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祝島漁協 合併実現の為の不可解なカンパ 反対派を推進にすり替えるマジック 

 県漁協との合併を議決した祝島漁協が、総額2000万円をこえる欠損金補填(てん)のために、島民や島外の反対派町民、全県の原発反対派に資金カンパを募って、人人を驚かせている。山戸貞夫組合長の子分にあたる清水敏保町議が取扱窓口になって、「祝島の漁民・島民がこれからも上関原発反対運動をつづけられるよう、ご支援・ご協力をお願いします」と訴えている。
 島外の町民や全県の反対派関係者には、山戸氏と共同歩調をとってきた「原発いらん! 山口ネットワーク」という団体から、年会費納付を催促する振込用紙とあわせて、「祝島漁業協同組合組合員および家族有志一同」名の「お詫びとお願い」、「上関原発に反対する祝島島民の会運営委員一同」が訴える「カンパのお願い」の文書、そしてたくさんの振込用紙が送りつけられている。
 言い訳の内容を見てみると、魚価低迷や高齢化の影響で漁協経営は不振をきわめ、大幅な欠損金を出す事態に陥り、単独での漁協維持・存続が困難になって合併やむなしの結論に達したこと、合併に加わるために負債を解消しなければならず、いったんは、中電の環境影響調査のさいに支払われて受けとりを拒否していた迷惑料2200万円に手をつけることを決定したものの、「心に引っかかりを持つ人」が多くいたことから撤回したこと、「漁協組合員が今後とも従来どおり行動していくためには、中電の金を拒否したほうがいい」との結論に達し、金集めをすることになったと弁解している。
 祝島漁協は、中電を訴えていた漁業権裁判は3月23日の判決をもって取り下げるほか、合併による法人格剥奪に応じて実質的な漁業権放棄を決定した。「中電の補償金は受けとらない」との方針変更は、祝島のなかから「反対を貫け」との圧力が強まったことを反映したものである。
 「反対を貫け」という中身は、なによりも「漁業権を放棄するな」という内容が中心問題である。祝島が原発反対の拠点となったのは、漁業権を持ってきたからである。これを崩すために、中電や県が24年のあいだ七転八倒してきたことはだれでも知っている。「祝島が漁業権を手放さないかぎり原発はできない」というのは、祝島のなかからもいわれてきたことであり、漁業権放棄がなにを意味するかはみんなわかっていることである。
 今回の山戸氏らのカンパ要請は、反対の力を推進にすりかえるトリックである。「大幅な欠損金が出たために合併はやむなし」との説明を前提とするなら、この「欠損金」をカンパで解決するなら合併すなわち漁業権放棄は必要なくなるはずである。「漁協を守り、漁業権を守るために反対派のカンパを」というのならスジはとおる。しかし逆に「漁協を解散し、漁業権を放棄するために反対派のカンパを」というのはスジがとおらない。それは二井知事が上関原発の意見を国にあげるさいに、「原発はかくのごとく危険であるから賛成する」とした頭脳構造と似ている。
 反原発団体を自称する「山口ネットワーク」も「祝島の心意気にカンパを!」といって漁業権放棄は容認しているが、それは全県の反原発派を「合併を推進し漁業権を放棄する心意気」に賛同させるという意味を持つことになる。これは、全町、全県の反対の力を推進にすりかえるマジックである。それは祝島のなかの「反対を貫け」という力を、漁業権放棄という「反対を挫折させる要求」にすりかえ、全町、全県と対立・分裂させ、圧力をかける内容を持つことになる。
 「漁業権放棄という原発容認に至ったので自分は反対派の幹部を降りる」というのが、スジを曲げることを恥とする者の感覚である。しかしなおかつ「反対派」の看板で選挙に出、さらに「漁業権放棄の心意気」に賛同したカンパを反対派から集めるというのは、正直者の資質とは真反対と見るほかはない。これは自分が変節するだけでは満足できずに、祝島の反対派島民を道連れにし、全町、全県的にも反対派に白旗を揚げさせようという意欲だと勘ぐられてもしかたがない。
  
