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密着・れいわ新選組 山本太郎 in 東京都知事選【写真速報4】 記事「新・旧の政治激突の様相」

6月24日(水) 

 

■町田駅前デッキ

 

■成城学園前駅(告知なしゲリラ)

 

■新宿駅東南口

 東京都知事選(7月5日投開票)は中盤戦に入った。今回の都知事選は、新型コロナ感染症による未曾有の混乱のなかで、頻発する失業や倒産、貧困や生活苦が蔓延し、これを「自己責任」で片付ける旧来の政党主導型政治と、それを下から打破して公の力を強める新しい政治勢力が激突する様相をともなって進行している。現職の小池百合子知事が国政与党の自民・公明から水面下で組織的な支援を受け、立憲民主・社民・共産などが「野党共闘」の形で宇都宮健児氏(元日弁連会長)を担ぎ上げて「与党vs野党」の組織戦の構図が強まるなか、これらと一線を画す形でれいわ新選組の山本太郎氏が独自に立候補し、選挙戦の趨勢は日を追うごとに変化を見せている。

 

 過去最多の22人が立候補した今回の都知事選をめぐっては、商業メディアは前回とは打ってかわって報道枠を圧縮し、過去の選挙では幾度となく企画されていたテレビ討論会もおこなわないなど露骨な黙殺型の対応となっている。メディアに「圧勝」の太鼓判を押された現職の小池陣営は「コロナ感染のリスク」を理由に、街頭での演説活動は一切おこなわず、コロナ・ショックに乗じて低投票率に持ち込み、自民・公明の組織票で逃げ切る「ショック・ドクトリン型」ともいえる選挙姿勢を貫いている。

 

 一方、現職の対立軸として野党が相乗りで支援を打ち出している宇都宮陣営の遊説活動には、立憲・社民・共産などの党首、国会議員、都議、区議などが常に同行して応援演説をおこなうなど「野党共闘」の政党色を前面に押し出し、与野党対決の色合いを強めた選挙戦となっている。だが、国政野党第一党の立憲民主党にとって最大の支持母体であり、前回は「自主投票」だった連合東京は、連合組織に属する都議4人が小池知事が顧問を務める都民ファーストの会と連立会派を組み、「(小池知事には)連合東京の政策要請を数多く都政に盛り込むための汗をかき、実現に向けて取り組んでいただいている」(事務局長談話)との理由から小池支持を早々に打ち出しており、その表層と内実に大きな乖離も見られる。「消費税5%減税」の政策合意もできないなかで、コロナ禍において鋭さを増す有権者の切迫した意識とどこまで結びつくことができるのかは未知数で、前面に出た各国政政党自身に対する評価も大きく問われるものとなっている。

 

 これら従来の選挙構図を下から大きく揺さぶっているのが、れいわ新選組の山本太郎陣営で、既存組織に頼らず、政党政治への失望感や不信感から選挙から遠ざかっている五割に及ぶ有権者に地べたを這うように直接語りかけ、街頭から新しいうねりをつくり出すスタイルを貫いている。コロナ禍で苦しむ都民の生活のなかに入り、拠り所なく置き去りにされている人々と苦労をともにしながら、その具体的な要求を束ね、正面突破を図る選挙活動には、都内近郊から多くのボランティアが集まって下支えしているのも特徴だ。

 

 告知なしのゲリラ街宣には日を追うごとに多くの聴衆が集まり、立憲民主党の須藤元気参議院議員が離党して応援に加わるなど、「頑張らなければいけないのは政治だ」「東京から日本を変える」をスローガンにした変革機運の高まりは、選挙戦全体の「台風の目」となり、膠着した選挙戦を下から突き動かしている。それが既存政党の脅威になっていることはメディアが選挙戦そのものを黙殺していることにもあらわれている。従来の「与野党」の枠組みを破り、都政にとどまらず国政の新しい展開を切り拓くものとしても注目を集めている。

