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ゲノムや遺伝子組換え、無添加の食品表示なくしていいか 超党派の議員連盟が院内集会

 ゲノム編集食品の表示がないまま流通が始まり、2023年からは事実上「遺伝子組み換えでない」の表示もできなくなる。さらに現在、政府は「無添加」や「添加物不使用」の表示もできなくすることを検討している。食の安全性に関心が高まっているが、表示がなされなくなれば、買い物をするさいに消費者が選ぶことすらできなくなる。食品表示に関する検討が、大企業に有利な方向で進行するなか、市民の声を国会議員に届けることを狙いとして15日、「食品表示について市民の声を聞く院内+オンライン集会―ゲノム編集食品・遺伝子組み換え食品・無添加・原料原産地の表示」(主催/食の安全・安心を創る議員連盟)が開催された。生産者や食品製造業者、生活協同組合や消費者の立場から、食品表示をめぐって意見がかわされた。発言の要旨を紹介する。

 

食品表示の現状と消費者の権利

   遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン代表  天笠啓祐

 

 まず、なぜ食の安全が脅かされるようになったかということだ。さまざまな理由があるが、一つに食の工業生産化・大量流通化がある。食の流通が国際化し、世界中から日本に食品が入ってきているが、そのなかで経済性が優先されて、食品添加物についても「国際汎用食品添加物」という名前で次々承認されている。法的に物質名表示が義務づけられているにもかかわらず、ほとんどのものが物質名を表示されていない現実があり、私たち消費者は選べない状況になっている。多くが表示免除されたり、一括表示など、簡素化され過ぎてわかりにくい表示が多い。また、ファストフードやファミリーレストランのように調理しないレストランが増えてきているが、そのようなレストランではまったく表示されていない。以前スイスに行ったとき、レストランで原料原産地が表示されているのを見て感激した。外食・中食、対面販売で表示は必要ないというのは問題だと思っている。

 

 また、農薬の残留基準が緩和されており、これも食の安全を脅かす一つの原因になっている。デトックスプロジェクトジャパンの検査で、日本人の髪の毛からもグリホサート汚染が見つかっている。どこから原料が来るのか、食品表示としてわからなければ選ぶことができない。

 

 今の原料原産地表示は一番使われている物だけが対象だ。たとえばコンビニ弁当で一番使われているのはコメなので、大半の食材は輸入食材だが「国産」と表示され、全体が国産のイメージになってしまう。原料原産地は一つ一つの物についてわからなければ何を食べているかわからない。遺伝子組み換え食品も大半が表示免除されており、表示でわかるのは豆腐や納豆、味噌くらいだ。ゲノム編集食品に至っては表示義務を免れてしまった。こういう現状を何とか変え、消費者が選べる表示にしてほしいということがまず一つある。

 

 さらに、無添加・不使用表示の問題が検討されている。無添加や添加物不使用表示は消費者のなかで賛否両論ある。しかし生活協同組合など、無添加・不使用で一生懸命頑張ってきたところが、表示が規制されるとわかりにくくなる。こういうことを今議論を進めていいのだろうか。

 

 遺伝子組み換え食品についても混入率0%でなければ「不使用」の表示を認めない動きになっている。遺伝子組み換えでない輸入大豆を使って豆腐をつくったり味噌をつくったりしているところではコンタミ(混入)は一定程度起こるので、0%はあり得ない。そうすると今「遺伝子組み換え不使用」としている表示ができなくなる。これも私たちは改悪だと思う。

 

 食品表示とは、消費者の知る権利、選ぶ権利から生まれたものだ。だが今の食品表示のあり方は検討するさいに「現実がこうだから」という方式で決められていく。消費者がこの食品が何なのか知ることができ、選ぶことができることが基本にあって初めて食品表示は成り立つ。消費者の知る権利、選ぶ権利は、1962年にケネディ米大統領が提唱した「消費者の権利」から始まっていて、消費者基本法に明記されている。消費者の権利から出発して食品表示を考え、変えてほしい。

