いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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地震列島の原発即停止せよ 活動期到来で予測不能

 熊本県や大分県を震源地にした地震が14日からこれまでに600回以上(震度1以上)連続して発生し、九州地方をはじめとした西日本地域を揺るがしている。収束の予測も立たたないほどの大規模な地震で、震度7、6、5クラスが断続的に発生し、「前震」「本震」「余震」の指定が入れかわるほど未知の現象となっている。この20年来を振り返ってみると阪神大震災、鳥取県西部地震、十勝沖地震、福岡西方沖地震、新潟県中越地震、東日本大震災とM7クラスの巨大地震が数年おきに発生し、その度に多くの痛ましい犠牲をともなってきた。日本列島は複雑に重なり合うプレート上に位置する地震列島、火山列島であり、地震、火山噴火は避けがたいものであること、その自然と向きあってどう災害に対応し、どう暮らしを営むべきかという課題を突きつけている。東日本大震災は福島原発の爆発事故を引き起こし、地震列島で原発を稼働させることがいかに無謀であるかを重要な教訓として残した。ところがわずか4年しかたたないうちに安倍政府は川内原発1、2号機の再稼働を強行した。今度はその川内原発の間近で大規模地震が起こり、原発事故の危険性をはらんで事態は進行している。震源地は大分県から日向灘にも移っており、玄海原発、伊方原発にも危険が迫っている。福島原発事故の教訓に立って、これらの原発を停止させることが緊急を要している。


 
 原子炉暴走防ぐ最大の備え いつ起きるとも知れぬ巨大地震



 気象庁によると、熊本県や大分県で1時間当たり10回近くの有感地震を引き続き観測している。余震の震源域は16日以降、熊本県の南西方向、八代市などにも広がっている。16日未明に起きたM7・3の地震は14日の熊本地震の余震ではなく、一連の活動で最も規模が大きい「本震」で、28時間前に起きた熊本地震を「前震」だったと訂正し、「予測は困難」と釈明した。また、16日未明に起きたM7・3の「本震」の後、熊本県阿蘇地方や大分県でもM5を超える大きな地震が発生したことについて、「今までの経験則から外れている」ことを明らかにした。


 最初の地震は日奈久(ひなぐ)断層帯の北部で起きたが、16日の本震はその北東側の布田川(ふたがわ)断層帯で起きたとみられている。今後懸念されるのは、さらに別の活断層による地震が誘発される可能性だ。あいつぐ地震の震源は、「別府―島原地溝帯」と呼ばれ、多数の活断層がある溝状の地形に沿って分布する。さらに北東には、四国を横断し紀伊半島に延びる長大な活断層、中央構造線断層帯が連なる。専門家は「今回ずれた断層の延長線上にひずみがたまり、大分県側でM7級の地震が起きることも否定できない。四国側の中央構造線が動く可能性もある」と指摘している。


 また、活断層地震とは別にプレート地震である南海トラフ地震を誘発する可能性についても検討する課題が浮かび上がっている。南海トラフ地震は約100年周期でくり返されており、前後数十年は、内陸の地震活動が活発化することがわかっている。数十年単位でみれば発生は近づいており、備えを進める必要性が指摘されている。


 熊本県で発生した今回の地震は活断層で起きた。活断層は、過去に地震を起こした形跡があり、将来も地震を起こす可能性がある断層を指している。日本には2000以上の活断層があり、全国どこでも大きな地震が起こる恐れがあることを示している。1995年の阪神大震災(M7・3)、2004年の新潟県中越地震(M6・8)など、内陸での活断層型地震はくり返し発生してきた。陸域が震源となる活断層型の地震は、地域によっては人が住む地域や交通網などの直下で起きる。このため、強い揺れや地表にできる段差で深刻な被害が起こる。


