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北九州市議選・自民総崩れで6議席減 コロナ禍での政治要求を反映 国政への怒りも

 次期衆院選の前哨戦となる地方選挙として注目を集めた北九州市議選(定員57)が1月31日に投開票され、国政与党である自民党現職議員が6人落選する波乱となった。投票率は40・29%で投票行動は低調だったが、新型コロナ感染の拡大で市民生活が激変しているにもかかわらず、安定した収入に安住し、能動的な打開策にとりくむ姿勢の乏しい市議会の体質に強い怒りが噴出した。北九州市民のなかでは「自民党現職議員が六人落選したが、自分のことしか考えないような議員をもっと落としたかった」「苦しいときに人のために働くのが議員の仕事。何もする気のない議員は国会にも市議会にもいらない」と市内各所で論議になっている。

 

 今市議選の有権者は4年前の前回市議選より1万4342人減り78万7960人。投票率は過去最低を更新した前回(39・2%)を上回ったが、有権者の6割にあたる47万488人が選挙自体を棄権したことは、依然として強い政治不信を表した。

 

 「コロナ禍で売り上げが大幅に落ち込んでいる」と切り出した食料品店関係者は「国会議員がキャバクラに行ったことが問題になっているけど、この体質は市会議員も同じ。今回も日頃は一切姿を見せないのに選挙前だけやってきて、あれをやります! これをやります! という。コロナの影響で店の存続自体が危ぶまれているのに、自分が当選してうまい汁を吸うことしか考えていない。誰が通るかより市議会自体を総入れ替えしないといけない。本当に腹立たしい気持ちだ」と口にした。

 

 こうした思いが渦巻くなか、自民党陣営は今回、新人を出さず現職22人を全員当選させる作戦で市議選に臨んだ。しかし5人立てた小倉北区(定員11)では3人落選し、同じく5人立てた小倉南区(定員12)では、前回トップ当選した全国市議会議長経験者が落選した。若手候補を2人立てた若松区(定員5)でも1人落選し、6人擁立した八幡西区(定員15)でも過去8回当選している現職が落選した。

 

 自民党議員の得票合計は前回10万1480票(無所属で出馬し当選後自民党に変わった候補の票も含む)だったが、今回は9万5120票になり6360票減らしている。しかも自民党候補の得票を見ると票数を激減させた候補が目立つ。前回の得票より1000票以上減らしたのは、中島慎一(門司区で当選、1152票減)、佐藤茂(小倉北区で落選、1640票減)、片山尹(小倉南区で落選、2049票減)、三原朝利(若松区で当選、2624票減)、村上幸一(八幡西区で当選、2066票減)、宮崎吉輝(八幡西区で当選、1129票減)、佐々木健五(八幡西区で落選、1121票減)の各候補で、7人に達した。公明は立候補した13人が全員当選したが、全候補の合計得票は6万9067票で、前回選挙の全候補合計得票(7万4919票)から5852票減らした。

 

 国政与党への強い批判を突きつけるものとなったが、既存野党に票が流れたともいいがたい。公認候補7人が全員当選した立憲民主の全候補合計得票は2万6829票で前回選挙の民進公認候補の合計得票(3万7822票)よりも1万993票少ない。共産も選挙前の8議席を維持したが候補者の合計得票数は3万8242票にとどまり、前回を4754票下回った。八幡東区では現職が落選した。こうしたなかで維新が、前回市議選で失った3議席をすべてとり戻す動きになった。

 

無所属の若手新人が躍進

 

 既存勢力に対する市民の厳しい評価が目立つ一方で、八幡西区と小倉北区で30代の無所属新人候補が大量得票でトップ当選した。八幡西区では三児の母で「子育てママの負担・不安軽減」「若い世代が住み続けたい街へ」と訴えた34歳の井上純子候補(元北九州市職員)が6919票を獲得してトップ当選した。小倉北区でも知識もお金も地盤もないけれど北九州を活力ある街にしたい」「そこで誰かではなく僕がやろう!!と覚悟をもって挑戦します」と訴えた35歳の大石仁人候補(元高校教諭)が6239票獲得してトップ当選を果たした。既存政党への強い批判とともに、しがらみのない新しい政治家の台頭を渇望する空気も反映する結果となった。

 

 北九州市内の商店主の男性は「新型コロナ感染が広がる前は、あまり政治について考えていなかった。でもコロナ対応を見ていて、国も市も市議会も口ばかりで、本当に市民が厳しいときになにも助けてくれないことがよく分かった。コロナ対策もさまざまな補償はあるが、手続きが面倒で条件から外れるケースが多い。今回は自民党の現職議員が6人落選したが、市民のために動く議会に変えないといけない」と話した。

 

 「今の政治家ではコロナ感染の影響で売上が落ちたり、収入が落ちたり、失業する不安におびえている人の気持ちが分からない」と切り出した営業職の女性は「議員はこれだけコロナで倒産や失業があいついでいるときでも高給やボーナスをしっかりもらい何不自由なく生活している。毎日10円、20円安い食材を求めて苦心している主婦の感覚とあまりにもかけ離れている」と話す。「そのような感覚の人が政策を考えるから、アベノマスクとかGoToとか、おかしな政策ばかり考え出す。そんなことをさせないため今回の市議選は誰に投票するか悩んだ。そして政党や理念というより、とにかくまともな感覚で物事を考えてくれる議員を選ぼうと思った。今回は自民党の現職議員が6人落ちたけど、次はもっとガラッと変わるような変化を起こせたらいいと思う」と話していた。

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