 

 議員立法でゲノム編集食品に表示する法律が必要だ。ゲノム編集食品は表示しなくてよいことになっているが、おかしな話だ。遺伝子操作食品であり、私たちから見ると遺伝子組み換えよりもはるかに遺伝子操作の割合はアップしている。まずは、2008年に欧州司法裁判所が下した判断にもとづき、また予防原則にもとづいて、遺伝子組み換え作物と同等に扱うことを日本でも実現していただきたい。

 

 よく「ゲノム編集食品は検査ができないから表示ができない」といういい方をされるが、検査する方法はある。やる気がないということだと思う。たとえば開発者がどのDNAを壊したのか情報を開示すれば簡単に検査できる。それが嫌ならば全ゲノムの情報を公開するようにすればどこが壊れたか判断できる。アメリカのHRIでは未公開の場合でもゲノム編集かどうか見分ける方法を確立している。最終的にはトレーサビリティ(生産から消費まで追跡可能な状態)が確立していれば検証は可能だ。「できないから表示しなくていい」というのは論理としてはあり得ない。

 

 もう一つ、種苗にも表示が必要だ。遺伝子組み換えの場合は食品表示制度があるので、遺伝子組み換えの種や苗を販売し、できた野菜などに食品表示をせずに流通させた場合は違法行為になる。ところがゲノム編集は食品表示制度がないので、種苗を販売し、食品となって流通した場合でも問題にならない。そうすると消費者としては、ゲノム編集かどうか選べない状態になる。実際のところ種苗に関しては今、遺伝子組み換えの表示もなく、両方の表示が必要になってきている。「OKシードマーク」という遺伝子組み換えやゲノム編集でない物にマークをつける自主的なとりくみもなされている。そうしたとりくみも含め、ゲノム編集に関する種苗の表示、遺伝子操作の表示の仕組みも必要だ。

 

 

食の安全を脅かす流れを変える

            有機トマト栽培農家  瀬川守

 


 ゲノム編集でハイギャバのトマトを開発した会社の「シシリアンルージュ」というトマトを13年前からつくっている。昨年末、同じ品種をゲノム編集技術で改良した苗を無償配布すると聞き、どうなるのかと思っていた。今回無償配布された苗は、ゲノム編集技術を使った苗だと表示しているそうだが、表示義務がないということは今後どうなるかわからず、非常に懸念される。うちも、もともとの「シシリアンルージュ」の栽培をやめなければいけないと考えている。

 

 トマトのみならず、さまざまな農作物にこの技術が導入され、表示義務がないまま生産者が生産し、流通にのっていく、そして消費者の口に入っていくということが、まったく安全な審査を受けずに進んでいることに怒りを感じている。これまで、農業競争力強化支援法という名のもとに、残留農薬の基準緩和や種子法の廃止、種苗法の改定、今回の食品表示の問題など、さまざまな法改定がおこなわれてきた。生産者側に情報は流れているが、果たして農家がどこまで問題意識を持っているのか、私自身は非常に疑念を持っている。

 

 農業者は国民に安全な食料を供給する義務があるはずだ。農家人口がどんどん減少し、規模拡大することが強い農業だということで、国内にはプレハーベストをかけた農作物を大量に輸入し、国産の農作物を輸出するという構図がまったくなっていないと思う。それらも含め、着々と、時間をかけず、慎重に審議されないまま進められていることを、農家として非常に危惧している。

 

ゲノム編集のギャバ高蓄積トマト「シシリアンルージュハイギャバ」(サナテックシード社HPより)

 

