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風力発電に土地貸さないで 唐津市長宛の署名を住民たちが開始

 佐賀県唐津市七山地域の脊振山系一帯に大規模な風力発電建設計画が持ち上がり、唐津市、隣接する佐賀市、糸島市の住民が建設反対の行動を起こしている。住民たちは七山・脊振山系の暮らしを守る保安林を守る会をつくり、予定地に唐津市が所有する保安林が含まれることから、峰達郎唐津市長に対して「事業者に土地を賃借しないで」とする署名運動を開始した。

 

 この計画は、大和ハウス工業が100%出資する大和エネルギー(大阪)による「(仮称)DREAMWind佐賀唐津風力発電事業」で、3200~4200㌔㍗の巨大風車を8~10基建てる(総出力は最大3万2000㌔㍗)というもの。この建設予定地が脊振北山県立自然公園の区域内にあり、同時に豪雨災害を防ぐための土砂流出防備保安林と水源かん養保安林の区域に当たることから、住民たちが声を上げ始めた。保安林の伐採と山の掘削工事、運搬道路の造成などによって、下流の浜玉地域で豪雨災害のリスクが高まる恐れがあること、下流域の玉島川や海に濁水や土砂が流れ込んで魚介類や海藻がとれなくなるなど漁業への影響、地域の温泉や井戸水が涸れることなどを危惧してのことだ。

 

 とくに佐賀県は近年、国が激甚災害に指定するほどの大雨、洪水被害が多発しており、風力発電建設予定地の稜線下にある七山地区、糸島地区は甚大な土砂災害の発生が予想されることから、住民の不安は強い。七山地域は2018年7月の豪雨では、農地・農業用施設300件、道路・河川83件が行政がかかわる復旧の対象となり、昨年の梅雨前線豪雨でも林道・道路・河川78件が同じく復旧の対象となった。

 

唐津市の山間部を流れる滝川川(唐津市七山)

 

 また、国内外で風力発電の騒音や低周波音による健康被害が報告されるなか、建設予定地周辺に子どもたちの生活する幼稚園、保育園や小中学校が多いことも親たちの心配の種になっている。風力発電先進国では風車から10㌔圏内の健康被害が報告されているが、佐賀唐津風力建設予定地から10㌔圏内には、唐津市の中学校5校、小学校3校、幼稚園・保育所7カ所の計1905人、糸島市の中学校3校、小学校9校、幼稚園・保育所12カ所の計3030人が生活している。佐賀市も加えると合計5000人以上の子どもたちが生活している。

 

 今年1月には事業者による環境アセス方法書説明会が開かれたが、住民の質問に対して納得のいく回答はなく、周辺住民の中には引っ越しを考えざるをえないほどの危機感を抱く人もいるという。

 

 こうしたことから七山・脊振山系の暮らしを守る保安林を守る会は4月6日、脊振北山県立自然公園の保全を求める会、日本野鳥の会佐賀県支部とともに、事業者に土地の賃借をしないよう求める要望書を唐津市長に提出した。現在、署名活動を展開中で、5月に市長に提出する予定。提出後も問題が解決するまで継続して集めるとしている。

 

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