 

都民の切実な要求束ね 東京から国動かす

 

 ゲリラ街宣を中心に遊説活動を続けている山本太郎陣営は、22日には新宿駅西口地下広場、23日には二子玉川駅西口、三軒茶屋駅前、中目黒駅北口、渋谷駅ハチ公前広場、さらに24日には町田駅前デッキ、成城学園前駅南口、新宿駅東南口広場、25日に明大前駅中央口、調布駅前、府中駅北口、京王多摩センター駅出口前広場で街頭演説をおこなった。

 

 演説のなかで山本氏は、コロナ禍のなかでの支援活動で出会った多くの生活困窮者、とくにコロナ・ショックによって仕事や家を失った幅広い世代の人々や自営業者の生々しい現状を訴え、コロナ感染を災害指定することなく「補償なき自粛」を求め、都民や国民の生活を守る責務を放棄した政府や小池都政を批判。「目の前にいる苦しむ多くの人たちを救うには個人的な支援活動だけでは限界があり、都知事になることで直接みなさんの生活を底上げする必要がある」とのべ、都債発行を中心にした総額15兆円の経済政策を土台に、都民一人あたり10万円給付、中小企業者への減収分補てん、コロナ第二波到来に備えた医療従事者やエッセンシャルワーカーへの危険手当支給などの具体的な底上げ政策を提示し、国と対峙しながら「東京から永田町を揺らしていく」と訴え、多くの有権者に政治参加を呼びかけている。

 

 会場には、コロナ禍による影響で収入を失ったり、閉店を余儀なくされた自営業者や、雇用不安に脅かされている派遣社員、会社員、主婦、学生など若い世代の姿が目立ち、真剣なまなざしを注いでいる。組織を持たない山本陣営の選挙戦にとって、この有権者の切実な問題意識とどこまで切り結ぶことができるかが焦点となっている。

 

 新宿駅前の街宣を聞いていた40代の女性は、「偶然通りかかったが、メディアが現職圧勝という状況下でよく立候補を決断したと思うし、これほどの熱量で訴えている人は他にいないのではないかと思う。とくに自分の周りで生活している普通の人たちの目線に立った主張が他の政治家とまったく違うと感じる。自分もコールセンターで派遣社員として働いていて、今後の状況次第ではいつクビになってもおかしくない。派遣社員はいつ切られても文句がいえない。飲食業をやっている知人も潰れそうになりながら、踏ん張って耐えている。困っている人たちがたくさんいるので、一般の人々と同じ目線で頑張ってもらいたい」と期待をこめて語った。

 

 同じく派遣社員として小売業に勤める30代の女性は「私もほぼ同世代なので共感できることが多い。政策が抽象的な現職の小池さんに比べて、是非をはっきりと主張されるところがいいと思う。私は職業柄、コロナによって失職することはなかったが、飲食店に勤めている家族は時短出勤になり、熱で1週間休むことになって収入が減り、生活がたいへんだった。私も大卒で、本当は正規職員になりたいが、派遣社員からなかなか抜け出せない。コロナショックで正規雇用の枠がこれからますます狭くなるのではないかと感じる。メディアが小池知事を好意的に扱っているなかで、出馬には捨て身の勇気が必要だったと思う。私たちも支えるので頑張ってほしい」と語った。

 

 舞台関係の仕事をしている30代の女性は、中目黒駅で演説を聞き、「舞台公演の採算もすべてを抱えなければいけないプロデューサーの立場にあるので、コロナによる自粛の打撃は大きかった。国の休業補償は受けられたが、公演中止の赤字補償がされたわけではないので大半の負債を被っている。今後も客席数を減らし、100%赤字の公演をやらなければならず、ずっと国から“あなたたちの仕事は不必要”といわれているような数カ月間を耐えてきた。山本さんは嘘をつかず、正直にすべてを語る。都による起債や“真水”による生活の底上げが可能ならば、なぜ現職はそれをやらないのだろうか? お金が回れば助かる人はたくさんいるのに、私たち庶民の生活が目に入っていないのか、損をするのが嫌なのだろうか。経済政策の実権を握っている政治家は、苦しんでいる人たちのなかに直に入っていかない。歌舞伎町の知人も本当にしんどくなって近く店を閉じてしまう。政治家の多くがそういう底辺の声に耳を傾けていない」と怒りを込めて語った。