 北海道ではこれらの問題を少しでも変えていこうと、5月13日に「北海道食といのちの会」が発足した。第一弾としてゲノム編集トマトの開発企業に緊急抗議の申し入れをしたところだ。その返答はまったく意に介さないもので、かつ「事前相談をしていたので進めていいのだ」という内容だった。「相談」という言葉は相談であって、審議されたわけではないと思う。このまま表示義務がなく、安全についての審議ができないまま進めば、国民の健康と食の安心安全をどこで保っていくのかということだ。生産者としての責任を感じている。

 

 

 グラフにあるように、北海道は全国に先駆けて2005年に「食の安心安全条例」が施工されている。2019年の世論調査でゲノム編集技術についてどう思うかというアンケートをとったところ、53%をこえる人が不安だと答えている。遺伝子組み換えについては7割近い人が不安を持っている。そういった背景で「食といのちの会」を中心に全道の流れを少しでも変えていこうと意気込んでいるところだ。全国国民運動のような形に広がっていき、今の状況を変えていかない限り、子どもたちや孫、親になっていく若い人たちを犠牲にしていくことになる。みなさんとともに世界の趨勢とまったく逆行している状況を変えなければ非常に大変だということを再認識したい。
 (北海道有機農業研究会代表)

 

 

石井食品の無添加調理のとりくみについて

       石井食品株式会社代表取締役社長  石井智康

 

 石井食品は戦後、佃煮メーカーとして営業を開始した。ミートボールやハンバーグなどを主力商品とするメーカーだ。ミートボールは45年、ハンバーグは50年販売している。われわれは97年から無添加調理を掲げ、添加物を使用しない食品づくりを始めて今に至っている。そのなかで添加物を使用しないとともに、トレーサビリティシステムを入れ、情報をお客さまに全公開している。それだけではなく、97年からのミートボールの原材料表示だが、さまざまなものをシンプルにしていくことを目指し、なるべく抜ける物は抜く、もしくは家庭で使わない材料は使わないといったようにレシピを見直してきた。例えばショートニングは家庭でなかなか馴染みのないものなので、便利であっても基本的に使わないという形だ。

 

 それ以前は創業者も添加物をうまく使用しながら商品をつくっていくのは一つの技術であって重要だと考えていたし、今でも添加物は一つの技術として、いい物も悪い物もあると考えている。決してすべてを否定しているわけではない。われわれが無添加調理に舵を切ったのは、消費者の信頼を得るために何をしなければならないか、と考えたときに、とにかく添加物表示がわかりにくいという問題があったからだ。添加物もたくさん認可されているものがあり、そのなかには昔から使われてきた、海水からできた「にがり」や、黒豆を煮るときに使う釘(鉄分)などもあるし、最近生まれた化学薬品からできた添加物もある。そういった物がすべて、消費者によくわからないまま添加物として表示されている。「何を口に入れているのかわからないことに不安感がある」という声を受け、われわれは一切添加物を使わないことを選んだ。食品メーカーとしてはかなり厳しく、つくれない物も出てきたが、それよりお客様に安心してもらうために無添加調理を掲げ、全商品の原材料とレシピを見直し、20年以上続けてきた。

 

 もう一つ、なぜわれわれが無添加調理を続けるかというと、消費者が選択できることが重要だと思っているからだ。添加物に対しても消費者のなかで、さまざまな考え方がある。それはゲノム編集においても同じだと思う。ライフスタイルや信念によって食べる物を選ぶことが生活を豊かにしていくための一つの手段だと考えたとき、選択肢がなければ選ぶことができない。アメリカであればコストはかかるが、さまざまな選択肢がある。日本では「明日から添加物を入れないようにしよう」と心がけても、なかなか選ぶことができない。表示法が改正されてしまうと、より選べなくなってしまう。消費者の食に対する不安は拭いきれない。いまだに残っている表示法への不信感がより深まることを私たちメーカーは懸念している。ぜひ、わかりやすく、選べるという選択肢を残してほしいと思う。

 

 

 

「遺伝子組み換え大豆不使用宣言」して表示

     太子食品工業株式会社代表取締役社長  工藤茂雄

 