 政府の地震調査委員会は、全国の活断層のうち97を主要活断層として、地震が起きた場合の規模、30年以内に地震が起きる確率などを示し、警戒を促してきた。今回、熊本地震を起こした日奈久断層帯も布田川断層帯もその一つだったが、示されていた発生確率は高い方ではなかった。2000年の鳥取県西部地震(M7・3)や08年の岩手・宮城内陸地震(M7・2)のように、地震前には確認されていなかった「未知の活断層」で起きる例もあいついでいる。この点について専門家は「活断層のなかには、地表には痕跡が現れにくいものや、長い年月で痕跡が消えてしまったものもあり、活断層が見つかっていない地域でも注意が必要だ」と、指摘している。これまでに総延長や想定される地震規模が発表されてきた活断層についても、それは絶対視できるものではなく、調査によってさらに活断層の距離が伸びて巨大なものだったことが判明する例もある。現状ではすべてが分かっている訳ではなく、学者たちによる地道な調査によって真理に近づいていくしかない。



 プレートが押し合う 地震活動集中する日本



 地震活動が活発化しているのは日本ばかりではない。4月に入って10日にはアフガニスタン北東部でM6・6、13日ミャンマー西部M6・9、15日バヌアツ付近M6・5、17日にはエクアドルでM7・4の大規模地震が連続して発生しており、地球規模で地震活動が活発化していることを伺わせている。


 地球上における地震発生には地域的な偏りがあることもわかっている。地震観測が進歩し、震源が確定できるようになった1973年から2011年までの地震発生数を見ると、日本は世界中で地震活動がもっとも集中していることがわかる。


 日本の近くは太平洋、フィリピン、ユーラシア、北アメリカと呼ぶ4つのプレートが複雑に押しあっている地域であり、これほど多くのプレートが押しあっている地域は世界中にないといわれている。そのため、それぞれのプレートが押しあってその最前線では地震が起きるし、プレートに押されて日本列島そのものがゆがんだりねじれたりして、どこでも地震が起きる。これが地震大国といわれる由縁とされている。日本列島で暮らす以上、地震に見舞われることは宿命ともいえる。地球の運動を人間の願望で避けることなどできないからだ。地震予知は現在の技術水準では不可能であり、だからこそ地震がきたときの備えが必要であると学者たちは強調している。



 緊急時の備え不可欠 政府・行政に重大責任



 世界的にも、また日本国内でも地震活動が活発になっている今日、それに備えることが緊急に必要となっている。それは個個人の努力や善意でどうにかなるものではなく、いざ起こったときに万全の対応をできるか否かは、政府やそれに連なる自治体に大きな責任がある。


 今回の熊本における地震では、しばらく水や食料が現地に届かず、被災者支援の采配を含めた行政機能の麻痺、統治機構の崩壊状況も浮き彫りになった。自治体合理化で人員削減と非正規化、業務の民間委託が進み、いざこうした災害に見舞われたときに、地方自治体として住民生活をバックアップする体制が脆(ぜい)弱になっている姿も露呈した。
 さらに政府の初動が鈍いのも毎回のことで、「私が視察します」「私が指示しました」と「私、私」ばかりがインフレ状態になって何も動かないばかりか、現状を知らぬ東京から「屋内退避」を指示して混乱を招いたり、オスプレイの政治利用の場にしたり、改憲の目玉である緊急事態条項を持ち出したり、国民の生命を守ること以上に政治的野心を果たす道具にしようと政治の側が別目的ではしゃいだ。災害の度に教訓は積み上がっているはずなのに、その経験が継承されず、有効な危機対応がなされない悲劇的な姿を国民の前にさらした。憲法に「緊急事態条項」があってもなくても、統治機構自身に緊急に動く意志や能力がなければ何の意味もないのである。


 自然の猛威に対して人間は無力であり、地震や火山噴火は避けがたいものとして受け入れるしかない。「起きてほしくない」と思っても、日本列島ではいつどこで起きるかもわからない。従って、最悪の事態を避けられるように可能な限り平常時から備えるしかないというのが専門家の指摘だ。


 こうしたなかで近年、地震学者や火山学者が声を大にして主張してきたのは、原発再稼働が無謀きわまりない暴挙であり、地震や火山噴火が頻発しているもとでは自殺行為に等しいということである。