 

 続けて「4年前の都知事選はまったく興味が湧かなかったが、コロナで痛い目にあって政治の大切さに気付かされた。実家が創価学会なので、これまで疑問も持たずにいわれるままに投票してきたが、それは恐ろしいことだと思う。ただお金が入るか否かだけではなく、誰のための政治をしているのかを見極めて投票したい」と話した。

 

 新宿駅でじっと演説を聞いていた大手メーカーに勤める50代の男性は「今回は22人も候補者がいるが、現職・小池vs山本太郎の対決だと見ている。国のコロナ対応については、必要もないマスク配布に466億円もかけるというバカげた政策に呆れるし、収入は減っているのに税金請求だけはキッチリくることが腹立たしい。定額給付金も課税対象になり、来年には何割かは税金で持っていかれる。小池知事もアラート解除のタイミングも自分の選挙に都合よく利用しているようにしか見えない。“危機”と騒ぎながら、まるで生活実感がない政治に幻滅し、庶民の側に立った山本太郎に期待している。ただ10万円配ればいいという問題でもない気もする。この内需が枯渇した経済構造を根底から変えてもらわないといけないわけだが、小池のバックには官邸や経済界が付いており、これに対抗しうる力を集めるには有権者の強力な支えなしには実現できない。新宿駅が通勤コースなので彼がやっている街頭演説はよく目にしており、その真剣な姿勢には感心している。応援したい」といって公選ハガキを持ち帰った。

 

 二子玉川駅前で幼い子どもを連れて夫婦で演説を聞いていた30代の男性は「個人事業主として飲食店を経営しており、コロナの影響で2カ月間店を閉めた。多少の助成金は入ったが、店を再開してもお客さんが戻ってくるわけでもなく、安心して来店を呼びかけることもできないので、これからどうなるのか不安の中にある。二波、三波が来たときに国や都がどこまで支援してくれるのかが都民にとっては切実な問題だ。頼りになるのは山本さんのような姿勢の政治家ではないかと感じている」と期待をのべた。

 

有権者が政治を変える 一人一人が繋がって

 

 三軒茶屋駅前の演説を聞いていた30代の女性は「これまで政治に無関心だったが、現状に不満があるのなら選挙に行かなければいけないと思い始めた。でも、テレビのニュースでの扱いも少なく、各候補の主張もわからない。直接演説を聞くと、山本さんのいっていることは私たち一般人にも響いてくる。ネイルサロンを経営しているので、都からの休業要請を受けて店を休んだが、要請が解除されても一度離れたお客さんはなかなか戻ってはこない。固定費の支払いは猶予なく迫ってくるのに国や都からの支援金はいまだに入らず、営業を諦めて業種を変えた知人もいる」と訴えた。

 

 続けて「この状態がいつまで続くのかが不安だし、また休業したら店を閉じなければいけない。保守や革新を問わず、政治は金持ちがやるものというイメージがある。今日、明日の生活資金に悩んでいる人の気持ちはわからないし、私たちとは関係のない背後の力で動かされていると思ってきたが、山本さんの“政治を変えなければ生活は保障されない”という言葉に共感した。諦めムードに流されるのではなく、私たち30代が関心をもって動かないと政治は変わっていかない。有権者の手で政治を変える仕組みをつくりたい」と胸の内を話した。

 