 青森県三戸町で、豆腐や納豆、油揚げなどを製造している。遺伝子組み換え作物、とくに大豆の輸入が始まったころ、遺伝子組み換え作物について調査したが、安全か不安かわからないので、しばらく使わないことを決定し、1997年に「遺伝子組み換え大豆不使用宣言」をして表示した。

 

 それが国内で話題を呼び、140回国会で食の安全委員会に呼ばれて考えをのべることになった。「不可能だ」とか「支障がない」と攻撃もされたが、お客さんを募集してアメリカやカナダの栽培地やトレーサビリティも見せるなどのとりくみをおこない、今日まで「遺伝子組み換え大豆不使用」と表示している。

 

 原料大豆はアメリカから仕入れている。アメリカの大豆の生産量は1億2000万㌧、うちNоnGMO大豆が720万㌧といわれている。ただこのうち畜産飼料用のNоnGMO大豆が470万㌧だ。これはアメリカの消費者が飼料までNоnGMOの畜肉を求めているということだろうと思う。残った250万㌧から私たちが仕入れているが、中国のNоnGMO大豆の買い付け量が増えそうだという。

 

 また、アメリカはインドから脱脂大豆を輸入して飼料にしていたが、これも輸入ストップしそうで、数年後に追加需要が約60万㌧になると見込まれている。そうしたなかで、NоnGMO大豆についてより一層買い負ける状況になっている。これが今のアメリカの状況だ。

 

 アメリカは2022年から遺伝子組み換え食品の表示をすることになった。そのさい故意ではない混入率が5%以下であれば表示しなくていいことになっている。アメリカにはNоnGMOプロジェクトという認証団体があり、0・9%未満の基準でマークをつける動きもある。EUではやはり0・9%未満という表示基準になっている。今回日本では0%という、検出されるとアウトという動きになっている。これは「遺伝子組み換え大豆不使用」と表示するのがきわめて厳しくなる。農協や全農などにも問い合わせしているところだが、「NоnGMOである」と担保しないということだ。このままでは国産大豆も「遺伝子組み換えでない」とうたうことが難しくなっていく。EUの基準と同じ0・9%未満であれば、頑張れば「遺伝子組み換え不使用」の表示ができるのではないかと考えている。

 

 ゲノム編集について詳しいことはわからないが、メリットも大きいのでなされるのだと思う。だが、遺伝子組み換えよりテクノロジーとしては進歩しているので、簡単に遺伝子操作ができる。無秩序・無鉄砲な開発も簡単にできてしまい、「高校生にでもできる」といった話もある。開発をどのようにコントロールし、規制するかが大事なところだと思う。NHKスペシャルでデザイナーベビーなどが放映されていたが、本当に大変なことだ。

 

 添加物についてだが、私どもも添加物を使わない商品をつくろうと頑張っているところだ。純粋にがりで豆腐を大量生産するとりくみを業界で早く始め、この技術が評価を得て市場がだいぶ拡大してきた。だが、最近は乳化にがりを使った豆腐が一般的になっている。乳化にがりは、塩化マグネシウムを乳化剤でコーティングし、そのまわりを食用油で包んだものだ。これを豆乳に入れると食用油が溶ける時間がかかり、ゆっくりと塩化マグネシウムが出てくるので、簡単ににがり豆腐ができる。使われる乳化剤は自然由来のものもあるが、一般的にはポリグリセリン縮合リシノール酸エステルなど、ケミカルな乳化剤が使われている。

 

 私たちは「消泡剤・乳化にがり不使用」の表示をしている。豆腐や納豆につけるタレにも化学調味料を使っていないなどの表示をしている。だが、タレに使う食塩をつくるさいに必ず消泡剤が使われているのではないかという話が出てきた。この強調表示が難しくなれば、添加物を使った方が安く効率的にできるので、努力してきたことが非常に空しくなってきたという気がしている。