 原発建設は設計基準において地震動の基準の加速度を想定して、それに耐えるというふれ込みで基準をもうけている。しかしながら加速度の想定値そのものが現実の地震で起きるものよりはるかに小さいうえに、基準は原子炉本体とか、格納容器など重要部分に限られている。さらに原発1基について約5万本(100㌔㍍)ある配管や継ぎ目は本質的に地震に弱く、地震によって破壊されれば重大事故につながっていく可能性がきわめて高い。現実に福島第1原発は前代未聞の爆発事故を起こし、メルトダウンして収拾がつかないままである。


 ところが、2014年9月、原子力規制委員会は川内原発の再稼働を「新基準に適合している」として容認した。川内原発は桜島や阿蘇、霧島など活動的な火山が集中する地点にあり、過去3回にわたりカルデラから噴出した火砕流が到達している。火山の分布も多くがプレートの境界に沿って線状に並んでおり、地震活動との関連が指摘されているが、原子力規制委員会は、「原発運転期間中の超巨大噴火の可能性は十分小さい」「噴火の兆候は事前に把握できる」として再稼働にゴーサインを出した。このときも専門家たちは「巨大噴火の時期や規模を予測することは現在の火山学では困難、無理」と指摘するとともに、「超巨大噴火の可能性はある」としそうである以上原発はすぐにでも廃炉にすべきであると警鐘を鳴らしている。


 今回の熊本地震で危険性が迫っているなかでも川内原発は運転を続けている。原子力規制委員会は18日に開いた臨時会合でも、停止させない方針を決定した。震源に近い益城町では1580ガルの揺れだったが、川内原発で観測した今回の地震動は最大で8・6ガルだったこと、それは九電が保安規定で原子炉を自動停止する基準としている160ガルより小さく、審査で想定した最大の揺れである基準地震動620ガルよりも小さいという理由からだった。今後、同じ断層帯が地震を起こしても「今は安全性に問題はない」とし、田中俊一委員長は「科学的根拠がなければ国民や政治家が止めてほしいといってもそうするつもりはない」などとのべている。もともと、再稼働そのものが「火山噴火が起きればどうせ九州全域が壊滅する」という破滅的な論理に基づいて強行したもので、死ぬときは死ぬのだから原発の心配をしても仕方がない   という代物であった。


 現在、高速道路も地震によって破壊され、新幹線も沿線の130カ所が破損して止まってしまい、熊本県内だけ見ても身動きがつかない状況が続いている。一般道も大渋滞である。このなかで、川内原発に最悪の事態が起こった場合、熊本県以南の鹿児島県民も含めて、避難など到底できるものではない。それは200万人以上もの人間が放射能汚染にさらされることを意味している。まともな原発対応をすることが必至で、まさに国民の生命と安全を守るために政府なり統治機構が動かなければならない局面を迎えている。


 巨大地震や火山噴火への備えとして最大の安全対策になるのは、即座に原発の運転を停止し、廃炉にすること以外にはない。中央構造線断層帯の目の前にある伊方原発についても同じで、その他、日本列島の各地で動き始めている原発を緊急停止することが待ったなしとなっている。これは原発が好きか嫌いかという範疇の問題ではなく、イデオロギー云々の問題でもない。学者たちが科学的に見て、「いつどこで地震や火山噴火が起きるかわからないが危険性が高まっている」といっているなかで、なお稼働し続けることがいかに無謀であるかは論を俟(ま)たない。自然を侮って痛いしっぺ返しを食らったのが福島第一原発の爆発事故だった。あの福島の痛みを「痛み」として受け止めていない者が再稼働の旗を振り、性懲りもなく国民の暮らしを脅かそうとしている。しかし、田中俊一の非科学や安倍政府の願望で被害を拡大させるわけにはいかないのである。


 昨年の9月に、安倍政府は存立危機事態に対して集団的自衛権を行使するのだといって安保法制を強行した。地震大国の日本列島が置かれている現実は、他国が攻め込んでくる危機以上に、自然災害や連動した原発事故の危険性こそもっとも心配しなければならないものとなっている。非科学の願望によって福島の二の舞のような存立危機事態を作り出されるのは懲り懲りで、原子炉の暴走とともに安倍政府の暴走を止めることが、国民の生命や暮らしを守るために避けられない課題となっている。

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