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勝利を目前にしている祝島

 上関原発計画が浮上して27年が過ぎた。当時50歳の人は77歳、10歳の子どもは37歳になった。上関町民の思いはこの上なく深い。
 現在、上関原発をめぐる最大の焦点は祝島である。中電も県も県漁協も推進派も、祝島に補償金を受け取らせることに熱心である。「原発はできるのだから補償金はもらわなければ損だ」と「親切な人」になったかのようである。この春にも、法務局に供託している補償金について「どうせ原発ができるのなら受け取ろう」という動きとなったが、島の婦人たちが先頭に立って拒絶した。長期にわたって祝島漁協を経営困難にし、合併を強制したのもその布石であった。そして現在、残る半金をめぐって「受け取っても受け取らなくても税金がかかる」などといって、県漁協と県水産部が乗り出している。
 補償金を受け取ることは、漁業権放棄を認めたことを意味する。「共同管理委員会の多数決で漁業権問題は決着」というのなら放っておけばよい。しかし何年来この件でしつこいのは、祝島が自ら漁業権放棄をすることが何が何でも不可欠であることを証明している。来年5月は供託金没収の期限になるといわれている。それまで祝島が受け取らず国が没収するとなると、中電が最終的に祝島の合意を得ることができなかったという結論になる。それは中電が原発を最後的に断念せざるを得ないことを意味する。
 中電は埋め立て着手を始めるといい、各漁協には漁業補償の残る半金が配分され、町内では原発業者が動き、原発はできたかのようなそぶりである。しかし実態は仕事が動いていない。祝島をあきらめさせるための「できるできる詐欺」であり、仕事が動かないのは祝島のメドが立たないからである。
 現実の力関係は、祝島はあきらめて補償金を受け取った方が得なのではなくて、祝島が受け取らないから中電は原発をつくれない関係なのだ。原発をめぐる主導権は中電ではなく祝島島民の側にある。94年の漁業権の書き換えで、四代田ノ浦にあった共同漁業権を祝島がだまされて放棄した。そのため終わっていた原発が、15年の延長戦となった。祝島の運動はいまや大衆主導となっており、今度は人を欺く妖怪変化も旗色が悪い。27年がんばって、祝島は勝利を目前にしている。
                                      那須三八郎

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