 

 

 しかし、やはり消費者にとって新しい添加物が複合的に作用したときにどうなるのかという証明はされていないと思うので、私たちは極力、添加物を使わないようにしていきたいと思っている。ただ、表示のうえで食塩は添加物ではないが、にがりは添加物であるなどの疑問点も多くある。そのあたりの表示も消費者がわかりやすいような法律にしていただきたい。
 消費者に理解される、選択できる仕組みが非常に大事だ。

 

 

消費者の選ぶ権利が重要 食の安全と添加物表示の考え方

       パルシステム生活協同組合連合会常務執行役員 高橋宏通

 


 パルシステムは食の安心安全にこだわった生協で、首都圏を中心に約180万世帯を対象に届けている。遺伝子組み換え不使用表示を継続したい。努力しても意図しないコンタミ(混入)が起こるものと、意識的に遺伝子組み換えの原料を使った物は明確に違うことを消費者に伝えなければならない。真面目に食べ物をつくりたいという農家やメーカーを守っていかなければ、世の中からそうした食品が消えていくことが一番大きな問題だ。

 

 二つ目にゲノム編集食品はすべてに表示することだ。こうした技術はいいことばかりいうが、必ずリスクも含めて表示しなければならない。表示しないということは消費者の選ぶ権利がないということだ。添加物も同じだ。不使用表示を禁止することは、消費者の選ぶ権利や食の安全性を守る観点で大きく後退する。

 

 あまりにも安さや便利さ、見た目を優先させる世の中になると、何を食べているのかわからない世の中になってしまう。その弊害が出てきている現状から消費者を守らなければならない。やはり一番は、消費者自身が買う・買わないという権利を行使することだ。遺伝子組み換えやゲノム編集食品をつくることは自由かもしれないが、消費者が買わなければ、違う製法に変えていくかもしれない。消費者がノーといえば本当に安全な食品をつくってくれる世の中になる。しかし、その権利を行使されるのが怖い人たちがたくさんいる。遺伝子組み換え表示についてアメリカでは正直に「消費者の買う気が失せるから表示させない」といった。違いが見えにくくなっている現状を消費者が逆にしなければ、本当の権利が行使できなくなる。

 

 食べ物は命の基本だ。リンゴの味と香りを楽しみたいからリンゴジュースを買い、肉を楽しみたいからハムを買う。決して香料の味や、肉より真っ赤な物を楽しみたくて買うわけではない。食品添加物のすべてを否定するわけではないが、本当に必要なのか考えてみなければならない。消費者を欺くための技術になっているのではないか。

 

 食の安全に関してはまず自分自身が守らない限りできない。どんなに製造者・販売者が「安全だ」といっても、後から害があった、問題があったという場合は多々ある。ゲノム編集や遺伝子組み換えについては、ひょっとしたら私たちは人体実験をされているのかもしれない。そういう意味で、添加物、遺伝子組み換え、ゲノム編集について正しく消費者に情報を公開し、一人一人が考えて買う・買わないを判断することが問われている。

 

 もし添加物の不使用表示を禁止するなら「購買意欲を高めるためにきれいな色をつけました」「素材の少なさを補うために香料や酸味料で味をつけました」など表示すべきだと思う。正確な情報開示なく不使用表示を禁止すれば、なにもかも安全だとなり、本当に努力しているところが浮かばれなくなる。

 

 ゲノム編集食品や遺伝子組み換えに関しても、安全安心についてきちっと議論すべきだが、やはり消費者自身が見えるようにすることが必要だ。

 

 

 

添加物の不使用表示は議論が時期尚早 

       グリーンコープ共同体常務理事 河嶋敏秀

 

