下関のワクチン接種(65歳以上が対象)が山口県内の他市と比べても遅すぎることが県庁界隈や自治体関係者のなかで話題になっている。山口県の接種率が次第に全国ランキングから落ちているのは、「下関が足を引っ張っているからだ」といい、みなさん「何面汚ししてくれてるんだ」と立腹気味である。あまりにも動きが鈍いものだからさすがに県政界のなかでも問題視されたのか、チンタラしている下関の評判は東京の国会議員にも伝わり、6月初旬になって前田晋太郎(市長)に雷が落ちたのだともっぱらである。安倍事務所の秘書上がりが40代で市長ポストを与えられ、このコロナ禍でみんなが苦しんでいる折に自分だけワクチン接種を済ませ、いつまで経ってもチンタラして9万5000人が業を煮やしているというのは、回り回って国会議員どもや自民党山口県連を傷物にしかねないという危機感からなのだろう。衆院選を前にして、なにバカやってんだ! と思うのも無理はない。
現状では周辺の自民党支持者ですら「前田晋太郎は何やってんだ!」と激怒しており、市議会議員や県議会議員たちも支持者たちから「どうなってんだ!」と突き上げられ、下関の街のみなさんの怒りのボルテージは沸点に達している。日頃は温厚な人まで怒らせているとは余程のことである。電話する度に「ただいま混雑しております…」で肩すかしをくらい、待てど暮らせど予約すらできないのだから当たり前なのだ。
それで叱られて飛び上がったのか、受付開始からおよそ1カ月半が経った6月の第2週に入って、ようやく下関市役所内部に各部局からのメンバーで構成するワクチン接種促進チームが発足した。そこからは競艇場に接種会場を増設するとか、電話の窓口を23台体制から40台体制(7月以降)にするとか、いくつかのプランが動き始めた。遅きに失するとはいえ、破綻していたワクチン接種受付のシステムを改め、より迅速に事が動き始めるのであれば、誤りを正すというその姿勢は歓迎したい。
ただ一方で、叱られなければ前田晋太郎はいつまでも保健所任せ(人員的にも限界で職員たちは精神的にも参っていると役所内で心配されている)にして混乱を放置していたのだろうか? とも思うのである。1カ月半もワクチン接種の受付がパンクしている状態をそのままにして、役所あげての対応を組織していなかったというのは、軌道修正するにしても反射神経が鈍すぎるし、緊張感がまるでないことを物語っているように思うのである。
こうした危機対応の場面で自治体の首長として鈍感であるというのは、一つには政治センスのなさをあらわしている。職員3000人を動かしてどこの都市よりも迅速に接種対応を進めるとか、やりようによっては政治家として「さすが前田晋太郎」「頭のキレた市長だ」と評価される機会にもなり得るが、逆に何も自分の頭で考えようとせず為すがまま突っ立っているような者は「ポンコツ」と評価されるのである。政治家としてもっとも存在感をアピールできる局面で何もしないを選択し、その怠慢がみずからに跳ね返って、街のみなさんから「前田晋太郎は何やってんだ!」「今回ばかりはやらかしたな」の総スカンを食っているのだから、これは誰のせいにもできない。
この期に及んで、斯く斯く然々でボクはなぜ1カ月半もチンタラしていたのかを言い訳するというのでは、ますます白い目が向けられることにもなろう。潔く非を認め、ならば今後は接種受付の目詰まり解消に全力を傾注し、頭を働かせて市民のために汗を流す姿を見せることが信頼回復の術であろう。言い訳をして正当化するという最悪の選択をした場合、有権者としては「その程度の男なのだ」と器を判断する材料にもなるのだろう。「やればできる」を最近になって見せ始めた折、ではなぜ1カ月半もやらなかったのか? なぜいきなり慌てて頑張り始めたのか? も必然的に問われるのだ。危機に際して、本当に命を守ってくれる自治体なのかどうかを住民たちは他市の接種率の推移とともに注視している。 吉田充春
東京、大阪の大規模接種会場その他で64歳以下のワクチン接種も始まり、各地で接種券の送付時期が問題になっています。単身赴任等で下関に住民票を置いたまま東京大阪等に居住している人は接種券(場合によっては接種券番号の告知のみ)さえあれば、東京大阪等での接種も可能な状況です。下関市役所コールセンターに64歳以下の接種券送付時期について確認したところ、現時点で時期は不明とのこと、また他の自治体で実施している該当窓口での接種券番号の確認も不可とのことです。接種の開始時期はともかく、接種券送付の時期さえ不明という体たらくはとても許容できるものではありません。一市民として断固抗議したいと思います。