも内海・全県の漁協・漁民と行動をともにして漁協を再建し、漁業振興の道を切り開くかの重大局面にきている。