 遺伝子組み換えの商業栽培が始まって四半世紀たち、関係行政は「ずっと安全だといっているのになぜ伝わらないのか」と思っていると思う。だが、私たちのところには日々「これは安全か」「遺伝子組み換えされているものか」「どこの産地のものか」「ゲノム編集のものが入っているか」といった問い合わせが本当に多く届く。今回、遺伝子組み換え不使用の表示をするのに0%でなければならなくなることやゲノム編集がスルーされてしまったことについて、ぜひ国民の知る権利を守っていただきたいと思う。

 

 ゲノム編集については消費者庁のQ&Aもあるが、たとえば「ゲノム編集で高オレイン酸の大豆になった」と表示したいときは、種子から流通までわかるようにするとなっている。逆に「ゲノム編集でない」と表示したいときにも、流通の各段階で証拠を残し、記録を確認できるようにするようにとなっている。しかし、そもそも「ゲノム編集は検査できない」といっている人たちから「記録をとれ」といわれても、どれが適正な記録なのか、私にはわからない。植物の場合はまだわかる可能性があるかもしれないが、たとえば唐津市と九州大学がしているマサバのゲノム編集などになると、「ゲノム編集したサバだ」といってくれればわかるが、開発者が公表しないときにどうやって消費者が確認したらいいのかという問題がある。「ゲノム編集は問題ない。安心安全だ」というのであれば、堂々と表示できるようにしてほしい。

 

 添加物の不使用表示については、議論が時期尚早だと思う。伝統的な作り方をしている食品は添加物を必要としない物が多く、使用していないことはアピールになる。だが、現状ではある一部分だけ使用していないという表示が横行しているのも事実だ。行政がそれらの表示が国民にとってマイナスなので表示してはいけないというふうに動こうとしていることに一定は理解できるが、本当に使わなくてすむものまで表示が禁止される。右か左に決めるのはかなり無理がある。三つの問題に共通して「表示させない」というものがあるようにしか思えない。遺伝子組み換え表示も、対象物質は表示義務があり、対象物質であって遺伝子組み換えでないものは「遺伝子組み換えでない」という表示をしてよいということで始まっている。だが、制度が非常にわかりにくい。加えてゲノム編集が出てきた今、消費者にはチンプンカンプンな表示制度になっている。EUと同じように遺伝子組み換えとゲノム編集を合わせて「遺伝子操作」という枠組みの新たな表示制度の検討をお願いしたい。

 

 われわれに寄せられるのも、「これを使ったら悪い」「これは安心」ではなく、「何を使っているのか教えてほしい」という声だ。やはり消費者自身が知っていくことが大切で、知りたい消費者が私たちに聞いてくれていると考えている。そうした消費者がわかりやすい表示になるよう、「遺伝子操作」の枠組みを検討してほしい。不使用表示は、優良誤認も含めて、確かに書きすぎている問題もたくさんあると思う。しかし、今日お話された食品メーカーのように、本当に使っていないのに、使っていないといわせない仕組みはおかしい。今、結論を出すことをやめていただきたい。

 

 

 

ゲノム編集でない食品にOKシードマークを

      OKシードマークプロジェクト  中村陽子

 

 OKシードプロジェクトは立ち上がったばかりだ。ゲノム編集ではない種苗・畜産物・食品につける「OKシードマーク」をつくった。本当は遺伝子組み換えやゲノム編集を使った人に表示していただきたいが、表示しないということなので、わかるようなマークをつくるしかないとなった。マークをつけるのに基準やルールはあるが、無料なのでどんどん申し込んでなんにでもつけてほしい。

 

 今は日本中ゲノム編集でない物であふれている。今のうちに「ゲノム編集でない」というマークがついてしまえば、ゲノム編集のトマトやジャガイモが出てきたときに、「マークがついていないからゲノム編集なのかな」と思うくらい普及させたい。

 