 自転車で渋谷駅前に駆けつけた洋服店経営の女性は、「三軒茶屋でやっている店はコロナ自粛で3カ月間の売上が9割減り、地方で即売イベントを開いて耐えしのんでいる状態だ。都内では70年の歴史を持つ洋菓子店も潰れたり、コロナ淘汰が進んでいる。東京都政はずっと国政の食い物にされてきたし、誰か東京を変える政治家が出てきてほしいと感じていた。前回の選挙は石原都政の悪を追及するような格好で自民党と距離を置いた小池が圧勝したが、今はそれ以前よりもひどいものになった。今回も諦めて消去法でしか投票先を選べなかったが、山本太郎が出馬したことで旧態依然の政治から新しい政治へと変化していく期待感をもっている」と話した。

 

 「須藤元気が立憲民主を離党して山本太郎の応援に入り、党から辞職勧告を受けているというが、この期に及んで野党第一党が消費税5%の減税さえ応じないのだから反発するのも当然だ。比例で当選した議員が離党するのが悪いというのなら、大規模政党の枠からしか国会議員になれない仕組みにした比例代表制こそが悪だと思う。野党共闘といっても、党や組織のために政治をやるのか、本当に有権者のために政治をやるのかが大きく問われている。その意味でメディアから無視されても、一人でひるまずたたかってきた山本太郎の動きに注目しているし、できる限り支えていきたいと思う」と意欲を語った。

 

 町田駅で演説を聞いた25歳の男性は、「派遣社員として工場で働いてきたが、契約解除になり、転職活動中にコロナ禍が来て、今再就職に苦労している。山本さんは他の候補者と熱量が違い、国民の感覚から遊離した政治の世界で空気を読まず、オープンにすべてをさらけ出していく姿勢が私たちにもわかりやすい。今回の定額給付金も発表から数カ月たっても振り込まれず、これが政治なんだ…と思ってきた。前の職場には外国人技能実習生が多く、彼らは同じ仕事でもすごく低賃金だ。“日本はなぜこんなに自殺が多いのか”“まるで地獄だ”といって帰国を望む知人もいる。そこから私たちの生活がすべて政治に繋がっていることを考えるようになった。このような現状を変えるためにも都知事になり、全国的な影響力を広げてほしい」と話した。

 

 渋谷駅前の演説を聞いていた自営業者の男性(50代)は、「野党共闘と決別してでも出馬したことを評価している。例え国会で少数派でも、決して諦めない姿勢に共感するし、だからこそこれだけの人たちを惹きつけるのではないか。小池知事は前回は自民党と対決するような格好だったから同情票があったが、今は国政とべったりで公約実現はほとんど放棄している。有権者の前に出てこないのはそのためだ。山本太郎自身もだが、まわりのスタッフも庶民的な感覚で応対していることにも好感が持てる。政策実現のためには多くの壁があると思うが、地に足を付けてたたかう姿勢を緩めず、このような名もない人たちの力を拡大して永田町を揺さぶってほしい」と期待を込めて話していた。

 

 新宿駅前の演説に訪れていた大学講師の女性は「れいわ新選組の登場は、従来とはまったく違う新しい政治文化を生んでいると思う。山本太郎自身もロスジェネ世代の当事者として立候補しているように、形だけの代理人ではなく、当事者自身の政治参加を促している。これまでの自民か、反自民かというような枠組みではなく、政策そのもので判断する気風が強まっている。保守や革新問わずある上から目線や、政治家を“先生、先生”と崇める慣習とはまったく違う新しい質の政治運動が始まっていることに注目している。この都知事選から政治文化が大きく変化していくことに期待したい」とのべた。

 

 コロナ禍による自粛・規制や、メディアの黙殺によって表面上の「無風」ムードが演出されるなか、劇場型プロモーションでも、既存団体に頼った組織選挙でもなく、街頭から切実な思いを抱いている一人一人と直接つながりながら地道に裾野を広げてきた選挙戦は、後半戦に向けてさらにボルテージが上がっている。

 

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