 原因を解決せねば困難拡大 責任とわれるのは役員・組合長
 漁協合併は、二井県政が強要しているもので、その不当性に抗議して現在13漁協が不参加でがんばっており、県漁協に合併したところは組合員が大量に脱退して破たんは必至となっている。原発問題で24年もがんばってきた祝島漁協が、簡単に県の言い分にひれ伏して漁業権放棄を認めたのは、全県の漁業者の死活問題でもあり、驚きとなっている。
 祝島では、油などの資材は山口県下でもっとも高額で、魚価は漁協の買いとりによって周辺漁協の半値以下になっている。どこかでぬかれている原因をとりのぞくなら、欠損金など漁協内部で簡単に解決する問題である。このような、祝島漁協の不可解な経営の問題点は、会計検査をする県水産部、県漁連の幹部は知っていることであるし、ワザとやらせてきた可能性すらある。そしてこのような、幹部の弱みを握り、漁家経営を成り立たなくさせ、漁協を経営破たんさせるやり方は、原発容認に導くために全国どこでもやってきた政府、電力側の手口である。
 漁協が欠損金を出した場合、その責任を一番問われるのは経営責任がある役員・組合長である。役員は一般組合員の10倍は負担するのが常識である。この欠損金の責任と原因をあいまいにし解決しない方向にカンパが作用するのなら、祝島の漁民の困難はさらに大きくなることを意味する。山戸組合長は組合長報酬が年間約380万円で、町議をやっていた時期はそっちの報酬も年間300万円上乗せされていた。巨額の欠損金を出しながら、その経営責任のあるものが、県下一の報酬をとってきたというのは、全県の漁協では考えられないことである。島では、両親を島に残した子弟、家族が盆、正月などに帰省するたび、親がいじめられないようにと、山戸氏につけ届けをしてきた。それは1000万円をゆうにこえたそうとうな額になっているという勘ぐりもある。
 町民が語っていることは、「反対派」の議員連中が、町民の票をもらって年間300万円、1期4年で1200万円もの報酬を手にしているわけだから、祝島漁協が合併を拒否して漁業権を守るためなら、そのなかから還元しても罰は当たらないだろうということである。まさに漁業権放棄という反原発がつぶれるか、反対を勝利させるかの分かれ目である。山戸氏だけではなく運搬業をしている清水氏、また祝島から票をもらって企業勤めの年金のうえに議員報酬をもらってきた上杉氏、さらに棚ぼたの県議当選をして月に100万円ほども県議報酬を得ている小中進氏などは率先して出してもいいではないかといっている。
 いずれにしてもみんなに選ばれた反対派のリーダーたる者は、自分の権利を守ることだけ熱心で、みんなの権利はどうでもよいというのではなく、島の人人のため、町民のため、世のために私心なく尽くすという精神でなければ困るのである。みんなの世話になっておりながら、「オレがいるから反対派がおれる」という調子では、たいへんな勘違いである。
 「山口ネットワーク」の今度の不可解なカンパ要請で危惧されることは、10年ほどまえ四代などの反対派の土地の共有地運動をやり、この団体のメンバーが、祝島の山戸氏グループや広島の反対派グループとともに共有者名義に名をつらねていることである。つぎは「祝島の反対運動をつづけてもらうために土地を売却する心意気に賛同」したのでは困るという問題である。
 このような「反対派」陣営の変節は、原発推進の力が強まっているからではなく、上関町内でも全県、全国でも推進が瓦解しているから起きているというのが真相である。町議選が迫っているが、「漁業権放棄に賛同する反対派候補」にたいして、うかつに町民が支持を表明するなら、中電側に名前が漏れて、集中攻撃がくることも警戒しなければならない。
 町議選挙で最大の争点は、祝島の合併承認、漁業権放棄、漁業裁判の取り下げを撤回させるかどうか、共有地裁判までも取り下げさせないことをはじめ、反対派の土地を、権力の攻勢に抗して守るための町内外の反対の力をつぶさせるか、強めるかである。

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