 ゲノム編集や遺伝子組み換えを毛嫌いしていると、科学的に何も知らないのにただ反対、反対といっていると思われるかもしれない。先日のNHKスペシャルでデザイナーベビーやブタが人間の臓器をつくることを特集していて、医学の勝利で明るい未来があるような表現でまとまっていたが、これで人間の未来は明るいと思える日本人がどのくらいいるのだろうか。生き物を自分たちの思うまま道具のように使っていいと考える日本人がどれほどいるかなと思った。農家が「ジャガイモは山でつくってもイノシシに食われない」と話していた。芽に毒があるからだ。イノシシから身を守るために毒を持っているのに、それをゲノム編集でとってしまえば、ジャガイモは次の手を考えるのではないか。生き物がどのような反応をするかわからないのに、それを「科学」といってよいのかと思う。

 

 今、私のまわりにいる女性たちは、みんな結婚していなかったり、結婚していても子どもがいない。

 

 食が悪化して、知らず知らずのあいだに危険になってきたものの集大成だと思うが、それをゲノム編集で赤ちゃんまでつくるなど、方向が違っていると思う。そう思っている国民のために、きちんと表示する方向でお願いしたい。

 

 

 

幼子も老人も安心して食事とれる世界願う

               母親  赤尾明日香

 

 私たちは、食を中心とする社会問題をSNSで情報発信したり署名を集める活動をしている。私が食に興味を持ったきっかけは7年前に母がガンになったことだ。ガンの原因を突き詰めていくと必ず要因に食品が入っていて、添加物や除草剤、農薬など、じつは危険なものがたくさんあることを知った。添加物では罪のない動物を使った実験がおこなわれていたり、除草剤で土や土の中の生き物が死んでしまったり、考えさせられると思ったことがある。

 

 普段の買い物では裏の食品表示を見たり、生産者や店員に確認しながら買い物をしている。遺伝子組み換えに特化して話すと、この改定は一見、厳格化され、国民を守るものだと感じたが、よくよく調べてみると、「遺伝子組み換え不検出」という状況は難易度が高かったり、リスクゼロにすることが難しいというデメリットを知った。遺伝子組み換え作物を100%使用していても、5%使用していても表示が同じとなると、私たちはいったいどうやって選択していけばいいのだろうかと考え、ぞっとする思いだった。

 

 今の世の中は大量生産・大量消費だ。外面や売上など、大人が行動に責任を持って行動や言動をしているか疑問を感じる世の中だ。そのなかで表示の差別化がされなくなったら、手間暇かけて遺伝子組み換えでない作物を扱っている企業や生産者のモチベーションが下がり、どんどん安価な遺伝子組み換え作物の方に流れてしまうのではないかという不安も感じている。

 

 私の仲間は子育て中のお母さんやこれから母親になる若い女性たちだ。表示が変わることで、買い手が選別できなくなることを感じている。知る権利と知らせてもらえる権利を奪われていると感じている。この案自体がリセットされることを強く要望するが、事実上表示義務が変わるのであれば、改定と同時に表示のかわりになるOKシードマークのような印や、遺伝子組み換えや添加物の割合を表示するなど、代替案を示してほしい。

 

 発がん性のある遺伝子組み換えや添加物の食品が日本にあることすら不安に感じている。先日、種子法廃止の違憲訴訟にも参加したが、自分がとる食事の法律がどんどん変わり、買い手が選ぶことが難しくなっていく状況に命が脅かされるくらいの恐怖を感じている。憲法二五条の生存権の違憲であることを強く感じている。

 

 また、このような食の危機にあいまって、こんな時代に子どもを産んでいいのか不安に感じる若い世代もすごく多い。私の友人にもこんな時代に産んで大丈夫なのかと悩んでいる人もたくさんいる。私たちの体は父母や携わってくれる方の料理でできている。食卓に並ぶ野菜、肉、魚は自分の未来の姿だと思っている。なるべく不自然ではなく、自然に沿った生き方ができるよう、そして虫も動物も赤ちゃんも大人も老人も安心して食事がとれるような世界が守られることを切に願っている。

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