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ノーベル賞受賞者たちの警鐘

 新型コロナウイルスの爆発的感染拡大という重大局面に、ついにノーベル賞受賞者の科学者たちもたまりかねたのか緊急共同声明を発し、政府に5つの提言をおこなった。声明はとても簡潔で、以下のようなものだ。

 

緊急共同声明

 

 過去一年に渡るコロナ感染症の拡張が未だに収束せず、首都圏で緊急事態宣言が出された。現下の状況を憂慮し、我々は以下のような方針を政府に要望し、実行を求める。

 

・医療機関と医療従事者への支援を拡充し、医療崩壊を防ぐ
・PCR検査能力の大幅な拡充と無症候感染者の隔離を強化する
・ワクチンや治療薬の審査および承認は、独立性と透明性を担保しつつ迅速に行う
・今後の新たな感染症発生の可能性を考え、ワクチンや治療薬等の開発原理を生み出す生命科学、およびその社会実装に不可欠な産学連携の支援を強化する
・科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度を確立する

 

2021年1月8日
 大隅 良典
 大村 智
 本庶 佑
 山中 伸弥

 

 テレビ番組のインタビューに応じた本庶氏や大隅氏は、通常の病院がコロナ患者を受け入れると他の症状の患者の足が遠のき病院経営を圧迫することや、クラスター発生などによって他の治療がかなわなくなることなどをあげ、コロナ治療の効率化のためにも、地域ごとに拠点となる一つの病院を丸ごとコロナ対応の専門病院とすることを具体的に提言していた。そして、PCR検査を大幅に拡充することによって無症候感染者の割り出しに力を入れ、その隔離(ホテル療養)を徹底することの重要性についても力説していた。

 

 本庶氏曰く、神戸の企業が全自動のPCR検査機を備えたトレーラー(移動式)を開発しており、仮に1000台(1台1億円の計1000億円)が1日12時間稼働すれば250万人の検査ができるという。大隅氏も、国内企業で全自動のPCR検査機を開発している企業は他にもいくつもあるのに、どうして国内の検査拡充に反映されないのか…とのべていた。「感染症は検査によって発見して隔離する」は医学の教科書にも載っている常識なのに、どうして厚生労働省はそれをしないのかと疑問を呈し、大量の住民を瞬く間に検査していく中国のような方式が望ましいが、強権発動できないにしても限りなくそれに近い無症候感染者の囲い込みをすることが適切なのだという指摘であった。

 

 また、犬フィラリア症予防薬として知られていたイベルメクチン(研究開発した大村氏がノーベル賞受賞)やその他のいくつかの薬剤が新型コロナウイルスの治療薬として有効なことが世界各地の経験から明らかになっていることにも触れ、こうした世界的な治験(人数的にも日本国内の投与患者数を圧倒する)によって有効性が明らかになっている治療薬についてスピーディーに承認することなども求めていた。

 

 2度目の「緊急事態宣言」が発出されたものの、それは飲食店の時短営業のほかに国民に外出自粛を呼びかける程度のもので、悲しいかなこの期に及んで感染予防のための具体的な施策が伴っていない。本気で無能政府なんだろうか…という呆れにも似た感情が世間に充満し始めているのも事実だ。そうして中身が空っぽのまま、浮き上がった為政者が鐘だけ叩き回して「たいへんだ~! たいへんだ~!」「公助はしないから、共助、自助でがんばってね!」と叫んでいるような光景なのである。

 

 この1年、日本政府としては発熱した者のみの検査にこだわり、クラスター追いかけと濃厚接触者割り出し方式に固執し、五輪開催もかかわってか感染者数の抑制策を続けてきた。こうして半数以上を占めるともいわれる無症候感染者は野放しになったことが今日の爆発的感染を招いたのである。すでに苦しくても病院に受け入れてもらえない患者がいたり、医療現場ではトリアージまで始まっているという逼迫した状況下において、万歳突撃、後は野となれではなく、ノーベル賞受賞者の科学者たちが提言しているように、科学的に疫病に対峙し、医療体制の整備や支援策の充実、PCR検査の拡充、隔離のための措置、有効な治療薬の早期承認、科学者たちの意見が反映される体制の構築など、やるべきことを早急にやることが求められている。

 

 ひきつづき何もしないくせに鐘だけ叩いているというのであれば、本気で疫病下の政権運営を担う意志や能力を持ち合わせている者、国民の暮らしや生命を守るために献身する者に成り代わらせることが切迫した課題だ。具体策が乏しくいつも官僚の作文を棒読みして、緊急サイレンだけ鳴らしておけばよいのなら、酷い話ではあるがそれはサル(お猿さんに失礼いたします)に総理大臣をやらせたって大差ないのである。

武蔵坊五郎   

 

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